城門に群がるもの
リフィンとアストレアの喧嘩はすぐに終息した。 お互い思うところがあったのか謝り合う事によって今まで通りの仲の良い姉妹に戻ったのだった。
その後タキルがいつも通り上空から見張りを行い、魔物や盗賊に奇襲される事は無く、逆に魔物を見つけたので奇襲をかけたりしながら進んで行った。
歩きながらでもリフィンはポコやディクトにこの世界の歴史を教えたり、グレンはテイムしたスピリットデーモンにユウという名前をつけたりするのだった。
ユウはグレンの影に潜む事が出来るのか、影からにゅるっと頭を出してなぜそういう名前になったのか聞いたのであった。
「なんでユウなの?」
「スピリットデーモンといえば魔物だ、そして身体は霊体で幽霊みたいなものだ…だから幽霊の幽を取ってユウと決めた。」
「なるほど…そして使役しちゃったからほぼ無害になった空気な訳ね」
「酷いですよレアさん! 取り憑きますよ!?」
「取り憑こうとしたらこの藍刃丸の錆にして…あっ」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「…この藍刃丸なんだけどね、ヒカル様からリフに渡せって言われてたの忘れてた、はいコレ」
「え? コレ私が受け取っていいの?」
「うん、ヒカル様がリフの為に作った武器よ、持ち手に魔力を流せば刀身が現れるわ」
アストレアから藍刃丸を渡されたリフィンはじっと藍色の刀身を見つめ、何を思ったのかそのままアストレアに返すのであった。
「…これはお姉ちゃんが使って、ヒカル様が私の為に作ってくれたのは凄く嬉しいんだけど…剣を振った事ないから私じゃ扱えないかも」
「でも渡せって」
「じゃあお姉ちゃんにあげる、それと同等の武器なんてないだろうしお姉ちゃんはもうソレ使い慣れてるんじゃない?」
「…ありがと、そうさせて貰うわ」
リフィンの言った通りアストレアは藍刃丸しか持っておらず、代わりになるような武器を探すのは不可能に近い。 力の弱いリフィンよりタキルと友情の誓盟をしたアストレアの立体起動を駆使して振るった方が効果があると2人は理解したのだった。
アストレアはリフィンから藍刃丸を受け取ると藍刃丸は光を放ち消えた。 その光景を見ていたリフィン達は興味を示す。
「どういう原理なのそれ?」
「詳しくは知らないけど、私とリフしか使えないように設定されてて、念じるだけで取り出したり仕舞ったり出来る訳、持ってる方が死ぬと持ってない方に武器が流れるってママ…ヒカル様が言ってた」
「私達には過ぎた代物ですね」
『収納魔法搭載武器じゃん!』
『あの切れ味は納得だよ』
「絶対私には向けないで下さいね? もう死んでるけど余計死んでしまいます! それと、ヒカル様って誰ですか?」
「ユウも仲間になったんだし、ある程度は説明してあげないとね」
そうしてリフィンはグレンの影から姿を現すユウに自己紹介から使命などを説明したり、アストレアやディクトに水魔法を教えたりして帰路は充実したものとなった。
● ● ● ● ●
夕日が沈みだす頃、野営の準備を進めテント周辺は土と氷の防御魔法で固めた、一応見張りの番は黒剣の集いやグレンがやると言ってきたので有難くリフィンとアストレアは先にゆっくりと休む事が出来たのであった。
そして翌日、陽が昇る前に移動を開始し、予定ではお昼頃にアルモニカに到着する見込みだ。 リフィン達は数日間とはいえ長い旅をもう少しで終えるところまできていたのだった。
「もう少しでアルモニカだぜ!」
「このままいけば到着は昼前っすね」
もう少し歩けばアルモニカだ。 やっと帰還出来ると思うと気持ちが高鳴ってくるのであるが、ディクトにとってはその逆だった。
『リフちゃん! 水がどばぁって出る魔法をもう一度教えて!』
『えーっと、無慈悲な大洪水の事ね…あれは魔力変換能力で空気中に漂う魔力粒子を刺激し、魔石への負担を軽くすると同時に』
『ちょっと待ってちょっと待って! その魔力なんとかが理解出来ないんだ!』
『あー…ディクトは白煙の濃霧使えるよね?』
『うん!』
『実はそれも魔力変換能力で空気中の魔力粒子を刺激して発生させてる魔法なんだけど、まさか無意識で使ってたり?』
『…かも知れない、ちなみに結構魔力使う』
ディクトはアルモニカで魔法を使ってはいけないという制限をされているので、アルモニカに着く前にどうにかして魔法の練習をして新しい魔法を覚えたかったのであった。
水の魔物とはいえ、ある程度は無意識のうちに覚えた魔法があったりするのだが、リフィンの様に多彩な魔法を覚えるのには相当な知識が必要でディクトは聞き慣れない名称に苦戦を強いられていた。
「そういえばお姉ちゃん、どこで無慈悲な大洪水を覚えたの?」
「そりゃあシズル様に教えて貰ったわよ、っていっても攻撃技に使えるのはそれだけなんだけどね」
「…ずるい」
「羨ましい限りだな」
「ま、まぁ数日お世話になったから当然よね!」
「魔力変換能力とかから教えて貰ったの?」
「いや全然…そんなの言われても分かんないからテキトーに呪文だけ教えて貰って水が大量に出るイメージしてたらいつの間にか出来てたわ」
「えぇ…」
