互いの守るべきもの
進まないですね・・・いつになったら3章終わるのか
「ありがとうアンソニー、あちらに控えてて頂戴」
「かしこまりました」
執事のアンソニーがグラスと水差しを用意し、部屋の隅に控えた。
「…今回の干ばつの影響で倒れてしまった水魔法使い達の状態からお伝えしますわ」
プラムが深刻そうな顔をして本題に入る。 若干口調も変わっており本気度が伺える。 どうやら先程の毛皮の件は余興だったらしい。
干ばつを乗り切る為にどのような状況なのか整理していく事にした。
「アルモニカの人口約50万人の内、水魔法使いは5000人程度で1人の水魔法使いが100人分の水を供給している事になっているわ」
「それは大体把握済みです」
「そのうちの約1000人が倒れている状態で、残りの約4000人の水魔法使い達で補っている状況ですわ」
「単純計算で1人あたり125人、農作物にも被害が出てそうですね…」
「はい、城塞内を流れる川も干上がっていて、節水の呼びかけ等色々手は回したのですが如何せん手が回らなく、今は水魔法使い達に無理をお願いしてポーションを少しずつ飲み続けさせながらなんとかやりくりしている状態です」
「それはいつからやっているのですか? ポーションで魔力を回復してすぐに魔法を行使させるのは危険です」
「…1週間程前ですわ」
「継続して服用は危険ですから…もう限界ですね」
魔法を使う者の身体の中には魔石が存在していて、その魔石のエネルギーを使って魔法を繰り出しているのだ。
魔石のエネルギーが無くなれば食事や睡眠等で次第に回復していくのであるが、ポーションを使って急速に魔力を回復させたり一気に魔力を消費させたりすれば魔石に負担がかかり、最悪魔石が破損したり機能停止したりする恐れがあり、そうなるともう二度と魔法が使えなくなってしまうのだ。
「加えて、記録的な猛暑が続いていますので水魔法使いに留まらず例年より日射病で倒れる人が多くなっていますわ」
「なるほど…確かに、ここ最近異常に暑い訳です」
かなり事態が深刻だと察した、今すぐにでも彼らを休ませないと取り返しがつかない状態に陥る可能性が高い。
「それで3日程前、あなたがエルトト村で水魔法が行使可能な幻獣ケルピーを使役したと聞いてアンソニーをギルドに向かわせてた訳です、帰りが遅かったのは先にエルトト村を救ったとかで納得がいきましたわ」
「…耳が早いですね」
「情報は早く回ってくる事に越したことはありません…エルトト村を救って頂き、アルモニカを代表して感謝申し上げますわ」
「…成り行きとはいえ、冒険者の務めを果たしたまでですので」
「そう言って下さると助かります………話は戻しますが幻獣ケルピーは水魔法を使えるのですよね?」
「はい、水生成はエルトト村で使える事を確認しています、ただ魔力量がどれ程の物かは未知数です」
「…それは良かったです」
ディクトは水生成が使える、それだけでも大きな収穫だったのだろう、アルモニカの住民を守るために藁にも縋る想いで奔走していた事が、プラムの深刻そうな表情から軽く安堵した事ではっきりと読み取れた。
(干ばつが続く今この状況で水魔法をまともに行使出来るのは私とディクトだけ…アルモニカでお世話になっている人達に困った顔なんてさせたくない! ならばもう…今しかないよね!)
ここは融通の利かないヌツロスムント王国ではなくモニカ共和国、冒険者になってある程度は自由が保証されている、そして強さもちょっぴり手に入れた。 エルトト村だって救えたのだ。
リフィンは水魔法使いだという事を隠してきていたが、保身に走るのはここまでと決心した。
「プラム様はアルモニカが大好きなのですね、街の人々を守ろうとしている事がよく分かります」
「そう、見えますか?」
少し照れくさそうに視線を落とすプラムに、リフィンは語りながらアンソニーが用意していた透明のグラスを手に取り魔力を込める。
「はい、少しですが好感が持てました…私も全力で、水魔法使い達を守りたいです」
「えっ?」
「水の女神シズル様、彼女に命の水をお恵み下さい…水生成!」
「…うそっ」
リフィンの手にあった透明のグラスに水魔法で水が注がれる。 プラムはその光景に驚愕、グラスをリフィンから手渡されるとさらにグラスの状態にも驚きを隠せないようであった。
プラムが持つグラスには水滴が付着していた。 一般の水魔法使いが出す水の温度は常温に近く、リフィンの出す水は0℃に近いのだ。
水滴がつく理由は結露と同じで、冷たい水をコップの中などに注ぐと周囲の空気が冷やされ、暖かい空気が含む水分が水滴となって現れるのだ。 グラスのコップの熱伝導が高い事も理由としてあげられるが、そんな事よりキンキンに冷えた水がリフィンの魔力操作の高さを物語っていると理解したのであった。
「…あなた、水魔法使いだったのね」
「はい、ついでにこれもおまけです…氷の粒!」
ちょぽんっ!
