アルモニカのお嬢様
モニカ共和国は貴族的共和制です・・・なるほど分からん
冒険者ギルドから執事のアンソニーに連れられてリフィン達はアルモニカの中心にある大きな屋敷の目の前にいた。 広大な敷地の中にポツンと屋敷が建っており、広過ぎる庭は千人くらい入れそうなまでに広かった。
どうやら納品したバニーマンの毛皮の不備や不良ではなく、単にどういった冒険者が依頼を受けてくれたのかという内容で直接会ってお礼がしたいとの事だった。
ギルドを出ると裏に馬車が用意されており、お乗り下さいませと執事のアンソニーに言われたのだがポコとディクトを放置しておくわけにもいかないので断って徒歩で行く事にした。 グレンもお金にならない案件なら行かないと言っていたのだが、少し気になったのか一緒に着いてきた。
そうして徒歩で先導するアンソニーについて行き、遠目で見た事はあるが近くに寄った事が無かった大きな屋敷の前に到着したのであった。
「リフィン様、申し訳ありませんが使役なされている動物達を一度こちらでお預かりさせて頂きますが、よろしいでしょうか?」
「はい」
『まぁウチらは入れないよね…』
『僕は最初から入れるとは思ってなかったけどね』
『じゅるじゅる…』
『ポコ達には悪いけどちょっとだけ待っててね、そんなにかからないと思うし』
『はーい』
ポコやディクトを連れてそのまま建物の中には入れないようなので、ついでに帽子からライも出してポコに渡し、どこからか現れた使用人らしき人達に預かって頂く事になった。 スライムのライやケルピーのディクトに驚く様な仕草を見せず預かってくれた使用人にリフィンは心の中で密かに感嘆する。
「こちらが白壁の城塞都市アルモニカを統治しておられますマルメロ・ガダイスキ様の屋敷でございます。 中でお嬢様が首を長くしてお待ちになっておられます。」
「遠くからでも大きく見えましたが…近くに来るとさらに大きく感じますね」
「屋敷は広くて迷ってしまいますので、私めから離れないようお願い申し上げます。」
そうして屋敷の中に案内され長い通路を歩いていく、これほど大きな屋敷だというのに掃除が行き届いており、通路を歩くだけでも空気が違う気がしたのだ。
「…ここの通路、風魔法で空調を管理されてますね」
「左様でございます…少し空気が違うだけでもお気づきになられるとは、流石は冒険者様といったところですかな」
「いえ、舞う埃が全然見えなかったものでしたのでそう思っただけです…維持費とかが凄そう」
空調を管理するという事はこの屋敷に風魔法使いの人が居るという事だ。 しかしこの大きな屋敷全部の空調を管理することは相当な人件費がかかっているとリフィンは推測したのだが、アンソニーの言葉によってそれは間違いだと知らされる。
「それに関しては問題はありません、建物内の空調管理は全てお嬢様がやっておられますので」
「それはすごい魔力量ですね…」
「はい…お嬢様は幼き頃から聡明なお方で、誰にでも優しく明るい性格から我ら使用人達はお嬢様に忠誠を誓う程です」
虹百合のユリネや黒剣の集いのロルタプなどといった凄腕の風魔法使いは見て来たが、またとんでもない風魔法使いが居たものだとリフィンは驚く、それに対し相変わらずグレンは無表情でさっさと案内しろと言わんばかりの威圧を放っていたがリフィンは気が付かなかった。
「こちらでございます……お嬢様、冒険者様方をお連れ致しました。」
「どうぞ」
アンソニーが扉をコンコンとノックをしたあと、中に居る人に声をかけると綺麗な声色が響いて来た。 声だけでもまだ幼そうな雰囲気を匂わせる。
扉が開かれるとリフィン達が目にしたのは、リフィンよりかは少し幼そうな15才くらいの可愛い少女が椅子にちょこんと座り、机に片肘をついた状態でこちらを眺めていたのであった。 彼女は艶がはっきりと映っているブロンドの長髪を片手で梳いてリフィン達に中に入るように促す。