アストレアは魔法で水を出すことは普通に出来るが、魔法の詳しいところまでは理解していなかったのであった。 屋敷にて一般常識は勉強していたのだが伯父のシリウスにより教科書や参考書が没収されていくのでリフィンと居る時にしか勉強出来ず、魔法の深いところまでは知り得なかったので仕方の無い事だったのである。
『なるほど、水が大量に出るイメージだね…』
『ディクト、ちゃんと基礎から教えるから変なイメージは止めておいた方が良いよ』
『う〜ん…』
『…道から逸れちゃうよ!』
『わわっ!?』
焦る気持ちは分かる、しかしここの基礎をしっかりしておかないと魔石に過度な負担がかかったりするのでディクトを止めるべきか迷った、そしてディクトは悩みに悩みまくっているようで道から逸れようとしてたところを手綱を引っ張って正気に戻してあげるのであった。
『ごめんリフちゃん』
『大丈夫、ゆっくり覚えたらいいよ』
『ウチも正直イメージしかないから魔法の基礎から覚えたい!』
『分かった、基礎って言っても魔法が使えたら大体理解出来てると思うし、魔石に負担をかけない為のものだからね』
『はーい』
ポコやディクトに魔法を教える事になったリフィンであったのだが、まだ他にも教えて欲しいと言って来る物が居たのであった。
「リフ…また魔法を教えてくれ」
「っ! 私にも教えてよ!」
「わたしも知りたい!」
「ピィーピョロロ!」
グレン、アストレア、ユウ、タキルがそれぞれリフィンに殺到した。 グレンには以前フレイムバーストを教えているのだが…
「わ、分かったけどそんなにいっぺんに来られても…」
今度魔法の基礎知識を教える講座を開かないとなぁ、とアルモニカに帰ったら用意しておこうと心に誓ったリフィンであった。
● ● ● ● ●
「やっとアルモニカに帰ってこられましたね」
「僕としてはしばらく休暇が欲しいですねぇ」
「とりあえずギルドに報告だ、例のアレについても報告しなければならない」
「…だな」
「そうじゃのう…お嬢さん達もちゃんと着いてくるんじゃぞ、ちょっと重要な話になるかも知れんからな」
「分かりました」
アルモニカの白くて巨大な城壁が目前までやってきていた。 アルモニカの西門がみえてくると100人程の人だかりが見えていて、近づくにつれて彼らは門に並んでいるのでは無く、門に群がっているのだと分かった。
「ありゃ何だ?」
「なんか事件でもあったのかね?」
「…ちょっと聞いて来るっすよ!」
「私も行きま__」
「リフは待て!」
現場で何がおこっているのか調べる為ロルタプが馬を走らせて駆けて行った。 リフィンも気になってそれについて行こうとしたのだがリーダーのシックに腕を前に出されて止められる。
「俺達は一旦ここで待機だ、ロルからの情報を待つ」
「何か事件が起きてるなら近寄らない方が身の為だぜ! ロルはその辺に関してはプロだからな」
「…分かりました」
そして数十分後、情報を入手したロルタプが帰ってくると皆に説明してくれるのであったが、かなりの事件であったのだった。
「戻ったっすよ!」
「おう!」
「おつかれロル、でアレはいったい何だったんだ?」
「それがっすね…ここ最近アルモニカの水事情が上手くいってるおかげで、他の村や都市、外国からの移民が溢れかえっている状態の様っす、水の聖女…まぁリフちゃんなんすけど、そんな逸材を冒険者ギルドが輩出したとかで首都のハーモニカからもお偉いさんがやって来てるって話っす」
「「「「………」」」」
「で、どこかの門で騒動が起きたらしくばっちり警備が厳重になってるっぽいっすね、そこの門に群がっているのは身分証を持たない村の住民やどこからか逃れてきた奴隷とかで、門番兵が中に入れてくれってめっちゃ懇願されまくってたっすよ」
「…どうしよう」
アルモニカで発生した水不足の危機をリフィンが救い、そのまま水の聖女と言われるようになり、水の聖女の教えを聞いたアルモニカの住民達は水や水の女神に対して信仰するようになったので急激に水が潤うようになったのである。
そうなれば水を求めてやってくる人達が出て来るのも当然で、安寧を願い歩む者たちがたくさん溢れかえってしまったのであった。
「まだ城壁の中は見てないんすけど、人口が増えてある程度混乱してる事間違いないっすよ…」
「だろうな、宿屋も既にパンパンかも知れねぇな」
「…城門も下手に開けられない、物資の搬入出がしづらくなる」
「それよりどうやって中に入るか考えるのが先じゃわい!」
「他の城門は?」
「遠いのもあるので、流石にそこまでは調べられないっす」
「…仕方無い、時間はかかるが待ってみるとしよう」
城塞都市アルモニカは高い城壁に守られていて、城壁は円周約50キロメートルと大きい、出入りする為の城門はそれなりにあるが待つことになった。
「…グレン、彼らを救うにはどうしたらいい?」
「…それはおすすめしない、リフの気持ちは分からんでもないが1人でどうこう出来る問題ではない」
「私もその方が良いと思うわ…下手に刺激するのもどうかと思うし面倒ごとが増えるだけよ」
「…」
やはり皆の言うとおりに待つ方が良いのだろうか、リフィンはもう少しだけ彼らを救う為に色々と方法を考え立ち尽くすのであった。
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