さらにコップの中に氷を入れるリフィンに、プラムはこの水魔法使いはただ者ではないと心の中で断言する。 氷を出せるのは水魔法使いの中でもごく一部の者だけであり、王族や上級貴族に仕える水魔法使いに匹敵するのだ。
「是非飲んでみて下さい、冷たくて美味しいと思いますよ?」
「え、えぇ…頂くわ」
そうして水を口に含み、プラムは今まで味わった事の無い水の美味しさを堪能するのであった。
● ● ● ● ●
リフィンとプラムの議論は続いた。
「街を歩いて水を出していくのは効率が悪いですね…すぐに水を求める人でいっぱいになり渋滞が発生してしまいます」
「そうね、なら水が欲しい人から寄ってくるようにして広い場所を設けた方がいいと思うわ」
「人が寄ってくるにはどうしたら良いでしょうか…ビラでも作りますか?」
「それじゃ間に合わないわね、冒険者を雇い街中の人達に宣伝してもらいましょう」
「それがいいですね…干ばつで行動できない冒険者も居ますから最適かと」
「早速明日、初日だけど場所の候補はこの屋敷の庭が良いかも知れないわ、入り口と出口で分けられるし仕切りをして列を作って並んで貰うとしましょう」
「それは…かなり助かります」
「2日目までには各エリアの広場に巨大な樽をいくつか設置出来るよう手配しておくわ」
エルトト村で列を作らなかったが為にリフィンは子供達にズタボロにされた記憶が新しく、それを未然に防ぐプラムの頭の良さに感謝するのであった。
「しかしそれに関してはマルメロ様の許可が必要では?」
「そうね、じゃあ呼んで来させるわ…アンソニー!」
「はい、こちらに…」
実の父をそれも大法官であるお偉いさんを呼んで来させるとは、と思うリフィン。
プラムはアンソニーに父マルメロを呼んで来させるように命令すると、またすぐにリフィンと話し合いをつづけるのであった。
「そういえば、あなたの水魔法はどれくらい出せるのかしら?」
「私に関して言えば…そうですね、強気な発言をしますがおそらく水魔法使い百人分の水は賄えると思います」
「ふふっ、期待していますわ」
「あと、水の女神様や水に関わるものに感謝し、信仰すれば魔力量や精度も上がると思います。 虹百合のルコさんで検証しただけですので確実とは言えませんが…」
「それは初耳ですわね…信仰者は水魔法使い以外でも問題ないのよね?」
「はい、多くの者に信仰されると水の女神様もお喜びになり力を分け与えて下さるでしょう」
「…敬虔な信者か、まるで女神様に会ってきたかのような物言いですわね」
「プラム様はそうではないのですか?」
「た、確かにそうね」
女神様に会ってきた? 正解です! しかしリフィンは表情を崩す事無くプラム自身はどうなのかと訊ねた。 プラムも風魔法使いなので、なんとなくだが理解してくれたのである。
「なるほど、ではその事も冒険者達に宣伝して貰いましょう」
「そうですね…節水の呼びかけも継続してまわってもらいましょう、水を無駄使いしているところがあれば指摘するのもアリだと思います、当面の間お風呂を我慢して頂くとか、水をたくさん使う料理を控えて貰うとか」
「えぇ、国の一大事ですもの…出来る限りの事はやりますわ」
「…今後の水魔法使い達の為でもありますからね」
「…」
プラムはリフィンがここまで水魔法使いに対して行動しようとしているのか気になり出していた。
知りもしない他の水魔法使い達の事を心配に想うリフィンの熱心さは何故なのかと、プラムは疑問を問いかける。
「1つ質問するのだけど…あなたは何故、知りもしない水魔法使い達を助けようと熱心なのですか?」
リフィンはキョトンとした表情でいきなり飛んで来た質問に驚いたが、その答えをプリムに向かって笑顔で答えた。
「それはですね、私が冒険者になった理由でもありますけど…水魔法使いの人達を救うのが私の使命だからです!」
●プラム・ガダイスキ
アルモニカを統治するガダイスキ家のお嬢様、
ブロンドの長髪でかなり美形の15歳
風魔法を多く習得し常に屋敷全体の空調を管理出来るほど魔力量は高め




