姉と接触
お姉ちゃん登場!
前話を少し訂正しています
叔父(親の弟) → 伯父(親の兄)
私の名前はアストレア・グラシエル
子供の頃に妹のリフィンと水魔法で遊んでいるところを役人に見つかってしまい連行されてしまってからは、ずっと実家の屋敷に閉じ込められているままだ。 幸いな事にリフの方はバレずに済んだので私は「絶対に人前で水魔法を使っちゃ駄目」と連行される前にこっそりとリフに言い聞かした。
当時の私は水魔法使いが色んな分野にわたり酷使されているのを知っていた。 炊事、洗濯、製造、農業などたくさんの水を必要としているのに使う水はどれも水魔法で生成された水ばかりで、自然界にある大量の水、海、川、雨水は不純物が多すぎる為か誰も使おうとしなかったのである。 川の水は農地と繋がってるらしいけど見たことはないわ。
ある日、私と同じでリフが水魔法使いだと知った時は嬉しかったけど、半分は不安で仕方が無かった。 小さな子供ですら水魔法が使えるなら国の為に働かされるのでそれを危惧しての事だ。
しかし無邪気に水魔法で水を出して遊ぶリフを見て、私は姉として妹を楽しませる為に水魔法を使ったのだが運が悪かったのであろう、先程説明した通りになってしまった。
「レア様、あまり無理されてはいけませんよ」
「いいえ、淑女たるもの身体作りは怠るべきではないわ」
「しかし…」
私は今、自分の部屋で筋トレをしている。 いつか妹を守る時の為に姉が弱くてどうする、いつでも守れるように今出来る事をするしかないのだ。
「リフィン様が失踪してから筋トレや走り込みがハードになっているじゃないですか!」
「これも淑女の嗜みよ、結婚する時におでぶさんの状態でドレスを着るなんて相手に失礼だわ」
「しかしレア様は…屋敷から出られないと旦那様に」
「それでもするのよ」
「…」
伯父のシリウス・グラシエルは私を死ぬまでこの屋敷に閉じ込めさせておくつもりなのだろう。 水魔法使いの人口が減る一方で、水魔法使いを持つ者は生きながらえる事が出来る為だ。
所有しておくだけで収入が得れて、水を出すだけなら知識なんて不要で文字の読み書きすら必要ない、水魔法使いとは所持される物であるからだ。
ここに連れてこられる前、私は少し勉学をしていたからまだ一般常識や文字の読み書きは理解出来るものの、勉学はおろか言葉もあやふやなリフが子供の時に水魔法使いだとバレて捕まっていたと思うとゾッとするものがある。
しばらくして使用人の女性が部屋から出て行くと、冒険者になる為アルモニカに行ったリフの後ろ姿を私は思い出した。
ーー待っててお姉ちゃん、絶対見つけてくるーー
リフは失踪した事になっているが、アルモニカに行って冒険者になるように行かせたのは私自身なので私だけが知っている事だ。
この屋敷に幽閉され、水魔法なんて無ければ良かったのにと思った時から水魔法を使う度に魔力量や水の質が落ちてきている事を感じた私は、同じ水魔法使いであるリフにこっそり原因を調査するようにお願いした。
リフは私の言う事を聞いてくれたようで、水魔法使いであることを隠しながらヌツロスムント魔法学校に入学、そして1人でその原因を調べてくれたのであった。
しかしそう上手く原因なんてものは掴めるものでもないが、それでも諦めなかったリフは魔法学校を卒業後、限られたエリートにしかなれないという魔法科学研究員になった。
魔法が使えないリフが魔法科学研究員になったという噂は瞬く間に広まり、それまでリフが発明してきた新たなる魔法術式や魔道具の数々が世間で話題になったのはまだ記憶に新しい。
そうやって順調に研究をしてくれているのだと思った私だったのだが、ある日リフが深刻そうな顔をしてやってきたのであった。
次の魔道具の開発は、無能力者の魔法適正を調べる装置の開発だとリフは小さな声で私に教えてくれたのだ。
人間のほとんどは魔法が使えないが何色にも染まっていない透明な魔石は存在しているのだ。
水魔法使いが不足しているこの世界で水魔法使い予備軍を発見出来たらどれほど活気的かという議論が進められており、完成されればリフが水魔法使いである事は明らかにされてしまうため私に相談してきたのであった。
そこで私が出した答えは昔読んだ本に書いてあった情報だが、南にあるモニカ共和国に行ってアルモニカという都市で冒険者になれば、水魔法使いでも身分が保証され捕まる事は無いという事をリフに説明した。
幸いな事に屋敷では本を読む事が許されているのでそんな事しか助言出来なかったがリフはそれを快く了解してくれたのだ。
「リフ、元気にしてるかしら?」
