村人達に気付いて貰おう
2万PVありがとうございます。
こんな知名度の無い作品でも読んでくれる皆様に感謝です。
子供達にボロボロにされて遊ばれていたリフィン達であったが様子を見に来たグレンに救助してもらい,
今は一緒に村中を一軒一軒回ってダウンした水魔法使い達の仕事を肩代わりしているところであった。
数件回った中で異質な家をしたお宅の主に水撒きを終えたと報告する。
「一通り均等に水は撒きましたが野菜の事に関しては専門外ですので、そこはご容赦下さい」
「そうかい、じゃあ明日も頼むよ」
「………」
おばさんの広大な畑に水やりを終えたと伝えるとぞんざいな態度にムッとする。 リフィンもビックリするほど魔力はまだ全然余裕といったところだが、こんな態度をされ毎日この水やりに水魔法使い達が酷使されていると思うと苛立ちが募るがなんとか表情に出さずに我慢する。
「リフ、ここはもう二度と来なくていい…」
「………」
「あんたに用はないわ、そこの小娘に言ってるのよ…小娘、お前他の水使いより使えるからこの村の水使いになりな」
「………」
お断りである。 明らかに自分や他の水魔法使い達を下に見た態度にぶん殴ってあげたくなるが、村人と争うつもりは一切なく、冒険者ギルドの信用失墜にも繋がるので下手な言葉は紡げない。 こんな人も居るんだぁと思いつつもどう対処しようか焦っているとグレンが助け舟を出してくれた___のだが
「こいつは冒険者だ、この村の干ばつを乗り切る為に善意で回っている事を有り難いと思え」
「何よあんたさっきから、出しゃばらないでくれる?」
「水を提供して貰っておいてよくそんな態度が取れるものだな、この村の水魔法使い達が可哀そうでならん」
「グレン待って! すみません…この人かなり口が悪くてですね、私を気遣って言ってくれたのだと思うので許してあげて下さい」
「そう…あんたら冒険者だし、こっちも無理を言ってすまないね」
リフィンはこの村の人達と喧嘩をしにきた訳ではないのだ。 先程も子供達を追い払ってくれて助けてもらった訳だけど、相変わらず口が悪いグレンがすぐ横やり入れて雰囲気が悪くなるのは勘弁して欲しい。
しかし今が絶好のチャンス、少しでも多くおばさんに水の大切さを知って貰いたい。
「私がここに長く留まれないのは申し訳ないのですが…今回の干ばつで水魔法使い達が倒れ、畑はおろか私生活でも水が得られないと考えると、水は貴重なものって少しはわかってくれたのではないでしょうか?」
「確かに困ってたわ…野菜が採れないんじゃ商売あがったりよ」
「っ!」
商売という言葉にピンとくる、そういえば一軒一軒回って来た中でこの人の畑は村で一番大きな面積を有していたのだ、それが駄目になると損失も大きいだろう。
「…実はですね、それを少し解決する方法がありまして、魔法が使えない人でも可能なの事なのですが一度やってみませんか?」
「ほぅ…誰でも解決する方法があるなら試してみたいものだね!」
「はい、凄く簡単なんですけど、地道にやっていくことで良くなると思いますよ!」
「簡単だと? …言うじゃないか! こんな有益な事を私にだけ言うなんて時間の無駄さね! あたしは村でも発言力はある方だからね! 村の皆を集めるよう声をかけてこよう」
おばさんはニヤリと笑みを浮かべると立ち去っていく
「みんな! 水使いの冒険者からお話があるそうよ!!」
簡単に水不足が解消する。 有り得もしない事を言ってのけたのだ。 大勢の村人の前でリフィンに恥をかかせてやろうとしているのだろうという魂胆が読み取れた。
しかしあのおばさんが村で発言力が大きいのは読み通り、リフィンの大きな釣り針は予定通り大物を釣り上げてしまったのだ。
おばさんは有益な情報は村の人達で共有する為、凄い勢いで大声をあげながら走って行く、リフィンはこの後の事について覚悟を決めるだけだ。
「…大きな博打に出たな」
「うん、でもこれくらいこなせないとでしょ? あのおばさん土魔法使いみたいだし、高くなった鼻をへし折ってあげたい」
「そこまで想定通りか」
「村の中でもひと際大きな家なのに村長宅でもない、他に比べ内装等は豪勢で村一番のお金持ちでしょうね…そして広大な畑の所有者となれば…」
「正解だ、なら思う存分暴れてくるといい」
「…手伝ってくれないの?」
「何かあれば言え」
「ん、じゃあお願いするけど…」
● ● ● ● ●
数刻後
あのおばさんは村人達を広場に集めた。 ざっと150人くらいだろうか、村人達の前には大きめの台が置かれておりそこにリフィンは登壇していた。
