エルトト村
馬に乗りたい。
リフィンとグレンがエルトト村に出現したという正体不明の魔物の退治という依頼を受けようとした時、黒剣の集いのロルタプとロディが一緒に参加させてくれと申し出て来た。
ロルタプと名乗った男性は10代後半くらいに見え、リフィンやグレンと同じくらいの歳だと感じた。
くすんだ金髪で軽装な恰好をしており、ナイフや小道具をたくさん持っているので偵察タイプの人だと判断する、それだけでBランクになれるとは流石に思っても居ないが…
ロディの方は前回同様にすぐ判別出来た、ポコ曰く「ひげもじゃ荒くれおじさん」である。
黒髪、黒ひげの大きな体格、大きなハンマーのような武器を背負っている。 年齢は40くらいと予想
何故Bランクのハンター達がリフィン達と一緒にクエストを参加したがるのか分からなったが、グレンが動機を訊ねてくれた。
だがしかし
「動機はなんだ? ただの冷やかしなら失せろ」
「ちょっ!?」
いきなり上位クラスの人達を煽っていくグレンにリフィンは驚きつつも軽く足蹴りを入れる。 口の悪さは相変わらずだがそれに慣れているのかロルタプとロディは全く気にするような事は無く、ガハハとロディが笑ってロルタプと一緒に説明してくれた。
「いやぁ実は干ばつで水の値段が上がってんだよ、いつもの遠征に行きたくても水が高ぇしこの暑さじゃちょっとどころか余裕で足りねぇ」
「で、俺達黒剣の集いは7人居るんだけど、3つに班分けして他の冒険者達を手伝おうって事になったんっすよ、アルモニカ支部の教育係でもあるっすからね」
「そ、そうでしたか…」
現在、干ばつがアルモニカ周辺で起きている為、水魔法使いの人達の仕事量、魔法行使の回数が増えて来ており何人か魔力切れで倒れている状態なのだ。 当然水の価格も上がっていく訳であるし、遠征に必要な水を確保するより他の短時間で終わりそうな依頼を受ける方が得なのだという。
しかしリフィン達が受ける依頼はEランク冒険者1人分程度の報酬しか無く、正体不明の魔物の討伐というハイリスクローリターンが約束された様な依頼なのだ。
「…他を当たれ、元々報酬が少ないのにそれを半分にされたらかなわん」
元々少ない報酬しか用意されていないのを4人で分け合うくらいだったら薬草採取した方がまだマシである。 しかしロディとロルタプは同行を諦めなかった。
「なんなら俺達は報酬無しで動いても構わないっすよ?」
「…は? 理解に苦しむ」
「なぁに、新人の嬢ちゃん連れ回して問題児が手を出してないか同じエルザ組として確認しとかねぇとな?」
「ふん…仮に手を出していたらこいつは今頃妊婦だ」
「にんっ!?」
条件反射で足蹴する。 今までに無いくらいの(前回も言われたが)酷い言われ様である。
流石に憤慨したリフィンはもう一度同じ所に足蹴りを入れたのだがひょいと躱されてしまう、ムキになって殴り掛かろうとしたら左腕を横に伸ばしたグレンに顔面をギュッと掴まれてそのまま姿勢を低くされてしまい、近づく事すら阻止されてしまう。 腕や足の長さ的にリーチが短いリフィンはその場で大人しくするしか無かったのであった。
「うわひでぇ…まぁ一緒に行ってあげてくれないかってリフちゃんを心配していたエルザに言われただけなんすけどね」
「ふん、好きにしろ…ただ1つ条件がある」
「なんすか?」
「おい依頼主のじいさん、お前もだ…」
「何じゃいのぉ?」
するとグレンはリフィンの顔を掴んでいた手を解放し、肩に手を置いてはっきりと言い放った。
「こいつには手を出すな、そしてこいつの指示通りにしろ…それだけだ」
「…え?」
「俺のオモチャに手を出すなって事っすね、良いっすよ?」
「なんだホレてんのか? 手は出さねぇから安心しろぃ」
「あい分かった」
「リフもそれでいいな?」
何故グレンはこういう条件を飲ませたのか分からなかったが、少し考えてみると、恐らく水魔法をリフィンが行使するからその措置として口外しないように命令出来るようにしたのではないかと考えた。
そして悪い事を思い付いたリフィンは早速、先程妊婦と言われた事や顔面掴まれた事に対するお返しをする為に早速命令をグレンに告げた。
「…うん、じゃあとりあえずグレンから命令するけどいい?」
「いいだろう」
「そこから一歩も動かないで両腕を後ろで組んで歯を食いしばって、先程の暴言や仕打ちを腹パン1発で許してあげます」
リフィンの命令通りにグレンは両腕を後ろに回し歯を食いしばった。 見下すような余裕の表情が余計むかつく。
この3日間必死に鍛えた全身を使ってグレンに強烈な一撃を加えてあげる。 これくらいやらないと多分私の気は収まらないかも知れない! グレン…私に命令出来るようにしたことをせいぜい嘆く事ね!
