おいしいみず
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「水生成! はいどうぞ」
「ありがとうございます」
ルコが魔法で水を入れてくれた、手渡されたコップには水が入っており、リフィンはお礼を言うとその水を口に含む。
その常温の水は限りなく普通の水だった。 しかし何故だろうか、自分の水魔法で生成する水のほうが美味しく感じたのはいつも日頃飲んでいるせいなのか、それとも舌が肥えているのかは分からないが、水を頂いておいて失礼な話ではあるが、とても不味かった。
「んふっ!?」
「あああ、大丈夫ですかリフさん!」
「けほっ…すみません、少し器官に入ってしまって咽せました。」
「ゆっくり飲んでください」
「は…はい」
流石に出された水を捨てるのは失礼にあたるし、もったいないので少し我慢しながらもリフィンは一気に飲み干した。
「(不味い…なんでこんなに不味いんだろう、普通の水だよね? 濁ってはいないように見えたけど…コップに問題が? それともルコさん自身に問題があるのかな? でも普通の水生成だったし…なんでだろう?)」
リフィンは色々考えるも答えが出なかったので、水をくれたルコにお返しとしてリフィンも水魔法で水を入れる事にした。
「ありがとうルコさん」
「いえ、私はこれくれいしか役に立てないので…」
「ルコさんは喉乾いていないのですか?」
「カラカラです…そのコップ下さい」
「では、私が水を入れてあげますね」
「…え?」
何を言っているのだと言いたそうなルコの目の前で、リフィンはキンキンになるまで冷えた綺麗に透き通った美味しい水をイメージしてコップに水を注ぐ。
「水の女神シズル様、彼女に命の源である水をお恵み下さい………水生成!」
「…えぇぇぇ!?」
リフィンはルコの目の前で水魔法を用い、コップに水をいれてみせた。 やはりと言うべきかリフィンが水魔法使いであった事に驚きを隠せないルコは口をパクパクさせていた。
「はいお水です、どうぞ」
「いや…えっ…なんで?」
「まぁ隠してますからね、良ければ内緒にして頂ければ有り難いのですけど」
「あ、うん…そうですよね、私も隠してたのがバレて奴隷になっちゃったし、結構いますよねそういう人って…」
「とりあえず飲んでみませんか? 冷たくて美味しいですから」
リフィンに言われた通りにルコは恐る恐るコップに口を近づけてゆっくりと水を飲んで行くと、水の冷たさに驚いたのか少し飲んでからリフィンに感想を伝えた。
「冷たくて美味しいです! こんなに美味しいの初めて飲んだよ!」
「気に入ってくれて良かったです、これはおまけです…氷の粒!」
「う、嘘でしょ!?」
ルコの手にあるコップに小さな氷の粒を投入していくリフィンは、目が飛び出しそうな程驚いているルコを見てクスっと笑った。
「いやぁ驚き過ぎではないですかね…」
「こ、ここ…氷を出せるなんて水魔法使いの中でも上位の、王様や貴族とかに仕える立場の人だったのですか!?」
「そんな経歴持ってないです…ただの冒険者ですし、ルコさんも頑張れば氷も作れたりするかも知れませんよ?」
「是非教えて下さい師匠!!」
「(うん、ルコさんの食いつきが良くて助かった…嫉妬されて言葉も交わせなくなるんじゃないかと少し心配していたけど大丈夫そうですね…年上の弟子もどうかと思いますが)」
その後、リフィンはルコに世界規模で起きている水魔法の出力の低下の事と、水の女神さまを信仰する事で少し解決するのだと伝えたのであった。
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「では私も水や女神様に感謝して信仰を深めると水魔法が上達しますか?」
「必ず…とは言えません未検証なので、でもルコさんがそうして上達出来れば良いデータが取れそうですね」
「そうですね、頑張ってみます!」
「ルコさんの水魔法が上達し確証出来たら多くの水使い達に広める事も出来ますね」
