リフィンの意外な一面
早く過去話までもっていきたい
「お願いだぁ、中に入らせてくれぇ!」
「子供達だけでも救ってくれぇ!」
「干ばつ続きで痩せこけた村を捨てて何日もかけてここまで来たんだ!」
「助けてくれよぉ!」
城門の前で100人程の老若男女が群がってアルモニカの中に入れさせてくれと懇願していた。
城門は扉が厳重に閉じられていて蟻1匹すら通らせないようになっているが、それでも彼らは諦めきれないのか必死に訴え続けていた。
しかし城門の前で群がる身分証を持たない彼らを見たリフィンは人間として、冒険者として彼らをどうにかして助けてあげたいと考えたが、1人でどうこう出来る問題でもなく、出来る事と言えば彼らに水を提供するくらいしか手は無かったのであった。
「グレンお願い…彼らに水を与えてくれる?」
「…何をする気だ?」
「お姉ちゃんに引っ張って貰って城門の上から通り、プラム様にどうにか出来ないか掛け合ってみる」
「ちょっと! そんな面倒ごと___」
「分かった、リフのしたい事なら俺は止めん」
「ありがと、ディクト頼むね!」
「ヒヒィン」『任せて!』
「…ったく、仕方無いわね」
ポコとディクトをグレンに預け、タキルと友情の誓盟をしたアストレアに抱かれるようにして城壁の上まで飛んで行った。
「リフ! 無理はするなよ!」
「うん!」
お互い信じ合っているのかグレンはリフィンの意志を尊重した、面倒ごとに首を突っ込む事になると分かっていたがグレンはリフィンならやってくれると思い即答し、リフィンはグレンが了承してくれると信じていたのかすぐ行動に移した。
そんな2人に少し苛立ちを感じつつもアストレアはリフィンの案に従い、高い城壁の上にまで到着するのであった。
「お、お前達…って水の聖女!? それより後ろの方の青いツバサの人はいったい!?」
「城門が閉まってるので上から失礼します…はい身分証です、お姉ちゃんも出して」
「はいはい、私はコレね」
リフィンは黒い帽子に付けたFランク冒険者の証であるバッジを、アストレアは大きな胸元に付けたGランク冒険者の証のバッジをそれぞれ門番に示した。
「お、おう…」と動揺しながらも門番は許可を出してくれたのですぐさまリフィン達はその場を飛び去りプラムの居るガダイスキ邸に向かったのであった。
「せ、聖女様のお姉様…デカくていいなぁ」
● ● ● ● ●
「…話は理解しましたが城門を開ける訳にはいきませんわ」
アポ無しでガダイスキ邸に乗り込んだのだがすんなりと執事のアンソニーに執務室まで案内され、プラムに城門の外の人達をどうにかして助けたいと声をかけたのであったが、プラムは手を貸してくれはしないようであった。
「身分証を持って無い人間を不用意に入れると住民の生活が脅かされる事になりますわ…治安は悪くなると予想され、いくら貴女が水の聖女と称えられていたとしてもその意見を聞く訳にはいきませんの」
「そんな…」
「リフ、どうしようもない事だってあるのよ…」
がっくりと肩を降ろすリフィン、このままここに居ても無駄だと判断したアストレアは退出しようとリフィンに声をかけると
「貴女…リフさんにそっくりな顔をしていますけどまさか」
「…姉よ、アストレア・グラシエルって言うわ」
「やはりそうでしたか…しかしリフさんの血縁関係に姉が居たとは知りませんでしたわ」
「あっそ、ここに居ても無意味だからとっとと帰らせて___」
「いいえ、貴女達にはここに残って頂きます」
「…は?」
お姉ちゃん…その顔怖いよ
ここに居てもリフィンの願いは聞き届けられないのに、何故ここに残らねばならないのか理解できなかったアストレアだが、リフィンは理解していたのか深刻そうに口を開いた。
「原因が私にあるから…ですか」
「なっ!?」
「えぇ、流石は水の聖女様ですわね…」
何故彼らは身分証も持たないのにアルモニカまでやって来たのかという事の発端は、リフィンが水の聖女としてアルモニカを救い、水への信仰を深めさせた事によって急激に生活が潤うようになったのが原因だった。
水の聖女の噂が各地へ広がると水を求めてやってくる人が増え始め、噂が大きくなるにつれ各地から大勢の人々がアルモニカを目指しやってきたのであったのだ。
とそこまでお姉ちゃんに伝えると理解してくれた。
「でもここに居たとしても何も解決出来ないじゃない」
「その事についてですがこちらで対応を練っているところでありますわ、人道支援として食料提供している程度ですが…私は水の聖女を匿えればそれでいいのです」