そしてリフィンは腰を落として右手をグーで構えると、今のリフィンのありったけの力を込めた一撃をお見舞いするのであった。
ガァァァン
「っ___痛ったぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!?」
そう…お見舞いする筈だったのだ。
グレンが服の下に鎧を着ていなければ…
● ● ● ● ●
「ここがエルトト村じゃ、あちらの小屋に水魔法使い達が倒れておっての…で、あの森に入ってしばらくした所に泉があって魔物が住み着いとるそうじゃ」
アルモニカから南東方向に半日程歩いた所にエルトト村があった。
ほとんどの家がレンガであり、その中でもひときわ大きい村長宅と思われる家が村の中心に建っていた。 きちんと路面も石畳などで整備されており、村というより小さな町と言った方が適しているのではとリフィンは感じた。
早速リフィン達は早速魔物と遭遇したという人の所に行って情報を聞き出す為におじいさんに案内された家の前には1人の青年がテーブルの上で武器のメンテナンスをしていた。 それを見たおじいさんはその青年に駆け寄ると声をかけた。
「お主、もう大丈夫なのか?」
「じいさん、結構早いお帰りですね…僕はもう大丈夫だと思いますよ、怪我とかも負ってませんし村の守り手がいつまでも怯えて篭ってる訳にはいきませんから」
そう言ってメンテナンス作業を中断した男性は、リフィン達冒険者を見て簡潔に説明してくれた。
「僕はこの村の守り手として働いてる者です、魔物の詳細を聞きに来てくれたと思うんですけど、すみません…はっきり言ってよく覚えてないんです」
「私は冒険者のリフィンと言います、おじいさんから依頼を受けてやってきました…分かる範囲で良いので遭遇した時間帯や何か感じた異変を教えて下さると助かるのですが」
「中々可愛い冒険者様も居るのですね…おっと失礼、あの時の時間帯は昼下がりでしたね、異変といえば…そういえばいつもより霧が濃かった様な気がしました。 普段は遠くまで木々が見えて自然を感じられるのに、あの時は霧のせいか狭苦しく感じたので」
「霧ですか…貴重な情報ありがとうございます」
かなり窶れていた男性だったが、丁寧に説明してくれて助かった。 怯えて寝込んでいたというのにもう起きて動いても大丈夫なくらいに男性は元気なようで少し安心である。
青年と分かれた後、4人で情報を元に推測し、とある魔物である可能性が高いとロルタプが言葉を発した。
「もしかしたらケルピーだと思うっすよ? 泉に出た魔物で霧が出てたとなると可能性は高いと思うっす!」
「…それが妥当として動くべきだな」
「ケルピーか…そりゃまた随分と珍しい魔物だな、ここ数年発見されてねぇからもし討伐出来たらニュースになるぜ!」
「私は魔物図鑑やおとぎ話でしか…危険度がBだという事くらいしか知りません」
『ケルピーってなに?』
『えーっとね、水辺に住む馬みたいな魔物というか、幻獣かな』
『うまー!』
”ケルピー”
水辺に住むと言われる馬の姿をした魔物、または目撃例が極めて低い事から幻獣とも言われている生物だ。
水魔法を用い、人を溺れさせたり水中に沈めたりして血肉を食らうという恐ろしい言い伝えもある。
危険度ランクはB、ドラゴン程の大きさではないと思われるが出現数が恐ろしく低いので少し高めに設定されているとの事だ。
「まぁ霧なら俺の風魔法で吹っ飛ばす事が出来るっすからね」
「後は俺達が仕留めるってだけだな…問題は交戦経験が無ぇって事だ」
「俺もない」
「ケルピーじゃない可能性もありますから…とりあえず行ってみましょうか」
リフィン達はこのまま出発するとおじいさんに告げて、奥の森に入っていくのであった。
やっとケルピーの話だじぇ・・・
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