「ようこそおいで下さいました冒険者様、そちらに掛けてくださるかしら?」
「はい」
「…」
リフィン達は言われた通り高そうなソファーのところまで行ってゆっくりと座ると、少女の方から自己紹介をしてきた。
「私はプラム・ガダイスキと申します。 数日前にバニーマンの毛皮の納品の依頼を出した者で、今回あなた方をお呼びしたのは直接感謝をお伝えしたかったのです。」
「そうか…礼は報酬として受け取っている、もう用は済んだはずだ。」
「ちょっとグレン!?」
「ここにもう用は無い、屋敷の外でポコ達と待ってるから終わったら言え」
「えぇ…」
そういってグレンは早々に部屋から退出した。 何故出て行ったのか分からないが1人残されたリフィンは仲間の失礼な行動を詫びた。 プラムは落ち着いた表情で去っていくグレンをその場で見送るとリフィンに向かって笑顔を振りまいてくれた。
「も、申し訳ありませんプラム様!」
「いえ…彼が退出した原因がなんとなく分かりましたので気にしなくてもよろしいですわよ?」
「そう、ですか…自己紹介がまだでしたね、私はリフィンという最近この町にやってきた冒険者です」
「えぇ知っていますわよ…リフィン・グラシエルさん?」
「…はい」
まだ本名を名乗っていないのに彼女はリフィンのフルネームを言ってみせた。 なぜ知っているのかと思ったが、名前くらいはフルネームで冒険者登録しているし調べればいくらでも調べられるので当然だと思うリフィン、しかしプラムはそれ以上の事をリフィンに説明するのであった。
「隣国、ヌツロスムント王国の重鎮、グラシエル一族の人ですわよね?」
「っ!?」
「そしてあなたは数年前、無能力者でありながらもヌツロス魔法学校で新しい魔法術式の構築、魔道具の製造または改良に学生の身でありながら貢献したという事も知っていますわ」
「…調べられたのですか」
「えぇ、最初に名前だけ聞いてピンときたので調べさせて頂きました…風魔法を使った拘束魔法を習得する際に魔法術式を生み出したと言われる人物の名前を覚えておりましたので」
風魔法を使った拘束魔法とは、リフィンが学生時代に術式を組んだものの事である。 1つの対象を風魔法で動けなくする魔法であるが、今はそんな事よりどこまで調べられているのかリフィンは知りたかった。 他人に知られたくない事まで調べられているとなるとそれ相応の態度をとるしかない。 おそらくグレンの事まで調べ尽くされているであろう事も推測されたがリフィン自身、あまりグレンの事を知りはしなかったのでどうでもいいとする。
「…他には?」
「魔法学校を卒業後、魔法科学研究員になり魔道具の改良をしていくも、1年後には姿を暗ませて失踪…何故か今は冒険者をしていて先日から特に噂になっているケルピーを使役したという話で持ち切り、面白い経歴をお持ちのようですわね」
「…私について知っているのはそれくらいですか?」
「そうね、あとあなたの故郷では今、捜索願が出されているくらいって事くらいかしら?」
「そうでしたか、捜索願を出されているとは知りませんでしたが…まぁ大体そんな感じで合ってます」
「良かったわ…実はあなたに個人的なお願いがあるのだけど聞いてもらえるかしら?」
お礼を言うだけでは無かったのかと思ったリフィンだがこの国のお偉いさんの娘である、あまり失礼な態度をとる訳にもいかずそのまま首を縦に振りそのお願いとやらの内容を聞くのであった。
「この間の依頼で納品したバニーマンの毛皮を今加工してる最中なのだけど、パーティや社交界でつい口が出ちゃってその事を言ってしまったのよね…あっという間にいろんな貴族から生産してくれってお願いされちゃってね、それであなたにまたバニーマンの毛皮の依頼を受けて欲しいって事なの、どうかしら?」
