↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
4章 蒼きツバサ
68/138

アストレアの希望と光

がんばれお姉ちゃん!

妹に劣る姉なんて居ねぇ!   ・・・筈だ!

「…タキルは久しぶり、君はリフィンのお姉さんね…私は水の女神シズル、ミスティエルデの生命の源である水を司る者」

『お久しぶりです、タキルです』

「初めまして、アストレア・グラシエルです」

「…私に気を遣わずにいつもの口調で話してくれても構わない、念話も許可するの」


 タキルもアストレアも女神を前にしていつもの口調で話す事を躊躇(ためら)われたので、丁寧な感じで自己紹介をしたのであるが水の女神シズルには不自然に見えたのか普通に接しろと言ってきたのであった。


『流石に女神様の前でいつもの口調は失礼になりま…なるんじゃないか?』

「…それでいい」

「そう言うのであればわかったわ、でもそれだと水の女神様の威厳を損なうような事になるんだけど良いの?」

「…弱体化している水の女神に威厳なんて無駄なプライドよりも今は私や水への信仰を深めるのが重要だと判断しているの…君がここにやって来たのはモエルから連絡を受けているから知っているし、君の中に流れているえぐちしずくの遺伝子の力を目覚めさせる為にリフィンが寄越した事も把握済みなの」


 水の女神シズルはなんでも知っているようであったが、実はモエルがリフィンを監視しているのを知っていたシズルはリフィンの行動を観察、そしてシズルに報告するように動いていたのだと教えてくれたのであった。

 すると水の女神シズルはアストレアの胸元に手を伸ばして告げるのであった。


「…早速君の中に眠るえぐちしずくの遺伝子を呼び覚まそう…と言いたい訳だけど、最初に聞いておきたい、リフィンにはミスティエルデの世界を救う使命を背負って貰っているの、でも彼女だけじゃ負担があまりにも大きいから君にも手伝って貰いたい…でも、果たして君にそれが出来るの?」


 じっとアストレアの目を見つめてくるシズルは「今まで何もやってこなかった君に何が出来るとでも言うの?」と言わんばかりの表情を見せ付けられて、アストレアは今までの自分の(てい)たらくさを語るのであった。


「リフは今1人でミスティエルデの世界を救おうとしているのね…水魔法の効力の低下の原因を探る為に子供の頃からリフに押し付けて、自分は屋敷で何もせずずっと甘えてばかりの生活をしていたわ。 何の苦労もせず、勉強に熱心なリフに私は力になってやる事も出来なかった…」

『それは仕方無いだろ、屋敷に閉じ込められてたんだから』

「もっと何かしらリフのサポートは出来た筈よ、あまりにもリフは賢く育ってくれたから私が口出し出来るものじゃなかった…って言えば醜い言い訳になるわね、ずっとリフに甘えていただけなんだから」


 今思えば自分は姉としてリフィンに何もしてやれなかったと反省するアストレア。 屋敷では話し相手がリフィンしかおらず、勉強を教えてくれるのも相談に乗ってくれるのもストレスを発散してくれるのもアストレアにとっては全部リフィンだけなのであったのだ。

 アストレアにとってリフィンは希望の光であるが、アストレア自身はリフィンに甘えるだけの穀潰しなのだと今更ながらに感じた。

 そして半端な気持ちのまま力を手に入れてこの先リフィンの手伝いが出来たとしても、絶対リフィンの足手まといにしかならないと容易に想像出来てしまうのであった。


「…ごめんなさいシズル様、今の私ではリフの力になれそうにはありません」

「…」

『ちょっ、ここまできてそれは無いだろ!? 部屋で鍛えたりしてたのはいったい何の為だったんだよ!?』


 まさかのアストレアが決断出来ず、リフィンの力になることを否定してしまった。 タキルは必死にアストレアを説得するよう問いつめていき、シズルはアストレアの胸元から手を離して悲しい表情をするだけであった。


