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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
3章 アルモニカの冒険者
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暗躍する者達②

1日考えて、このタイミングにこの話を入れました。


1時間前に55話を投稿してます、まだ見てない方はそちらからお願いします

『アンソニー、今忙しいかもしれないけど…少し時間あるかしら?』

「はい、お嬢様」


 明日の為に色々と書類整理やらスケジュール調整、現場監督をして準備を進めているアンソニーの耳にプラムの声が流れた。

 とっくに陽が暮れて辺りは暗いというのにガダイスキ邸の大きな庭は魔石を使った照明がたくさん灯されており、仕切りに使う木材やら進行方向を指示する案内板がアンソニーの指示のもと使用人達によって設置されていた。 アンソニーは他の者に代役を任せ、すぐさまプラムの居る部屋に駆けつけた。


「お待たせしましたプラムお嬢様」

「いいわ、急な仕事を押し付けてるのは私だし…1つ聞きたい事があっただけよ、さっき来てたグレンって男の情報なんだけど、その後何か分かったかしら?」


「申し訳ありません…リフィン様と同じヌツロス魔法学校の実戦学部に居たという記録以前は一切不明で、出身も親族も不明なまま調査が止まっております。」

「そう…」


 そう言って下を向き何やら考え込むプラムに、お嬢様があいつに気があるのでは!? と勘違いしたアンソニーが慌てて口を出した。


「あ、あの者はいけませぬぞ! お嬢様に無礼を働いた不届きな(やから)など___っ!?」

「違うから安心してアンソニー、彼とはどこかで会ったような…そうでもないような気がするだけよ」

「なんですと!? お嬢様が奴の毒牙にかかる前に(わたくし)めが息の根を!」

「だから違うって言ってるでしょ…そういえばアンソニー、彼の顔なんだけどどこかで見た記憶無いかしら?」

「…流石に分かりませぬ、今は殺意しか涌いて出て来ないようでして」

「あっそ、とりあえず今後も調査を続けておきなさい…邪魔して悪かったわ、準備よろしくね」

「はい、お嬢様…おやすみなさいませ」


 プラムは何故、グレンがすぐに退出したのか考える。

 グレンの顔を見た時に見覚えがあるような顔ではなかったのだが、彼がプラムの顔を見た時に何故か焦燥したような表情をしてすぐに退出した事を疑問に思っているのだ。


「ただの気のせいなら良いのだけど」


 プラムはグレンの事で何か1つ引っかかるような気がしてならないのであった。




● ● ● ● ●




「とっとと寄越せ!」


 ヌツロスムント王国、某所

 薄暗い殺風景な部屋に羽振りの良さそうな男と、報告にやってきた貧乏そうな身なりの男が居た。

まとめた報告書を羽振りの良さそうな男が奪い取るように手に取り、その内容を驚きながらもじっと黙読する。


「ふはははは! どこへ失踪してたかと思えばアルモニカに行って冒険者なんてやっているとはな、それが儂の計画を潰すなんて事をしてくれるとは…おのれぇっ! やはりさっさと婚約させて縛りつかせるべきであったのだ!」


 羽振りの良さそうな男は怒りが込み上げてきたのか、持っていた報告書を強く握ったあと地面に叩き付ける。


「末っ子の姪とはいえ、あのような博識な女はつくづく好きになれん…しかしアレは無能な姉とは違い別の利用価値がある、使いを出して連れ戻したら儂が直々に教育をせねばなるまいな、ふはは…ふははははははは!!」


 羽振りの良さそうな男は、報告にやってきた貧乏そうな男を下がらせると高らかに声を上げて歓喜した。

失踪した姪を連れ戻し、知識を出させ独占し幽閉させれば金になると想像した男は笑わずにはいられなかったのだ。


「…もう1人の男には死をもって償って貰おう、素性は知らんがそのうち分かるだろう…っとそういえば」


 姪と同行したという男は残念ながら死んでもらう、数年かけて準備していた計画がお陀仏になり危うく尻尾が掴まれるところだったのだ。 その仕返しとして死を与えるのだ、極限まで苦しませながら殺そうかと色々考えていると、


 突然男はクシャクシャになった報告書を開いて思い出すように独り言を話した。


「アルモニカ…なぜアルモニカなのだ? そういえば先日アレに届いた鳥もアルモニカからだったような…はっ!?」


 アレに届いた青い鳥、もしかしたらアレと密通しているのかも知れないと想像すると、まただんだんと怒りで全身がプルプルと震えだした。


「あの青い小鳥は殺しておくべきだな…そうしよう、どこで殺すか…アレの目の前で殺せば良い表情が見れそうだ…ふははははははははは!!!」


 羽振りの良さそうな男は深夜だというのに部屋で高らかに笑い続けるのであった。




● ● ● ● ●




 某所

 激しく燃える1本の松明が1人の少年を照らしていた。

 質素な部屋の割には武器や防具などが床に散乱しており、足の踏み場も無いくらいまで敷き詰められていた。


「ヒエン様、これで準備は整いました…あとは機を待つのみです」


 ヒエンと呼ばれた少年の後方から声が発生した。 女性のような高い声であったがその姿は暗くてほとんど見えない。


「そうだね、兄上が頑張って調達してくれたんだ…情報も持ち帰ってきてくれた事だしね」

「はい…優しい兄をお持ちになられているヒエン様は幸せ者だと私は常に思っております。」

「そうか、君は確かあの時に実の兄を…ごめん」

「いえ、お気になされないで下さい」


 女性の声が震えている。 悲しみからか怒りからか、やはり暗くて彼女の表情が見えない少年は落ちている武器の中から1本の剣を拾い上げて抜刀し、それを天高く掲げた。


「気にするよ…それはあの時の雪辱を果たしても収まらないだろ? だからそれを鎮めさせるのが僕の役割なんだ…だからそれまでは協力してほしい」


「有り難きお言葉…ヒエン様には永遠(とわ)に尽くします」

「ばっ!? 照れるから止めてくれないか…兄上じゃあるまいし」

「ふふ…その兄上様も、今少し気になっているのが居るそうですよ?」

「それは春が来たね」

「もっとも、利用価値がある、今後あいつの力が必要、などとおっしゃっておりましたのでまだ分かりませんが」

「へぇ…名前くらいは聞いたの?」

「はい、ヒエン様も聞き覚えのある方でしたよ」

「本当? じゃあ教えて貰おうかな!」


 彼らは松明の火が消えて無くなるまでおしゃべりに夢中になるのであった。

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