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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
4章 蒼きツバサ
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届いた郵便物

4章突入です。

「見た事ねぇ鳥だな、届け先は…げぇっ! あのグラシエル家かよ、あそこの当主様はおっかねぇから苦手なんだがあそこにアストレアって人、居たっけか?」


 時は少し遡ってリフィン達がエルトト村に向かっている頃、ヌツロスムント王国の郵便屋の荷車にタキルは居た。 タキルの考案が採用されて、リフィンに姉を見ていて欲しいと頼まれ鳥籠の中に入れられると郵便屋に預けられたのだ。

 もう既にグラシエル家に近いらしくタキルは上手くリフィンの姉であるアストレアと接触出来るかどうか不安になる、接触出来たとしても意思疎通出来るかどうか不安は募るばかりだ。


『確かリフが言うには、屋敷で幽閉されている状態とか言ってたな…』


 リフィンの念話によるイメージで姉アストレアの顔を見せてもらったので、恐らく接触すれば分かるであろうと思い、ついでに教えられた姉の性格も思い出すのであった。



「お姉ちゃんはすごく優しくて私を笑顔にしてくれるの、いつも家に居るから運動不足なんじゃないのかなって思うんだけど何故か私より力が強いのよね、ずっと窓際で空を見つめてる儚い感じの人なのに」



 とリフィンが言うには優しくて儚い感じの人らしい。

 そうして考えている内に、郵便屋がグラシエル家に到着したようで郵便屋のお兄さんが独り言を言ってくれた。


「やっぱりいつきてもグラシエル家はでけぇよな…流石この国の重鎮が住まう所って感じがするぜ」


『はっ? アレ家っていうより宮殿じゃねーか!?』


 タキルが想像してた以上にグラシエル家は非常に敷地面積が広く、建物も建築美術の最先端と高級品質素材の塊が高次元で融合したかのような雰囲気を醸し出していた。 大きな部分から細かいところまで意匠を凝らした外壁や屋根、広大な庭には芝生が敷き詰められていてかなりのお金持ちである事は伺えたのである。

 そうしてグラシエル家に到着すると使用人と思われる女性にタキルは引き渡され、鳥籠を持った女性は屋敷に入り長い事廊下を歩くと大きな扉の前に立ったのであった。


「シリウス様、アストレア様宛に怪しい物が届けられたのですが、よろしいでしょうか?」


 オレのどこが怪しいんやねん! と内心ツッコミを入れるがシリウスという名前には聞き覚えがあった。

 リフィンの伯父であるグラシエル家の現当主、ヌツロスムント王国の宰相である男の名前だ。

 すると扉の奥の方から「入れ」と怖そうな声が聞こえ、女性は扉を開いて中に入室した。


「…レアの事を知っている人間は限りなく少ない筈だ、差出人は誰だ?」

「差出人はケハン・トウモイという冒険者で、モニカ共和国のアルモニカから届けられています」

「聞いた事ない名だな…とりあえず手紙と郵便物を寄越せ」


 使用人はシリウスに手紙を渡すと腕を横に振られ、下がれの合図を受けたのでそのまま退出した。 手紙を受け取ったシリウスは乱雑に手紙の封を切り中身を読む。



▲ ▲ ▲ ▲ ▲


 拝啓、アストレア・グラシエル様

 私はケハン・トウモイと申すもの、もう十数年前の話であるが幼い君を見かける機会があって、君を一目見た時、私はあなたに恋をした。

 その時見た妹君と遊んでいる君の笑顔が忘れられず、十数年経った今も私は君に恋をしているのだ。


 私は今モニカ共和国で冒険者をしている、アルモニカ支部でひっそり気ままな生活を続けているのさ。

 つい先日依頼でヌツロスムントに行った時に、屋敷の窓からずっと空を見つめる君を見たんだ。 それまでずっとヌツロスムントの城下町などを歩いて君を探していたのだけど全然見つけられなくて…でもやっと見つけたんだ!

 ここ数年しばらく君の姿を確認出来なかったから間違えてるかも知れないけど、グラシエル家の屋敷の窓から儚げに空を見つめる君の目を見たら胸が苦しくなってね、どうにかして君の笑顔を取り戻してあげたいという僕のエゴだけど、君に一羽の鳥を贈るよ。


 その青い鳥なんだけど遠い国では幸運を呼ぶ鳥と知られていてね、絶対君にふさわしいと思って頑張って見つけてきたんだ。何が原因で屋敷から出ないのかは分からないけど君に幸運が訪れて笑顔になってくれれば私は嬉しいな。


 また今度機会があれば君に会いに行くよ、その時には笑顔になってくれてると私は嬉しいかな。


 じゃあまたね!


▲ ▲ ▲ ▲ ▲



「ふん、ガキの頃に見た君が忘れられないか…馬鹿馬鹿しい」


 シリウスはそう言って手紙を封に入れ、鳥籠を持って部屋を出たのであった。

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