「…少し考えておくといいの、どうせすぐに元の世界に帰れないのだから」

『なんでだ?』

「…火の女神モエルから連絡があったの、大賢者の本は現在君の伯父が持っているそうでこのまま戻れば君はもう二度とあの屋敷から出れなくなる可能性が高く、また大賢者の本を使ってこの神域に転移する事も出来なくなるかもしれないの」

「…」

『マジかよ!? 別の所に転移させてくれるとか出来ないのか!?』

「…無理なの、この部屋をしばらく貸してあげるから今日は大人しくここでゆっくり休むと良いの」


 やはり転移する瞬間を見られていたのだろう、部屋はもぬけの殻で読めない怪しい書物が置かれているのであったなら怪しまれるのは当然の事だろうとタキルでも想像出来た。

 幸いこの部屋を貸してくれると言うのでまだ寝てなかったタキル達は有り難く使わせてもらう事にしたのだった。


『…ごめんタキル』

『どうした?』

『…私にはリフのように知識も無ければ経験も勇気も無いわ』

『気にするな、力量やバストのサイズでは余裕でリフに勝ててると思うぞ』

『…身体が小さくてもあの子は良くやってると思うわ、私にはとてもじゃないけど』

『そう卑屈になるな、お前はリフの姉ちゃんだろうが! 世界を救おうとしている妹を誇りに思え!』

『…そうね』


 アストレアは自分の無力さに対して悔しいと感じたのか、無言のままその場で立ち尽くしていた。 首を下に向けているので肩に乗っているタキルからは髪で隠れて見え辛かったがアストレアの目尻にキラキラと輝く涙のようなモノが流れていて、肩が強張って震えていた事から静かに泣いているのだと分かってしまった。


「…ちなみにだけど、今あなたに必要なのは妹を守る覚悟ではなく休息なの」

『休息? 必要か?』

「さっき魔法使ったけどそんなには…なんで?」


 シズルはアストレアに休息が必要だと言ってきた。 先程モエルが現れた時に水生成を連続で使用したが休息が必要な程ではないと思っていると、予想すら出来なかった答えが返ってきた。


「…君の魔石は随分と力を奪われていて疲弊しているの、下手に遺伝子の記憶を呼び覚まそうものなら魔石は耐えられずに砕けるの」

「………っ!」

『…え?』

「…どうやら思い当たる(ふし)があるとみたの」

『どうなんだレア?』

「…流石は女神様といったところね、なんでもお見通しとは恐れ入ったわ」


 アストレアは理解した。 なぜあの屋敷にずっと幽閉されていたのかを、しかし()()使()()()()()()のかは気になっても今は知る(すべ)を持っていないので保留しておくことにした。


「…私はこれから転移ゲート閉鎖の為にしばらく留守にするの、私達神は睡眠も食事も排泄も必要としないから何も無いこの部屋は不便かもしれないけど、光の女神ヒカルを呼んであるから何かあればそれに言うと良いの」

『あぁ、お仕事頑張ってな』

「…わかったわ」

「…じゃあまたなの」


 そう言ってシズルは扉を開けて出て行った。 タキル達はシズルの部屋をぐるりと見回すとテーブルが1つ、椅子が2つにベッドが1つあり、これらは全て木製でベッドに関しては布団すらなかったのである。


『このベッドで寝ても床で寝るのと大差無いよな…』

『さっき睡眠も必要としないって言ってたし、なんであるのか疑問なのだけれど』

『あー…それはアレだな、レアだって暇なときは横になりたい時もあるだろ?』

『そりゃあるけど、身体が痛くなりそうなベッドってどうなのよ?』

『シズル様はほら…全身が水だから関係ないんだと思う』

『…なるほどね』


 水の女神シズルがベッドに横になる所を見てみたい気もしたが、アストレア達は深夜から一睡もせずにこの神域に転移してきたのでそろそろ睡魔が襲ってきていたのであった。

 大賢者の本が伯父のシリウスの手元にある以上すぐには元の世界に戻れそうもないので、とりあえず寝てしまって明日の事は目が覚めてから考える事にしたのであった。


『おやすみタキル』

『あぁ、おやすみレア』


 レアは久しぶりに服を着たまま眠る事になったのであるが、シーツや布団が無ければ寒いだけなので今はこのままが良いと判断しそのままシズルの硬いベッドの上で横になるのであった。


