光の女神はツッコミ役
リフちゃんまだですか・・・
お姉ちゃん達に乗っ取られちゃう
「使役魔法は単に動物や魔物を使役するだけの魔法ではない、人間と動物の絆がテイムの印となって体に現れる…それによりお互いの気落ちがある程度は読み取れるようになるのじゃ」
「ある程度? オレは普通にリフやレアと意思疎通出来るぞ?」
「おぬしが特別なのはそこじゃ、本来なら念話なんてもんは使えん、たとえ使えたとしてもただの動物が人間の言葉を理解したり喋ったりは出来んのじゃ」
「オレが転生者で念話が使えるからそうなっているのか…ちょっと待て、ポコ! あー…リフのテイムしたタヌキも念話が使えていたのはどういうことだ!?」
「お前の主人がリフィンとやらになったおかげでその子も同程度の力を得ておるからのぅ!」
「ほわー…」
と光の女神ヒカルが無い胸を張って高らかに説明してくれた。
青い翼が生えた状態でもタキルの意志や念話が伝わってくるのであるが、アストレアは今の説明に疑問を覚えたのだった。
「私はタキルを軽く踏みつけただけでテイムしたのだけど、信頼や絆なんて無かったと思うわ」
「うーむ…お主らにはリフィンという共通の存在があったからだとヒカルは思うのじゃ、またはタキルが女性に踏まれただけで絆される変態なのかもしれないがの」
「うっわ…」
『今気持ち悪いって思ったなコラ! オレはそんな変態じゃ…そういえばリフに踏まれてから念話が通じたような、それがきっかけかも…』
「きもっ、今すぐコレを解除してくれない?」
『解除の仕方なんて知らねぇよ!?』
アストレアは自らの背中に生えた翼を分離させるようにイメージすると、1本1本の羽がバタバタと舞い上がって消えていきそこからタキルが姿を現し解除に成功する。
『めっちゃ傷ついたわ…』
「冗談よ、翼に神経が繋がってるのかもしれないけど妙に違和感があったから解除しただけよ」
『なら良いんだが』
“…人間と動物、または魔物が1つに合わさる事を我らは友情の誓盟と呼んでいる。 ミスティエルデでは昔その技法を使って発展した国や地域があったのだが、今では廃れてしまっていてその存在を知っている人はほとんど居ないだろう”
『友情の誓盟か…オレ達の絆や友情がこういう力を発揮するって事で大体合ってるのか?』
“そのとおりだ、絆や友情の結びつきが強い程その力は増していく”
『使役魔法ってすげぇ魔法だったんだな!』
そのような特殊な魔法があるとは知らなかったタキルは少し興奮する。 もしアストレアやリフィンを連れて大空に飛び立った時の事を想像すると絶対に楽しいだろうと期待に胸を含ませるのであった。
「でもなんでそんな心温まるような技法が廃れてしまったのか気になるわね…」
「種族を超えた融和の光と成りて…」
“………”
「いや、なんでもないのじゃ…忘れてくれ」
なぜ廃れてしまったのか理由が分からなかったアストレアが疑問に思って言ってみたのだがヒカルが呟いたと思えば口を塞ぎ、ソヨグもだんまり、困ったような顔をしながらヒカルは忘れろと言ってきた。
「いやそこ大事な所でしょ!」
「あー…それはじゃな、普通の動物や魔物をテイムして友情や絆を深めても友情の誓盟をする事が出来ないからなのじゃ」
「どうしてなの?」
「人間と比べて動物というのは感情が薄い生き物での、本当に仲良くなれば可能ではあるがタキルのように意思疎通が出来る個体なんて滅多におらぬ…そしてこの世界の魔物使いといえば魔物を痛めつけて強制的に言う事を聞かせるタイプの人間が多くなり、食事や衛生環境もしっかりしていないとそう易々と心を開いたりはせぬのじゃ」
なるほど、とヒカルの言葉に納得して腕を組んで顎に手を当てて頭の中で整理するアストレアと、ふぅ〜と小さなため息をついて感づかれないように肩を降ろすヒカル。
『まぁ人間を信用しているように見えても、いい子にしておけば食事が貰えるという知恵と本能だけで生きてる動物も居るからな」
「流石現役で動物やってる奴が言うと妙に説得力があるのじゃ!」
『オレが人間だった時の経験談だからな!? オレ自身はそういうのじゃ無いから!』
「分かっておる…まぁお主はテイムされる側の生き物の中でもトップクラスの性能を有しておるからの、役に立たない事はないから安心するのじゃな」
『…え?』
「見た目はただの青い小鳥ではあるが友情の誓盟をした時のポテンシャルがかなり高い種族での、普通のスズメが魔物使いと友情の誓盟をしても人間を支える程の羽なんて生えないのじゃ」
どうやらタキルは友情の誓盟に特化したタイプの動物でかなり上位種のようだったが、特化した代償として元の姿のままではただの非力な小鳥なのだというのだ。
そのためタキルのようなひ弱な鳥は天敵が多い為か数が非常に少なく、身を守る為に巨大な木の高いところに営巣するのだと説明してくれるのであった。
『なぁレア、オレの力を確認したいからもう1回やってみてもいいか?』
「えぇ良いわよ、タキルと一緒ならリフを守れるわ」
『あぁ!』
リフィンを守る、そう誓い合ったタキルとアストレアの同調率は高くアストレアの背中に吸い込まれて行くと、再びキラキラとした青白い光とともに深い群青色の巨大な翼がブワッと広がった。
そしてゆっくりと翼を閉じてアストレアはヒカルに向かって深く頭を下げた。 リフィンを守る力を身に付ける為お願いするのであった。
「もう1度お願いします…妹のリフィンを守れるように強くなるまで、ここで稽古をつけて下さい!」
“元よりそのつもりだ…そうしなければ戻った途端に監禁され、わざわざ我ら神が住まう神域に来た意味が無くなるであろうからな”
“デュフフ、世界を救うために頑張ってる妹を守る姉…最高で御座るな!”
