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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
5章 願い歩む者たち
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執事アンソニー

「とりあえず聞いてもらえるかしら、買い物に行かせてた執事のアンソニーから通信が入ったんだけどどうやら東側の住宅街で盗賊らしき男らが数人、人質を盾にしているそうなの」


 プラムはアンソニーから伝えられた情報をアストレアに説明した。 リフィンはぶつぶつと小さく呟きながら追加の紙を用意して魔道具の設計図や回路らしきものを書き殴っていてプラムの言葉は聞こえていないようだった。


『レア、ここから東っていえばリフがお世話になってる<あけぼの亭>がある方向だ…なんか嫌な予感がするぞ』

『先日立ち寄った可愛い女の子が切盛りしてる所ね…』

『あぁ』

「それでね、その_」

「出来たぁ!!」


 深刻そうな顔をしてプラムが語りかけようとした時、リフィンが書き殴っていた紙をバっと上に持ち上げながら笑顔でそれをプラムに見せつけるのであった。


「プラム様! 身分証の技術を応用して考案したんですが、これが触れた者の犯罪歴を調べる事が出来る魔道具の設計図で、こっちが即席用の身分証の図です! 即席用の身分証には位置を特定出来るコンパクトな発信器を取り付ければ追跡が可能になります! これを完成させて城門の外に居る人達を一時保護と監視という形で匿う事が出来ませんか!?」


 リフィンが考えていたのは城門の外に潜んでいるであろう盗賊をどう退治するのか、とかではなく城門の外に群がって助けを乞うている人達皆を救う為に魔道具の設計図案を書いていたのであった。

 呆気に取られたアストレアとプラムであったがリフィンの皆を救いたいという強い意志を感じたのか、今まで面倒くさい政務をこなして疲弊していたプラムがふふっ、と笑みを浮かべて言った。


「リフさん、それは後でお父様に進言するとして…今は盗賊に人質にされている宿屋<あけぼの亭>のカレンって子を助けるのが先決だわ!」

「…え?」

「嫌な予感が当たったわね…」

『あぁ』

「今は執事のアンソニーに住民の避難をして貰っているわ、私はここを動けないけどあなた達は救出に向かって頂戴!」

「行くわよリフ!」

「ちょ、えっ…えぇぇぇぇええ!?」


 事態は一刻一秒を争う、アストレアは部屋の窓をガラッとスライドして開けリフィンを抱きかかえて飛び降りた。

 ここはガダイスキ邸の大きな屋敷の上の方で、それが飛び降り自殺に見えてしまったプラムも驚いたのであったが、もっと驚く事に青い翼が背中から生えバサバサと羽ばたき上昇するアストレアの姿にプラムは目を輝かせ楽しそうな表情を浮かべるのであった。




● ● ● ● ●




 時は少し遡り、リフィンとアストレアをプラムの執務室まで案内したアンソニーは、外から水を求めにやってきた人達の住居を急遽(きゅうきょ)用意しなければならなかった為、他の執事やメイド達を数人連れて仮設住宅建設に必要な買い物と工事現場の視察を兼ねて外を歩いていた時だった。


「嫌ぁああああっ! 助けむぐぅっ!?」

「ちっ、大声で騒ぐんじゃねぇガキが! こら暴れんなって___痛って!?」

「は、放しん”ん”ん”ん”ん”〜〜〜〜っ!?」

「寝たら早く袋に詰めろ!」

「わかってら!」

「ん!…ん………っ」


 宿屋<あけぼの亭>の看板娘であるカレンは敷地の裏にある日当りの良い場所で洗濯物を干していたのだが、隣の建物との間にある狭い通路から現れた盗賊の男達に襲われてしまった。

 ちょうどその付近を歩いていたアンソニーは少女の悲鳴が聞こえたので様子を探るべく声がした方へ駆け寄ると、なんと見慣れぬ男共3人が少女を誘拐しようとする犯行現場を目撃した。 睡眠効果のある薬品を嗅がされ次第に意識を失ってしまい、ぐったりとするカレンを男共は大きな茶色い袋を被せていたのだ。


「水の聖女が寝泊まりしてる宿の娘だ、こいつは人質に使えるぜ!」

「あぁ、このガキと水の聖女は仲が良いって話も聞いたし、お人好しな聖女様は交渉に乗って来るだろうよ!」

「じゃあとっととずらかるぞ! 俺達の目的はまだ達成されていないからな!」

「「おう」」


 こんな光景はアルモニカの日常生活では見られない、ということは北の城門を突破して中に侵入した盗賊であるう。 そして見慣れない男共の無精髭が生え乱れた顔に汚れた肌や服装、北の城門を突破されてから少し時間が経っているのでここまで来る前に情報を手に入れる事は容易だろう、十中八九彼らが侵入してしまった盗賊だとアンソニーは一瞬で確信した。

