グレンの想い
書いてて思う・・・恥ずかし過ぎる
あいつは俺をイライラさせる程度の存在だった。
リフは出世コース間違いなしの魔法科学研究員として働いていた筈だが、アルモニカで冒険者になってるなんて聞いた時はバカなんじゃないのかって思った。
魔法が使えない小さい背丈、非力な細い身体で、意外と逃げ足だけはすばしっこい奴だと認識していた。 そんなのが冒険者登録なんてしてると言われればナメてるのかと怒りが収まらなかった程だが、小鳥とタヌキをテイムしているようで最初は使役魔法について独自で研究しているのかと予想した。
火、水、土、風、光、闇魔法の6つの魔法は体内にある魔石の色によって決まり、魔石の密度や色の濃さで魔力量が違ってくる事は一般常識として知られている。
しかし使役魔法については魔石の有無に関係無くテイムした側とされた側にテイムの印と言われるアザのようなものが浮き出てくるだけだ。
新しい魔法術式の作成や魔道具の開発など研究熱心なリフの事だから使役魔法の研究をしていても何ら不思議とは思わず理解出来た。
しかしテイムするのがリフと同じくひ弱そうな動物ばかり、小鳥が魔物相手に何が出来る? 食用タヌキなんてタダの餌同然で囮にしか使えないと思い俺をイライラさせた。
だが、そうではなかった。
動物達と意思疎通が出来るのかタキルは敵を攪乱、ポコはリフの前衛として立派に戦っていた。
地下水路でリフが水魔法を使っているところを目撃し、やっと冒険者になった理由を聞けたと思ったら水魔法使い達を助けたいと言い出した。
世界規模で水魔法の効力が低下している事を嘆き、多くの水魔法使い達を助ける為にそこまで行動に移すリフを俺は理解出来なかったけどそれに関しては素直に賞賛した。
見知らぬ他人の為に学生時代から独学で勉強し、冒険者になってまずは強くならなければと思う人間なんてそう居ない。
犯罪や違法、欲望ばかりが蔓延る腐りきった世の中でこんな考え方をする人間はとても希少で、既に汚れまみれの俺と見比べてしまえばそんなリフが眩しく見えて俺をイライラさせたが、それを見続けていたい気持ちも生まれてきた。
水魔法使いとしては珍しく水を氷に出来るようなのでそれを活かせそうなバニーマンの依頼を受けたのだが、バニーマンを前にして情が移ったのか1匹殺しただけで引きこもってしまう程で、冒険者としての覚悟が足りなかったのも俺をイライラさせる要因だったが、せめて見守ってあげたいという感情が一瞬よぎってしまった。 流石にそれは気のせいだと頭の中から消し去るのに時間がかかった。
ある日水魔法使いの奴隷が売られていると噂を耳にしリフじゃないのかと慌てて捜索してみれば、ケロっとした表情をして無駄な殺生は控えるとか当たり前の事を言ってくるリフィンに、俺は怒りを覚えたのと同時に安堵したのを今でも覚えている。
所用がありアルモニカを離れていたが帰ってくるとリフが居て、魔物の詳細が不明な依頼を出しにきた爺さんを助けたいと言い出した。
お人好しにも程があるだろうと思ってリフを見た瞬間、俺は戸惑った。 今までならそんな依頼無視する筈なのに、何故かリフの手助けを自分から宣言した時なんて何を口走っているのだと、自分で自分の事が理解出来なかった。
エルトト村に行けば幻獣ケルピーと対峙し魔物がテイムされる所を、それも幻獣ケルピーがあっさりとテイムされる所を初めて見た時なんか、自分の事の様に嬉しかった。
口ではなんとか震える声を抑えていたのだが、俺の高鳴る心臓は燃えあがりそうなくらいまでに鼓動していた。
「俺は…まさか…」
そして先程、俺はリフに口づけをしてしまった。
見知らぬ人達の為に頑張る姿を、
自己犠牲してまで皆を助けようとする意志を、
多くの人々に元気を与え優しい言葉を紡いだその口を、
俺はリフが好きだという自分の欲望の為だけに彼女の唇を奪ってしまったのであった。
「こいつが…」
魔力を使い果たして疲労しているのを良い事に、俺はリフの意志にそぐわない行為をしてしまったのか…
所詮、俺も欲望に染まりきったクズなのではと自己嫌悪する。
「好きなのか…」
腕の中に収まるリフに興奮を覚えながらもなんとかして冷静になるように自制する。 自制したはいいが、腕の中で気を失ったリフをどうするべきだと俺は焦った。
● ● ● ● ●
グレンがプラムの部屋に現れた。
「あら? どうしたのかしら?」
「リ、リフがたお…魔力を使いすぎた様で気を失ってな…」
「えっ!?」
『なっなんだって!?』
『ん? どうしたのポコ?』
『リフちゃんが倒れたって! ちょっとウチ見てくる! ディクトはそのまま継続してて!』
『お願いポコ!』
ポコは特別にプラムと同行していて、念話は繋がらずとも人間の会話を理解出来る、グレンの怪しげな報告に気にもせずポコはリフィンの元へと駆けつけるのであった。
「…今は客間に寝かせてある、俺は男だから女であるお前に面倒を頼みたい」
「それは一大事じゃない!? わかった向かうわ!」
「俺はディクトを見てるから頼む!」
今はリフの事を考えるな…何か身体を動かしてないと俺もどうにかなりそうで動悸が収まらなかった。
あいつは俺にとって大切な存在だという事が、悔しいが否定出来なかった。
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