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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
3章 アルモニカの冒険者
48/138

ケルピー

馬に乗れなかった。

 リフィンによって急襲を阻止され、こちらを睨んで来る3人


「ぅ…」

「おい嬢ちゃん、一撃で仕留めるチャンスだったってのにそりゃねーぜ」

「なんか理由があるんすか?」

「リフ、理由くらいは言って貰おうか…」


 不満げに後方のケルピーを警戒しながら戻って来た3人はリフィンに何故攻撃を止めたのか問いただした。 幸いケルピーの方も石の壁から少し顔を出して不思議そうにこちらを見ているだけで攻撃はして来ないようなので安心した。


「…実は、本来なら霧に入った時点で攻撃されるものかと思ったんだけど無かったし、今も襲われたのにこちらの様子をを見ているだけだから、実害は無いのではと思ったからで…」

「ケルピー倒せば一躍有名になれてある程度金を貰えるってのに見逃すってのか?」

「それに村の人から退治してくれって依頼受けてるっすよ?」

「うぅ…」


 そう、リフィン達は泉に出現した魔物を退治してくれという依頼を受けて今ここに居るのだ。

 たとえ実害がなかったとしても冒険者ならば受けた依頼を遂行する義務があるのだ、リフィンのエゴで中止する訳にはいかないのである。

 ここで追い打ちをかけるようにリフィンの言葉を思い出していたグレンが口を挟むのであった。


「…そういえばお前は無駄な殺生を控えるとか言ってたな、襲ってくる奴だけ仕留めるとか言ってたけどこれは依頼だと思って割り切れ、そして2度と自分のエゴで仲間を危険に晒すような真似はするな」

「…ごめん」

「まっ、強襲するのは失敗したっすけど、逃げてないならいつでも狩れるっすね」

「嬢ちゃん、そんな綺麗ごとばかり言ってたら冒険者なんて務まらねぇぜ?」

「…」


『どうしよリフちゃん…』

『…』


 そしてリフィンの返答を待たずしてケルピーに向かうグレン達、彼らは冒険者として何も間違ってはいないし、むしろリフィンが(おか)した失態にフォローを入れてくれるほど良い人達なのだ。

 だがしかし、また冒険者達が接近し怯えて震えだしたケルピーを見てリフィンは再度、グレン達に静止を呼びかけた。


「待って止まって! これは命令です!」

「…」

「…おいリフ、お前まだ分かって___」

「私がケルピーを使役(テイム)します!」


 無害なケルピーなら殺したくはない、しかしケルピーを追い払うだけでは意味は為さない…ならば方法は1つに限られた。

 ケルピーをテイムするしかその場を押さえれないと考えたリフィンはつい豪語してしまった。 正直おとなしくケルピーがテイムされる保証は無く、危険度の高い未知の魔物なので最悪襲われて死ぬかもしれないのだが、リフィンはそれでも1つの可能性に賭けたのであった。


「え、何言ってんすかこの子…」

「いくらなんでも危険すぎるぞ」

「…お前の命令だ好きにしろ、しかしケルピーが襲ってきたら命令は無かった事にする」

「…ありがと」

「おい良いのか!?」

「まじっすか」


 グレンの了承も得て、リフィンはポコと一緒にケルピーの元までゆっくりと近づいて行くのであった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 こちらの方にやってくる男3人を、後ろの方にいた青髪の女の子が声を張り上げて静止させた。 何やらまた喋りだした後、女の子がタヌキを連れてゆっくりとこちらの方に歩いてきたのだった。



 え、やっぱり僕、襲われるの? でもそんな雰囲気ではないよね…あ、杖落としましたよ? 警戒させないように捨てたのかな? っていうかこのタヌキなんなん? 女の子の身体をよじ上って肩に乗っちゃったよ!? 黄色いネズミ的な何かか? この子水タイプの馬ゲットしようとしてんの? というかボール投げれないくらい近寄りすぎって…あっ_



 リフィンはそっとケルピーの首のあたりを手の平でポンポンと撫でる、心臓は緊張のあまりバグバグ鳴っていたが、ケルピーに怖がられないように優しく撫でていく。 ケルピーの方もリフィンが友好的な人間だと感じたのか頭を下げてたてがみが触れるようにすると、リフィンはたてがみをゆっくりと撫でていく。



 凄いなこの子…震えながらも僕に近づけるとは、僕は多分魔物なのになんでここまで出来るのだろう、僕を油断させておいて他の男3人が襲ってくるかと思ったんだけど、そんな様子は無いしなぁ…



 ケルピーもリフィンの事が気になったのかそのまま大人しく撫でられていると、リフィンは自分の額とケルピーの額を合わせて来た。 ゆっくりと目を閉じてケルピーと向かい合い、ケルピーもまた目を閉じて彼女に向かい合う。



『ピ____が___ぃ』


『ケル___私____ますか?』


『ケル__さん__の声___聞こ___か?』



 次第に聞こえて来た声にビックリして目をあけるケルピーであったが、もう一度目を閉じて頭の中に流れて来た声に耳を傾ける。



『ケルピーさん、_たしの声が聞こえ_すか?』


『き、聞こえるよ! 君が語りかけてるんだよね?』


『はい、ケルピーさん…目の前にいる私が話かけています』


『そ、そうか…君が、僕に語りかけてい”る”ん”だね”…!!』


『ど、どうかしたのですか!?』


『ずっど1人だっだので、ざみじぐで…うぉ”ぉ”お”お”!!!』



 やっど喋れ”だぁ”! 孤独死じな”ぐで良がっだぁ”ぁ”あ”あ”!!  ウサギじゃ”な”い”げど寂死ずる”どごろ”だっだぁ”ぁ”あ”あ”!!!