 そうなるとアンソニーがやるべき事は決まっていた。


「逃げられないようにこっそり周りを包囲してください、住民の避難と同時に増援を呼びかけるのです」

「「「はっ!」」」


 アンソニーの命令を受けた執事と2人のメイドは盗賊達を包囲するように散開し、アンソニーはそれまで盗賊達を引きつけておかねばならない為、彼らの前に堂々と姿を現すのであった。



ドテーンっ! チャララララ〜ン



「わ、わしのお金が…金貨がぁぁぁあ!?」

「なっ、なんだぁ!?」


 アンソニーは買い物に使う予定だった金貨をばらまき、その場で転んだ老人を演じたのであった。


「っ! なぁんだびっくりさせんなよ爺さん!」

「こ、腰が痛くて…すまんが起こしてくれないかのぉ」

「へへっ、まずは落とした金貨から拾ってやるよ!」

「お、俺も手伝ってやるぜ!」


 盗賊達にとって金貨とは女と同等の価値あるもので、アンソニーの落とした金貨は涎が出る程の大金であったのだ。 それも大量に金貨が転がっているのだから見逃す訳がなかった。


「ちょっと待ってろ爺さん、めっちゃ落ちてるから時間かかりそうだぜ!」

「お願いするのじゃ、あんたらは親切じゃのう…」

「へへっ!」


 金貨1枚につき100万モニー、それが財宝の様に見えたのか3人の盗賊は逃げる事も忘れ、眠らせたカレンを肩に抱えた男以外の2人は金貨を拾うのに夢中になっていた。

 その間にアンソニーは胸ポケットに仕舞ってある魔道具のボタンを押し小声でプラムに連絡を取るのであった。


「お嬢様、事件でございます」

『プラムよ、なんなのアンソニー…』

「盗賊が現れました、宿屋<あけぼの亭>の娘カレン様が人質となっています」

『はっ!?』

「おそらく聖女リフィン様を狙っているのでしょう、現在は私が時間を稼いでおり部下達には盗賊を包囲する事と住民へ避難を呼びかけるよう指示致しております」

『了解よ、でかしたわアンソニー』

「投げた金貨に目が(くら)んだのか、バカ共が拾っている最中ですが実力は未知数…部下の執事やメイドでは手に負えないかも知れません」

『…分かったわ、増援を送るからもう少し粘りなさい』

「では、後ほど吉報をお届けにあがります」

『気をつけるのよ』


 プラムとの魔導通話が切れるとアンソニーは金貨を拾う盗賊達に声をかけた。


「ありがとなぁお前さん達、あとでわしの家でお返しをさせてくれないかのぉ」


 寝そべったままのアンソニーであるが穏やかなお爺さんを演じ、彼らを油断させるため警戒心を解かせる作戦だった。


「へへっ、マジかよ!」

「アルモニカに住む爺さんは金持ちなんだなぁ!」

「良い事聞いたぜ! だがまぁちょっと俺達急いでいるんでな! 悪ぃがここらでお別れだ!」

「ま、待ってくれお前さん達!」

「命だけは取らないでやるよ! じゃあな爺さん」

「ありがとなー」


 時間を稼ぐつもりだったアンソニーであるが、盗賊達にとって金貨を全て拾ってしまえば動けない爺さんはもう用済みであるのは当然だった。

 そして全ての金貨を拾い終えた盗賊達は地面に寝そべるアンソニーに礼を言うとそのまま狭い通路へと消えようとしたのであったが、彼らの目の前に突然人影が現れ逃走の妨害をするのであった。


(のが)しません!」

「なっ、なにもんだテメー!」

「くそっ! 今騒ぎになったら面倒だ!」

「こっちから逃げ___」

「ここも行き止まりです」

「っく、ならこっちから!」

「…通しません」


 いつの間にか3方を囲まれてしまっていた盗賊達はそれでも逃げようとして転んでいる爺さんの方へ振り向いたのであったが、転んでいた筈の爺さん…アンソニーは背筋をピンと伸ばし汚れた燕尾服をぱっぱと手で叩きながら盗賊達を睨みつけていたのであった。


(わたくし)はモニカ共和国ガダイスキ家に仕えるバッチャン家のアンソニーと申します…北の城門から侵入した盗賊共、覚悟!」

「ちっ…街中で暴れる予定はなかったんだが致し方ねぇか!」

「へへっ! こっちには人質が居るんだぜぇ?」

「ここの所暴れ足りなかったんだ! 剣の錆にしてやるよぉ!」


 そして盗賊3人とアンソニーとその部下達が宿屋<あけぼの亭>の敷地裏で対峙するのであった。

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バッチャン家は世界中のお偉いさん達の執事をしている設定

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