「…どうしてですか?」
「既に北の城門で身分証を持たない者どもが一斉に襲いかかり、数名ではありますがアルモニカに入り込んでいるからです…死者は出なかったものの門番や兵士が10名程負傷してしまいました」
「そんな…」
「おそらく盗賊の一味が彼らの中に紛れ込んでいたのかも知れません、どこかに潜んでいるのか捕まえるまでは至っておりませんがアルモニカの中でまだ目立つような行動を起こしていないとなると…狙いは恐らく」
そこでリフィンをジロっと見つめて来るプラムに、リフィンは盗賊の狙いを察したのか腕を交差し、顔を青くしたのと同時に悪寒を感じた。
「…私、ですか」
「と勝手に思っただけですし確信はありませんわ…ただ貴女は水の聖女と言われる程有名になってしまった」
「誰のせいだと…」
「常人より大量の水を生み出す事の出来る水魔法使いなんて誰でも欲しがるに決まってますわ…それに冒険者登録していてランクはFとまだ初心者に近いのであれば盗賊なら目を付けるでしょう」
「…うゎ」
「なら私がリフを盗賊から守ってあげるわ、それなら問題ないでしょ?」
プラムは刃の無い藍色の剣を掲げたアストレアの胸元にある冒険者の証であるバッジを見つめた。 どうみても冒険者になったばかりのGランクのバッジだったが、次のリフィンの一言である程度アストレアの実力を図るのであった。
「お姉ちゃんが盗賊退治やったら捕縛以前に血祭りになりそうで怖いよ」
「…」
「血祭りどころかリフを狙う奴は皆殺しよ!」
「…なかなか勇ましいお姉様でございますわね」
「そうですね…
「とりあえず貴女はここに居て下さるかしら、私は対策を練るので忙しいし何か案があれば都度聞きますわ」
「はい」
城門の外に群がる人々をどうにかしないと門を開けられないので流通がストップする、群がる人々の中に盗賊が紛れ込んでいる可能性もある為容易には接触出来ない。 このままだと本当に他の町や村から流れてきた人々が盗賊の餌食になる事も考慮され事態は一刻一秒を争うのであった。
「うーむ…」
「あれでもない…これでもない…それはリスクが高過ぎるし…こっちのやり方だと問題あり過ぎて始末書の嵐が」
『私には分かんないから身体でも動かしておくわ』
『いや少しは考えろよ…』
急がねばならないのに手を講じる策が無かった。 じっくりと考えるリフィンに大量の書類をばらまき手段を探すプラム、アストレアに至っては何も考えず藍刃丸をヒュンヒュンと軽く振るっていた。
そんな時にジリリリリリリンと耳を騒がす音が鳴った。
「プラムよ、なんなのアンソニー…」
プラムが持ち上げたソレは魔導通話と呼ばれるもので少し離れたところから会話が出来るという魔道具だ。
ジリリリと音がうるさく鳴り、煩わしそうにプラムは魔導通話の受話器を取ったのだが、リフィンはその魔導通話を見てある1つの策を思い付いたのであった。
「魔導通話…あっ! 魔道具だ!」
「なんなのアレ?」
「アレを制作するには純度の高い黒い魔石と回路と導線…光魔法使いが必要だけど後でクリスさんかメリコムさん呼ぶ事さえ出来れば、素材とあれやこれやをぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ……」
リフィンはその辺に落ちていた紙を1枚裏返し、そのまま座り込むとバッグからペンを取り出して色々と何かを書き殴っていっていた。 もうその時には既にアストレアの発した言葉やプラムが魔導通話で会話している声すらもリフィンの耳には入って来なかったのである。
『そういえばリフって、魔道具の発明にも精通しているんだったわ…』
『末恐ろしいな』
誰かのためになるような魔道具をリフィンは発明していっていた。 魔法科学研究員になってからは数々の魔道具の発明によって腕が認められとあるプロジェクトの一員になり、魔導装置の開発に少し携わった。
そこでは余りリフィンが活躍する事は無かったが、誰かの為になるような魔道具の開発には夢中になるようで、今まさにリフィンの状態はソレに近い状態であったのだった。
「聞いて! ここから東に進んだ住宅街のところで盗賊らしき……なにこれ」
「あ、続けていいわよ」
「え、えぇ…」
魔導通話でアンソニーと通話し終えたプラムがリフィン達に事態を告げようとしたのであったが、リフィンがぶつぶつと1人呟きながら何かを書いているので少し驚きを隠せないプラムであった。
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