「…」
目の前にはリフィンを見つめる大勢の眼差し、無邪気な子供達も最前列に居て不思議そうな顔をしている。 ザワザワと村人達から「魔法が使えない俺達でも、水不足が改善出来る方法があるらしいぜ?」などといった声がたくさん聞こえてくる。
学会で魔法を発表した時なんかに比べれば…なんてことない
過去に新魔法を編み出し多くの人に顔を憶えられた事だってあるのだ。 しかしそれでも緊張はするもの、リフィンは己を奮い立たせゆっくりと言葉を紡いだ。
「エルトト村の皆さん…お忙しい時に集まって下さりありがとうございます。 もう聞き及んではおるかと存じますが、水魔法が使えない人達でも水不足を解決出来るかもしれない方法があるのです。」
「おう! それ聞きたくて来たんだ!」
「あの美味い水を出してくれる冒険者様なら信用出来るわぁ!」
「そうよ! この村の水不足を心配して助けて下さってるもの!」
リフィンがした行いや、美味しい水が好評だったのか、村人達からは期待の声が飛んで来たのでつい嬉しくなるリフィン。 ここまできたら彼らの期待には応えねばなるまい
「とっても簡単な事ですけど、ずっと続ける必要があります…それは水に関するものに感謝をして欲しいって事なのです。」
「ん?」
「感謝?」
「…水が無いと困るけど、そこまでする事なのかい?」
やはり水に対して感謝の念が薄いのだろう、水があって当たり前、または出してもらって当たり前みたいな感覚をしている人が混じっていたのだろう、おそらくあのおばさんだが…構わずリフィンは続けるのであった。
「今回、この村の水魔法使いの人が皆倒れてしまいました。 今は私の連れの者がポーションを作成し回復されていますが、もしそのまま酷使し魔法が使えなくなったらどうするつもりですか? 彼らだって人間ですし体力の限界もあります、使い勝手の良い奴隷の様な事をさせてたら村から出て行ってしまうかもしれません!」
「そんな事言ったって水は毎日必要なんだから出してもらわないと困るさね!」
あのおばさんが野次を飛ばす。
「水魔法使いの人達が仕事をして疲れきっている時にそれでも労いの1つもなく水を出させるんですか? あなた方は仕事を終えてそれでも仕事を継続しろと命じられたら仕事をするのですか?」
「………」
「水は生命が生きていくには必要です。 同様に水魔法使いも休息が必要です、あって当然だと感謝もされない仕事を彼らは続けることが出来るでしょうか? 今日からでも良いです、水を提供してくれた時には感謝の一言を必ず添えてあげて下さい、そうすれば彼らだって明日頑張る事が出来るのです!」
「………」
「そ、そうだな…」
「必要な仕事してくれてるもんね」
「水を出してくれるのが当然のように思ってたわ」
彼らに気付いてもらうのだ、そしてあのおばさんにも我らは平等だということを
「土魔法で畑を耕す人、水魔法で作物を育てる人、収穫や運搬する人、それを販売する人、労働者はそれぞれですがどれかが欠けると循環出来なくなります…今は水魔法で作物を育てる人が欠けている状態です、ですので彼らに感謝という栄養を与えてあげて下さい、そうして楽しく毎日を過ごせる水魔法使いになってくれれば、彼らも成長し水を多く生成できるようになれるのです!」
あのおばさんだって労働者だ、このエルトト村に必要な人材だ。 彼女やその他大勢を巻き込んでこの村は回っているのだ。 持ちつ持たれつの関係を意識してくれるならそれが最善だ。
「お願いします、彼らの為にも、このエルトト村の為にも今だけはどうか倒れてしまった水魔法使いの人達を労って貰えないでしょうか?」
深く頭を下げるリフィンにざわざわと動揺する村人たち、この村で感じたリフィンの本心に村人たちがどう答えてくれるかまでは予測できなかったのだが、思わぬ所から第一声が掛けられる。
「みんな! 彼女の言うとおりにするよ!」
あのおばさんだった。
「この村は子供含めて全員労働者だ! 誰かが倒れたら助けてあげないとねぇ! そうだろ?」
「おっしゃあわかったぜ!」
「冒険者様の言うとおりにしてみるべ!」
「あたいもそうするよ!」
「ぼくもー!」
「あたしもー!」
「ほわぁあ、まるであなた様は水の聖女様じゃ!」
この臨時集会はリフィンの想像以上の大反響に終わり、全員で療養している水魔法使い達の元へ向かったのだった。
「あんた気に入ったよ! まだ宿が決まってないなら私の所に泊まっていきな!」