それはリフィンにとって悪い話ではなかった。 バニーマンの毛皮の納品を指名で受けられるようになり、尚かつ高額の報酬が用意され、リフィンの生み出す氷を使って挑めば簡単に成功するであろう。 しかしリフィンはそれをきっぱりと断るのであった。
「…たしかに美味しい話ではあります、しかし申し訳ありませんがそのお願いはお聞き出来ません」
「あら…それはどういう事かしら?」
「彼らにも生きる権利があるからです、バニーマンは基本的に人前には出てきませんしたまに女性を見ると襲ってくる程度です。 我々人間が私利私欲のため彼らの生活を脅かす訳にはいかないのです。」
「…あなた冒険者でしょ? 自分で何言ってるのか理解していまして?」
「はい、彼らからしてみれば我々冒険者はただの殺人鬼でしょう、いきなり縄張りに侵入してきて無差別に殺していくのですから…私は冒険者ですが、無意味に命を奪うような事はしないとバニーマンの毛皮を剥いている時に誓ったのです。」
「あらそう…じゃあ先程の彼に指名でお願いしようかしら?」
「どうぞご自由に、彼だけではその依頼は受けない事でしょう」
あまり煽る事はしたくないリフィンだったが、少し感情が出てしまいプラムが笑顔のまま威圧をかけてきた。 とてもじゃないが直視出来ないくらいにプラムの綺麗な顔がひくついているのが見てとれた。
「この私の依頼が受けれないとでも言うの?」
「はい」
「冒険者は魔物を狩って国民の平和を守るのが仕事じゃないの?」
「お言葉ですが国とギルドは別の組織です。 国民の平和を守るのはこの国の兵士なのでは?」
「間接的にって事よ! あなたなんかムカツクわね…」
「冒険者は魔物を狩るだけが仕事ではありません、あまりにも魔物が繁殖し我々人間の生活を脅かすようになればある程度まで間引いていくだけです…下手に全滅、絶滅させてしまうと生態系が壊れて我々の予測出来ない事が発生すると、かの偉人達もおっしゃられております」
「…どうしても受けないって事でいいかしら?」
「はい、バニーマンが大量に増えてしまい間引く必要があるのでしたら考えますが」
「…そう、分かったわ、他の貴族から受けた注文はキャンセルしておくわ」
やっとリフィンの主張を理解してくれたのか、ため息をつき肩の力を抜くプラムにリフィンもまたこっそりと心臓を落ち着かせるのだった。
「そういえばあなたは無能力者でしょ? あなた可愛いから私の拘束魔法を使って無理矢理言う事を聞かせるのも良かったんだけどね…」
「それを生み出したのは私です、抜け穴くらい把握していますとも…その後にそれ相応の対処をさせて頂きますが」
「やっぱりなんかムカツクわね…」
風魔法による拘束魔法だが、実のところリフィンに抜け穴なんて無かったのでハッタリが通じて良かったと安心した。
プラムは一度深い深呼吸をして気持ちの整理を整えてからもう1つのお願いをリフィンに告げるのであった。
「あともう一件あるんだけど、これは絶対に受けて貰うわよ?」
「まだあるのですか!?」
「今アルモニカは干ばつによって大変厳しい状態なの、あなたのケルピーには力を貸してもらうことになるけど良いわよね?」
「はい、それでしたらお引き受け致します。 実はその件に関しては私からお願いしようかと思っておりましたので」
「あらそう…なら報酬は無しでいいかしら?」
「少なくて良いので色はつけて欲しいかなと…」
「…決まりね!」
「はい、その事でお願いしたい事がいくつか…」
こうして運良くリフィンは国のお偉いさんからの協力のもと、アルモニカの干ばつをどうやって解決するか知恵を出し合って話しを始めるのであった。
感想、評価お願いします。
プラムお嬢様は配下にはかなり優しいのですけどね・・・
いつも300〜400PVなのに昨日見たとき900超えてたからびっくらこいて椅子から落ちました
皆様ありがとうございます!




