座敷童?
ジルット村の宿にて、グレンは部屋で書物を読みふけっていた。
やたらと古くさい古書を開く、表紙は少し焦げ跡があり、紙は黄ばんでいて少し角が破けていたりシミになっていたりとかなりの年代物の本のようだ。
「…家宝とはいえ、読めないと意味ないしな」
グレンの持っている本は古代ティエル文字で書かれた書物であるが、内容の半分を占めているのは解読する事が出来ない変な文字だらけなのでグレンは難儀していた。
この本はグレンが子供のときから大事に持っている宝物の1つでとある人物から手渡された物である。 古代ティエル文字で書かれている内容は天候を操る大魔法使いをメインとした英雄譚や、彼の癖や趣味思考、生み出した魔法の事などが記されていて著者に関しては一切触れられていなかった。
内容を読んでいくとどうやら肝心な所は変な文字を使って記されているらしく、グレンは数年解読に挑んでいるがいつまで経っても変な文字は読めなかったのであった。
解読出来ないその文字とは、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類を使う日本語であったからだ。
「画数の多い文字が特に意味不明なんだよな…どこの文字なのかさえもわかんねーし」
なぜグレンが1人部屋でこうしているのかには訳があった。
リフィンを守れなかったという自分の不甲斐なさに落ち込むも、落ち込んだままでは居られないという思いとリフィンに会わせる顔が無いという理由から、酒場にも行かず出来るだけリフィンの事を考えない様にしようとした結果こうして1人で本を読みふけっているのである。
「…もう食い終わったのか」
串焼きがあった筈の所には既に串しか残っておらず少し食べ足りないと感じると同時に、その串焼きを持ってきたリフィンの事を思い出すグレン。
リフィンがグレンに串焼きを持ってきたときリフィンの顔を見て嬉しくなり、優しさにまた惚れ直したのだが一気に恥ずかしくなって無愛想に対応した事を今更ながらに後悔するグレンは、はぁ〜っとため息をつく。
なんて事は無いただの肉を串で刺して焼いただけのモノだったのだが、グレンにはそれが凄く美味しく感じたのだ。 リフィンが作ったものではないが彼女が自分に持ってきてくれた串焼きなのだ、そう思うと余計美味しく感じていた為か串焼きが無くなった事実を知ると急にテンションが下がるグレンであった。
辺りも暗くなり酒場での宴もまだ始まったばかりであろうが、グレンは未だ行動に出れないでいると宿の入り口の方から人の気配がした。 聞き耳を立てていると隣の部屋に入って行ったことから、どうやらリフィンとその姉であるアストレアなのだと把握した。
「さてと…あいつをどうしてくれようかな…」
と隣の部屋から聞こえてきた。
グレンはアストレアに『死刑確定』と言われているので何されるのか分からないが扉に向かって身構える。
コンコンッ
「グレンって奴、居るんでしょ?」
「あ、あぁ…」
次第にアストレアのものと思われる足音が扉の所までくるとドアをノックして訪ねてきた。 流石に居留守は不味いと思い軽く返事をしたのはアストレアの声は怒気を孕んでいるようにも聞こえたのでそんな生返事しか返せなかったのだ。
「少し話があるんだけど良いかしら?」
「…入れ」
「ちょっと手が塞がってるからドアを開けて下さらない?」
「…少し待て」
ガチャっとドアノブを回した瞬間、アストレアの切れ味のいい青色の剣がドアを突き抜けドアノブが一刀両断された。
「危ねっ!?」
警戒はしていたので腕をすぐに引き躱す事に成功したが、下手すれば腕を持っていかれていた。
「ちっ、勘の良い男ね…死ねぇぇぇえええっ!!」
「いきなりかっ!?」
襲ってきたアストレアにグレンはその辺の椅子を掴み、椅子の足をアストレアに向け対峙した。
「俺の暗殺か? 誰の差し金_くっ!?」
「誰の差し金でも無いわ、リフに手を出すやつは殺していくだけよ!」
「うぉっ!? ちょっと待て、俺はリフが好きなだけだ!」
「リフは私のよ! 誰にも渡さないわ」
「やめろ! 一旦話し合いをだな!」
「あ”ぁ”っ!?」
「くっ、リフはこんな事望まないと思うが? 本人の意志でないなら__」
「リフの意志を無視してキスしたのはお前だ死ねぇぇぇえええ!!」
「っ!?」
暴れに暴れまくるアストレアは、青色の剣で至る所に傷をつけていった。
床や壁、テーブルや椅子、グレンのものと思われるバッグなど、部屋に存在するありとあらゆるものを傷つけ、壊し、蹴り、踏みつけた。
怒りに狂うアストレアであるがグレンは真剣に攻撃を躱しているのでグレン自身に怪我は無く、それにまた怒りを覚えたアストレアが余計に暴れ回るのであった。
グレンも怒り狂うアストレアをどうやって無力化しようか考えていると
「やめてぇ!この家壊れちゃう!?」
「「っ!?」」
不意にどこからかアストレアでもグレンでもない聞き覚えの無い声が聞こえてくると、霊体のような薄い色をした宙を舞う女性がアストレアとグレンの間に割って入ったのであった。
「なにあんたは? ぶった斬るわよ?」
「わ、わたしはここのあるじなのです! それ以上暴れると家が壊れるのでやめてください!」
「まさかこんな所にスピリットデーモンが居るとは」
スピリットデーモンとは霊体の魔物で姿形を自由自在に変化させることが出来る魔物なのだ。
アストレア達の前に出てきたのは女の子っぽい声や姿をしていた。
「え、わたしそんなんじゃないよ! この家を守る座敷童なんだから!」
「ざし…なんとかとか知らないけど邪魔するのならぶった斬るまでだわ!」
「えぇちょっとぉ!?」
「魔物には違いあるまい」
「ひどい!?」
アストレアとグレンはひとまず、目の前の魔物を駆除する為に会話上では手を組むのであった。
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