「あ、はい…ありがとうございます」
あのおばさんも、心を開いてくれたのかとても仲良くなれたのであった。
● ● ● ● ●
リフィン達がエルトト村に留まって5日が経った。
あのおばさんとはすっかり仲良くなり、無料で宿泊させてくれていたのだ。 やはりおばさんは土魔法使いらしく、魔法を使って他の人の土地の畑も耕していたそうだ。 事務作業には向かないらしく村長になるのは断り続けているとお金は溜まっていく一方で大きな家を建てるほど余っていて、逆に村の中でお金が回らなくなってどうしようも無く困っていたらしい。
そしておばさんも含めた労働者全員に向けたリフィンの言葉に感激したとのこと。 今後は村全体にお金が循環するようアイデアを出し合っていくとのことだ。
滞在中は村全体の水をリフィンが供給した。 かなり大変であったがおかげで水魔法使い達3人はロディ達の看病もあり無事回復、水魔法の基礎や水への信仰を説いてからは魔法の出力も水の美味しさや温度の調整もある程度可能になり、村の人達からも復帰を祝って宴を開いてくれた。
未だエルトト村の干ばつは続いているが、水魔法使い達が復帰したので滞在するのは今日までにして、明日アルモニカに帰還するとグレン達に連絡していると、ロディとロルタプに声をかけられた。
「なぁ嬢ちゃん…お願いがあるんだが、今度遠征に行く時に着いてきてくれねぇか? 水を運ぶだけでもかなりの重労働でな、水を提供してくれるだけでも助かるんだが」
「遠征ですか…」
「俺達のパーティーには水使いが居ないっすからね、魔物退治は得意なんだけどそれ以外の料理などのスキルは普通以下なんすよね」
「…遠征の時って、どこか町や村に寄る事もありますか?」
遠征に行くついでにリフィンの知らない町や村に寄れれば、このエルトト村のように少しでも水を大切にしてくれる人が増えるかも知れないと思ったリフィンは良いチャンスだと思って聞いてみたのだったが、それを良しとしないグレンが口を挟むのだった。
「待て、こいつはまだFランクだ、飛竜などが飛び交う危険なところに連れて行く気か?」
「おめぇは黙ってろ…今は嬢ちゃんに聞いてんだ」
「…」
「町や村なら水や食料の補充の為に寄ってるっすよ、毎回寄ってる訳では無いっすけどね」
「そうですか…人が居る所に寄れれば、今回の様に水に対する接し方を変えてくれる人達も出てくるかも知れませんね」
「お、そうだな!」
「待てリフ! 今回はなんとか上手く村の奴等に教える事が出来たが、毎度そうなる訳__」
「いいの! …それが私のするべき事だから」
リフィンの強い意志にグレンの双眸がカッと見開く。 その目には戸惑いや疑念を映していたような気がしたリフィンだったが、すぐにグレンの目は元通りになり真意はわからないまま流れていった。
「…お前1人では襲われるだけだ、俺も行く」
「ガハハハ! やっぱおめぇ嬢ちゃんに惚れてんだろ?」
「へっ?」
「ふん、違ぇよ…オカマに面倒みるよう言われてるだけだ」
「そんな強がってるだけじゃ振り向いてくれないっすよ?」
「えぇ!?」
「そんなんじゃねーよ、こいつが1人町の中で水魔法を使ってみろ…あっという間に人が殺到して村の子供達にやられたようにボロボロにされる可能性が高いからな」
「うっ…その件に関しては、グレンが居てくれると有り難いかな」
「! …ふん」
グレンに惚れられているとか言われてビックリしたが、本人も言うように違うようなので少しほっとした___のと同時に少し残念だなと一瞬でも感じたリフィンは、そんな訳がないと頭の中で必死に否定した。
しかし少し念話として漏れていたのか、またはリフィンの表情を見て読み取ったのか、ポコがにやけながら念話を入れてくる。
『リフちゃん、今ちょっと残念がったでしょ?』
『…違いますよ?』
『本当かな〜?』
『違うったら違うの!』
『…僕はよく知らないんだけど、どういう関係なの?』
『えーっとねー』
『ポコ!』
『えーいいじゃん今まで少し一緒に依頼をしたって事くらい』
『…それくらいならいいけど』
『やった! じゃあポコ教えてよ!』
『おっけーい!』
なんかもっと掘り下げられそうで嫌な予感がしたリフィン。
しかしそれよりもアルモニカの方も干ばつが続いているようでどこまで深刻になっているのか心配する気持ちの方が強くなっていた。
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