『…』

『…』

『…緊張して寝れないわね』

『実はオレもだ、眠たいのは確かなんだけどこんなところで普通に寝れるような図太い神経してたら良かったんだがな…』

『あら意外ね』

『嘘言え、オレの心が純粋なの知ってるくせに!』

『ふふ、どうかしらね?』


 その数分後、普通に睡魔に勝てなかったのかあるいは神経が図太かったのかは分からないが、タキルとアストレアはそのままぐっすりと眠りにつくのであった。




● ● ● ● ●




「向こうの世界では朝なのじゃー! 起きるが良い客じあ”痛ぁ”ぁ”あ”あ”!?」


 扉の向こうから女の子のような声が聞こえ、バンッと勢い良く扉が打撃音と共に開くと同時にまばゆく全身が光っている小さな女の子が見えたのであるが、扉を開ける力が強過ぎた為か稼動限界を超えて勢い良く跳ね返ってきた扉が入ってきた女の子の顔面に直撃した。


「おーまいがぁーっ!?」

「あの、大丈夫ですか?」

『なんて出落ちだ…』


 朝、といっても神域では藍色が渦巻いているだけで時間感覚が分からないのであるが、実はもう既に起きていたタキルとアストレアは、いきなりやって来た見知らぬ女の子に戸惑いを隠せないのであった。


「なんて事をするのじゃお前達!? キュートな顔面が痛いのじゃー!?」

「私達は何もしてませんけど…」

『扉を開ける力が強過ぎただけなんよな…』


 勝手に濡れ衣を着せられ寝転んだままジタバタする全身が光輝く女の子にタキル達はこの子が光の女神ヒカルなのではと思ったのであった。


「そうなのじゃ! 我こそが光の女神ヒカルなのじゃー! アストレアとタキルといったな…今ヒカルを崇めたら徳が上がること間違い無しなのじゃー!」

『「…』」

「んなっ!? また変なのがやって来たとか同じ事を揃って思うでないぞ! シズルに言われてお前達の面倒を少し見る事になったのだから感謝するのじゃー!」


 また変なのがやって来たと思っていたらすでに心を読まれていたようで指摘されてしまったが、水の女神シズルが寄越した女神をぞんざいに扱う事は出来ないと気を引き締めるのであった。

 光の女神ヒカルは他のシズルやモエルと違って人間に近い身体や色をしているのだが、全身が強烈に光っているのでこのままでは直視出来ないとタキルが声をかけた。


『あの…すごい眩しいのですがどうにかなりませんかね?』

「なんじゃ目が(くら)むのであるか? 仕方無いのぉ…これでどうじゃ?」

『あぁぁぁああっ! やっぱり光ってた方が良いと思いますっ!』


 熱のシャットダウンが出来ない火の女神と違って、光の女神ヒカルは自身の明るさが調整出来るのか光をかなり弱くしてくれたのであったが、まさか全裸だったとは思いもよらずそれを見てびっくりしたタキルは元に戻してくれと光の女神ヒカルにお願いするのであった。


「これくらいでええかの?」

「はい、それで良いと思います」

『…びっくりしたぜ』

「なんじゃお主は? 鳥のくせに女体の裸を見て興奮するとは変な奴じゃのう?」

『オレは元人間だからな!』

「知っとるわいそんなもん! あぁそうじゃった、お主らに見せたいモノがあってのぉ…コレを監視室から持ってきてやったのじゃ!」


 全裸のヒカルがどこから取り出したかは分からないが、ヒカルが差し出した手には薄い板のようなパネルがあり、そこにはリフィンが映っていて青白い鱗が生えた馬と一緒にせっせと水をたくさんの人に配っている姿が映し出されているのであった。

感想、評価お願いします


昨日初めて1日のPV1000超えてました。

読んで下さる方には本当に感謝です、いつの間にか3万PV超えてるし!


神様が「おーまいがぁーっ!」(oh my god)ってどうなんでしょうね・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。