「…リフさんは凄く敬虔な方なのですね」
ルコはそう言って瞼を閉じ天に祈りを捧げていた。 敬虔なのかは自分では判断が付かなかったので下手な言葉は出さず、ルコと同様にリフィンも祈りを捧げるのであった。
それからしばらく水の事で話込んでしまいオレンジに輝いていた夕日はいつの間にか沈み、紺色の夜空には綺麗な星が無数に輝いていた。
『リフ、他のメンバーが帰って来たぞ』
『ありがと、じゃあお話はここまでですね』
上空にいるタキルから念話をキャッチし、水の話はおしまいにしようとルコに伝える。
「水の事で分からなかったらまたいつでも聞いて下さい、そろそろ皆さんが戻ってきたようですよ」
「…気が付きませんでした、流石ですね」
「タキルのおかげです…くれぐれも私の事は内密にお願い致しますね」
「言えませんよ流石に、言ったら私の代わりにリフさんがメンバーに入るかもしれないですし!」
「それはどうでしょうかね…」
しばらくして虹百合メンバーが全員帰って来た。
恐らく狩ってきたのであろう鹿や猪、手の平サイズの肉厚のキノコ、甘そうな木の実が並べられ、そのままここで晩ご飯にするそうだ。
リフィン達が調理の準備をしているといつのまにかメリコムがキャンプをする準備をし始めており、他のメンバーから意見が飛び交った。
「…日帰りで帰る筈では」
「こんな美味そうな肉が手に入ったんだ、いつ喰うのか…今夜だろ!」
「帰って身体を洗いたいのよねぇ?」
「今日は新人が頑張った祝いだ! 宴を開かない訳にはいかないだろ?」
「ふふ、リーダーはアウトドア大好きだからしょうがないわね」
「まぁウォルもくたびれて眠りこけているし…」
「えー、家でやればいいじゃん」
「いつでも冒険者はサバイバル出来るように訓練しておかないとな…その一環だ!」
さも当然のようにメリコムの意志が反映されてここで一泊する事になったリフィン達は、食って楽しんで睡眠を取る事になった。
ルコは先程出した水より皆に配った水の方が少し冷たくて美味しいものに変わっていたので、いきなりの成長にビックリするリフィン。
学生時代の頃のユリネとシモンとは元々顔見知りで昔虐められていたけど普通に喋る仲のように話せたし、他のメンバーであるメリコム、アンリ、ウィズ、カンナとも仲良くなれた様な気がするリフィン、そして一番仲良くなったというか尊敬の眼差しで見つめてくるルコはリフィンに質問攻めをしてくる始末であった。
● ● ● ● ●
「そういえばリフィンもエルザ組で良かったわね」
就寝に付く前、突然シモンが話しかけてきた。
「え? なんの話ですか?」
「受付のエルザのところに行く冒険者はエルザ組って言われているのよ」
「なるほど…」
「エルザ組は他の冒険者達からして恐れを知らぬ者として避けられているわ」
「え…私避けられているんですか!?」
「あー、リフは男の冒険者に話しかけられた事ある? 一緒にパーティ組まない?とか」
「無いですね…グレンと、黒剣の集いの方達と少し話した程度ですね…」
「そいつらもエルザ組だからね、他の受付嬢のとこに行く事なんてエルザが非番の時くらいだし、まぁとりあえず身体目当ての男が寄って来ないだけでも有り難い話よね」
「え!?」
「エルザ組じゃない女性冒険者なんて、いつの間にかパーティに誘われてしばらくしたら妊娠したーって言って冒険者辞めていくんだもの…」
「…それは流石に言い過ぎでは」
「そうでもないわ、1年間ギルドに居たけど4、5人程引退した人居たし…ちなみにリフはあんまり気が付いて居ないようだけど、リフがその辺の男性冒険者に話しかけられないのは、エルザが睨みを利かせているからよ」
「エルザさんに足を向けて寝られませんね…」
「私もそこに関しては同意するしかないわね…」
あの時言ったエルザさんの言葉は本当だったのか…と感謝し、リフィンとシモンはゆっくりと瞼を閉じていった。
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