筋トレを中断して部屋の窓から外を覗いた。 いつまでも続く平和な青い空が広がる…ここから脱出して今すぐにでもリフの所に飛んで行きたいけれど、窓の下を見るとかなり下の方に地面が見える、ここは屋敷の7階なので飛び降りる事は流石に出来ない。
何年何十年もこの窓から外を見つめる事しか出来ないのかと半ば諦めているが、1つの希望をリフに託したのでそれまで自分に出来る事をするだけなのだ。
コンコン、ガチャ
また筋トレを始めようと床に座ったところでドアが鳴り、私の返事を待たずしてドアが開かれた。
伯父であるシリウスが、私をここに閉じ込めている張本人が遠慮もなくずかずかと入ってきたのである。
「また性懲りも無く鍛えているのか?」
「…淑女の嗜みですので」
「お前は一生この屋敷から出さん、そこに居るだけでいいのだ、それで役に立っている…もちろん嫁にも行かせない」
「…それは残念ですわね」
「妹が失踪して気を紛らわそうとしているのかは知らんが…喜べ、お前宛に届け物が来たぞ」
そういってシリウスは布が被せられた鳥籠と、既に封が切られた手紙を渡してくるのであった。
私はそれを受け取って手紙の内容に少し驚きながら黙読していくと、いきなり手紙を奪われて粉々に破られてしまうのであった。
「なにをっ!」
「内容は読んだな、これから窓の外が見れないように窓を潰して壁にしてやる」
「…」
シリウスは土魔法で窓を土で埋めて外が見れないように固めてしまった。 面白いものが見れたと言わんばかりに肩が震えるシリウスは笑いが収まらなくなったのかフハハハハと大笑いをして私の方に向き返る。
「なにボケっとしておる、お前を気にかける害虫から守る為に魔法を使ってやったのだぞ? 感謝の一言も言えんのか?」
「…ありがとうございます、伯父様」
「フハハハハ! せいぜいその青い鳥を見て感傷に浸っておるのだな! 幸せになるように細々と祈っているが良い! フハハハハハハハ!!」
失望したような私の姿を見て、シリウスは高らかに笑いながら部屋を出て行った。
歓喜に満ちあふれても顔に出さなかった私の演義であるとは知らずに…
● ● ● ● ●
その日の夜、屋敷に住むほとんどの人が寝静まった頃、私は大人しく鳥籠の中で待機していた青い小鳥を外に出してあげるのであった。
「ちょっと外に出てもらえるかしら?」
「ピィ!」
私の言う事が理解出来るのか素直にピョコピョコと鳥籠から出た小鳥は逃げずにその場で待機していた。
そんな小鳥を気にしながらも私は鳥籠の中を探って行くと鳥籠の底が少しグラついているのが分かった。 探らないと分からないくらいに鳥籠が細工されていて、ようやく底が外れたと思ったら中から一冊の本と紙切れのような手紙が出てきたのであった。
「…やっぱり」
「…」
何の文字が書かれているか分からない本のほうは置いておくとして、手紙から開いて行くと実の妹であるリフィンからの手紙だったのであった。
▲ ▲ ▲ ▲ ▲
お姉ちゃん、元気にしてますか? リフィンです
タキルが生きててお姉ちゃんがこれを見てくれていたら成功です。
ちょっとタキルを優しく踏んづけてみて!
▲ ▲ ▲ ▲ ▲
とだけ書かれていた、小さな紙切れなので長い言葉は書けなかっただろうけど、もう少しまともな手紙にしてくれたら良かったのにと思うのであった。
「あなた、タキルって言うのね」
「ピィ!」
「書かれている通りに軽く踏んづけるけど良いかしら?」
「…ピィ!」
やはり私の言葉が理解出来るのかタキルという小鳥はその場でひれ伏したのであった。
手紙の内容が意味不明だけどとりあえずタキルを足で踏む事にした。 軽く足を当てても逃げようともしていないので私は不思議と未知なる行為に興奮を覚える。
グニャァッ!
『あ”痛”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ”!!!!』
「っ!?」
小鳥を踏むと頭の中に声が流れてきた。 痛がっている声なのでタキルという小鳥が喋ったのだと私はすぐに理解する。
『いててて…いつまで踏み続けんだぁぁ!? まじで死ぬぞ!?』
『あら? もしかしてこの小鳥が喋っているのかしら?』
『そうだよ! もう成功して踏む必要ないから足どけてくれないか!?』
『…嫌よ、もうちょっと踏ませて』
『あんた鬼かぁぁああ!?』
こうして私アストレアとリフィンが届けてくれたタキルが出会ったのであった。
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