「あまり戦いは得意な方ではないのじゃが、出来る事があるならば力を貸すのじゃ!」
そうしてまたタキルとアストレアを鍛える為に胸を貸す神達であった。
● ● ● ● ●
それから15日が過ぎた。
やっと水の女神シズルからアストレアの遺伝子に眠るえぐちしずくの力を目覚めさせて貰い、水魔法への信仰を深めて魔力量の増加を測り、
風の神ソヨグからは友情の誓盟状態でのタキルの風魔法の習得と応用、そしてアストレアと一緒に飛びながら空中での立体起動や立ち回りを、
土の神ユラグからは実際の魔物に近いゴブリンゴーレムやドラゴンゴーレムを生み出して貰い、主に剣術を用いてそれらと手合わせをさせてくれた。
「お主ら! どんだけおかわりするんじゃ!?」
そして光の女神ヒカルには、主にアストレアが必要とする炊事洗濯を一手に引き受けて貰っていた。
改造されたシズルの部屋に設置されたダイニングキッチンで割烹着姿のヒカルが忙しなく動き、テーブルに座るアストレアは頬にご飯粒をつけながらおかわりを要求していた。
「おはわぃ!!」
『オレもだ!!』
「もっと味わって食べても良かろうが!? 白飯はもう無いから代わりにたくあん食っとけぇ!!」
いくら貴族の娘であろうがここでは食事のマナーなど気にせず豪快に胃に流し込んでいくアストレア、タキルも魔力の補給に焦っているのか自分よりもサイズがある食事を平らげては排泄するのを何度も繰り返していた。
「うっぐ…んはぁ…おえっ…今日の稽古で合格貰ったら…んぐっ、リフの所に向かうのよ!!」
『おう!』
「おぬし貴族の娘じゃろうが!? 何度も言うが上品に味わって喰うのじゃ!!」
「おはぁり!!」
「もう白飯は無いって言ったじゃろうが! だからたくあんをっ…もう無いじゃとぉ!?」
連日に渡ってソヨグとユラグの稽古をボロボロになりながらも続けてきたアストレア達は、今日の稽古で合格点を貰ったらミスティエルデの世界に戻してやる、とソヨグが約束してくれたのでいつも以上に食事を取っているのであった。
“やはり日本のコメは美味い…農家の人達には感謝せねばなるまいな”
“デュフフ、ヒカルは立派なメシウマ嫁になるでござるよ!”
「なんでおぬしらまで食っとんのじゃー!?」
相変わらずソヨグとユラグの姿は見えないがお茶碗に入ったご飯が2つあり、1つは空中で消えていき、もう片方はご飯が地面に落ちたかと思えば一瞬にして消滅する。
「そういえば師匠達って、姿が見えないけど実体はあるの?」
“在ると言えば在る、無いと言えば無い”
“デュフフ、拙者は姿を見られたくないだけでござるよ!”
「なるほど…水と火の女神様の姿が見えるのもなんとなく把握できたわ、ヒカル様がなぜ見えるのかは分かんないけど」
なぜ見える神様と見えない神様がいるのか前々から疑問に思っていたアストレアが考えた理屈としては、
地面が存在しているという事はそこに土の神が宿り、大気や吹く風と共に風の神が宿る。 地面そのものが神であり、大気そのものが神なのだということだ。
と思っていたのだが神達の返答からして少し違ったようで、深く考えても分からないので考える事を止めた。
しかし光と闇そのものは見えないのになぜか光の女神ヒカルは目に見えるのか不思議でならなかったアストレアであるが、その答えはタキルが導いていた。
『光と闇は常に交わっているからその中間があると居心地が悪いんじゃないか?』
「流石はタキルじゃ! ソヨグ達みたいに全体を支配していれば別にいいのじゃが、光と闇は一緒のスペースを共有することになるから分けておるのじゃ!」
「なるほどね…でもここに来て結構経つけど闇の神様を見た事が無いのよね」
「あー…あーそういえば…実はな…ちょっと前から闇の神セメグは出張中で丁度今だけ居らんのじゃよ」
『なーんか怪しいな…』
「そ、そんな事はないのじゃ…」
「ほーらタキル! ちゃっちゃとご飯済ませて稽古に励むわよ!」
『おっ、そうだな!』
あからさまに言葉を濁したヒカルであるがそんな事を深く探るよりも、ちゃっちゃと食事を済ませて稽古で合格点が取れるように奮起するアストレア達であった。
「こらっ! お茶碗くらい片付けて行くのじゃー!!」
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