 こうしてなんとか無事にケルピーをテイムする事に成功し安堵するリフィンであった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「お待たせしました皆さん、なんとかケルピーをテイム出来ましたのでこれにて仕事は完了です。」

「まさか本当にケルピーをテイムするとはな」

「リフちゃんすげぇっすね…帰ったら話題沸騰もんっすよこれ」

「…ふん、ならさっさと引き上げるぞ」


 リフィンはケルピーに森を出て着いてきてくれるかと頼むと、二つ返事でOKしてくれた。 どうやらケルピーは新天地を目指そうかと思っていたようだが、『念話が使えて会話が出来る方が良い』と、リフィンに一生ついて行くと言い出したのであった。 

 最初グレン達が襲って来たとき、リフィン達が何の言葉をしゃべっているのか分からなかったようであるが、リフィンと念話が出来るようになってから、グレン達が喋る会話を聞き取れる事が出来るようになったとのこと。 ケルピーはグレンの言葉を聞いて、自ら森を出るように足を前に踏み出した。


『やっほーケルピーさん! ウチはタヌキのポコだよ!』

『っ! やっぱり君も念話が使えたんだね』

『リフちゃんに餌付けされてイチコロでした』

『なるほど・・・じゃあ僕は2番目なのかな?』

『ううん、ケルピーさんは4番目、1番目は今居ないけど、3番目ならリフちゃんの帽子の中にいるよ』

『あ、帽子取ろうか? …はい』

『…おお、これはスライムさんですか』

『うじゅるうじゅる…』

『スライムのライって言うんだけど、残念ながらライは喋れないの』

『そうでしたか、リフィ…ご主人様の事はなんと呼べば』

『私はリフと呼ばれているので好きな様に呼んで大丈夫ですよ』

『…では、ポコさんと同様に、リフちゃんと呼びますね』

『ウチは呼び捨てでいいよー』

『うん…じゃあケルピーさんの名前が出来るまで、もうちょっと待って貰っていいですか?』

『はい、お願いします』




● ● ● ● ●




「なんじゃとぉ!? 泉に住み着いたケルピーを使役したって冗談も休み休みに……お、おごぉぁ!!?」


 リフィン達の置かれている状況をケルピーに説明し、エルトト村に帰ってきておじいさんに説明するとケルピーを見たおじいさんは絶叫し、アゴが外してしまうというアクシデントもあったが、とりあえずは依頼完了と言う事で納得してくれて助かった、グレン達はおじいさんの家に行って手続きをしているところだ。


 ケルピーを放っておく訳にはいかずリフィンは家の外で待っていると、ケルピーが気になったのか村の者達が怖いもの見たさにゾロゾロとやってきてきていた。


「ほえー、あれが泉に住み着いたという魔物なのかい?」

「村の守り手が寝込んだって聞いたけど、あぁして大人しければそれほど怖くはねぇかもな」

「お母さんあれなにー?」

「あのちっこい冒険者様が使役したって言ってたぞ」

「あのちっこいの魔物使いだったのかよ、てっきり魔法使いかと思ってたぞ!」


 やっぱり集まってくるよね…ちっこいって言うな!


 村の人に囲まれてストレスを感じていないかとケルピーに聞いてみたのだが意外と大丈夫なようで、逆に賑やかになって嬉しいらしく気分は高揚しているそうだ。 すると村人の中から10才くらいの男児がリフィン達のところにやってきた。


「お、お姉ちゃん…ケルピーの背中に乗りたい!」

「えぇ…っと」


 村人達からザワザワと声が聞こえ、危険だ! やめておきなさい! という声が聞こえてきた。 確かにケルピーの背中に乗るのは危険で、一度背中に乗ると降りれなくなり泉まで走っていって潜っていき乗った人間を溺死させたり、呪いをかけられるという言い伝えがこの世界(ミスティエルデ)には広がっているので反対意見が飛び交ったのだ。


『リフちゃん、僕は構わないよ?』

『しかし、そういう訳には…』

『じゃあ先にリフちゃんが乗ってみてよ、きっと驚くだろうし楽しめるからさ!』

『ウチも乗りたい!』

『いいよー!』

『…いいの?』

『うん、僕からのお願いだ…馬を使役してるのに背に乗れない方がおかしいと思うけどね?』

『では…お言葉に甘えて』


 ケルピーが足をたたんで背を低くしてくれた、リフィンは恐る恐るケルピーに跨がるとケルピーはゆっくりと立ち上がった。

 始めて馬に、それも魔物であるケルピーに騎乗するリフィンは不安定に揺れるケルピーの背で踏ん張る事が出来ずにすぐに落馬してしまった。


「あ痛っ!」


 幸い怪我は無かったものの、乗馬するにはやっぱり鞍などの馬具が必要だなと思っていると、リフィンの落馬を見た男児が何かを悟ったような可哀想なものをみる目をして告げて来た。


「お姉ちゃんごめん、やっぱりいいや」

「う、うん…危ないから真似しちゃ駄目だよ?」


 リフィンが言葉を全部語る前にビューンと逃げていく男児、ケルピーの呪いの話を知っていたのか泣きながら去って行き、村人達もケルピーの呪いが怖くなったのか、次第に逃げるように帰っていくのであった。


『呪いなんてかけないのに…やり方すら知らないし』

『みんな逃げちゃったね…』

『ごめんねケルピーさん、私が下手で落馬しちゃって…今度馬具を買って付けるよ』

『うん、そうしてくれると助かるかな』


 リフィンはとりあえずケルピーに名前を付けるのが先かなと考える事にした。

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