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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
1章 水魔法が弱くなる世界
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冒険者登録

「いらっしゃい、ここがアタシの失楽え…部屋よ」

「あ、はい…お邪魔します」


 今なんて言おうとした? もうアウトなところまで聞こえた気がしたんだけど! とリフィンの両手に収まっているタキルに念話を送るもすでに白目向いたタキルからは反応がなかった。

 気付いたらかなりの強さでタキルを両手で圧迫していたらしく気を失っていたようだった。


「そんなに緊張しなくてもいいわよぉ? ただ寝床を、といってもソファーだけど貸すだけだしねぇん」

「はい、このソファーですか?」

「えぇそうよ、お風呂とかもあるけど自由に使っていいわよ? 水は貴重だから無駄遣いはしないようにね」

「…ありがとうございます」

「んもぅ緊張しすぎよぉん、そんなにガチガチだったら追い出すわよ?」

「い、いえ、思ったよりも普通な感じの部屋なので逆にびっくりしてただけです」

「うふふ、おかしな事を言うわねリフちゃんは、とりあえずアタシは晩ご飯作るからそこで待っててもらえるかしら?」

「ご飯も頂けるのですか、何から何までありがとうございます」

「アタシの料理でリフちゃんのほっぺを堕としてみせるわぁん!」


 そう言って軽快なステップでエルザは厨房に姿を消した、ナニが出てくるのか分からないが料理は作り手の性格を表すという程だ。 エルザの料理に少し興味はあるもののそれより恐怖や不安の方が大きかった。


 エルザの部屋に入ってから分かったのだが、エルザの住まう家は2階建てのアパートメントの一室だった。 その1階にエルザの部屋があり隣の部屋や上の階にも生活感あふれていたので住民がいるのだろうと分かる。

 そしてリフィンが想像していたよりも案外普通の部屋できちんと家具や道具が揃えられており、掃除も行き届いているのであろう清潔感がこの部屋に漂っていた。 少し親父臭がするが余り気にならない程度だった。


『思ったより普通だな、あのオカマ野郎の家だからもっとケバケバしくて香水臭いのかと思ってたけど』

『タキルは念話以外だと、ピィーとしか言えないから少し羨ましいわ…鳥だし』


 いつの間にか復活していたタキルがエルザには言えない言葉を紡ぐ、リフはそれを羨ましがるが間違っても言わない方が身の為であるので少し自制する。

 リフとタキルはリビングのソファーから動こうともせずに周囲をキョロキョロと見渡すだけなので、それに飽きたタキルがリフィンに気になっていた事を語りかけた。


『そういやリフ、なんとかでベスト8って言ってたけど、何の話なんだ?』

『ん、あー…ヌツロス魔法学校のトーナメントの事で、約130人で行われた生徒同士の戦いでベスト8になったのよ』

『そんなのがあるのか、見かけによらずリフって結構強いんだな』

『…あんまりこの話はしたくないんだけどね、エルザさんにベスト8って言ったらすんなり冒険者登録してくれるかなって思ってたんだけどあんまり意味は無かったわね』


 少し苦笑いになるリフィン、ベスト8になったというのに、この話はしたくないというくらいだから何か裏があるのではと思ったタキルは、


『ベスト8ってのは嘘なのか?』

『…本当だけどこの話はおしまい、次言ったら焼き鳥にする』


 ツンとした態度で返されるタキル、これ以上の詮索は止めておいた方が良いと判断し何か話題を考えようかと思ってみると、どこかから不気味な鼻歌が聞こえてきた。


「ふんふーん♪ 出来たわぁん♪ おまたせリフちゃん、お腹空いたでしょ? 今日は少し凝ってみてマッシュファングのスペアリブと自家製の白い粘っこいソース和え アタシのまごころをこ・め・て♡ よ!」


 リフィンとタキルが声がした方を振り向くと、エプロン姿の化け物がくねくね踊りながらお盆に乗せた料理を持ってきておぞましいウインクをした。

 リフィンには悪いがタキルはそこで意識を失ってしまい、それからの記憶はタキルには無いーーー


 すまねぇリフ、オレは先に逝くぜ…




● ● ● ● ●




 翌日、タキルが意識を取り戻すとエルザの部屋に居たのだが妙な違和感を覚えたのだった。

 辺りを見回すと2人の姿は見えなかったが、厨房の方から談笑する声が聞こえてきたので耳を澄ましてみるとリフィンとエルザが仲良さそうに会話をしていた。


「エルザさんって元Bランクハンターだったんですか!?」

「えぇそうよぉ♪ 今は引退しちゃったけど、そこら辺のCランク冒険者達と戦ったらまだ私が圧勝できるわぁん♪」

「そんなに強くて料理も上手だし家庭的だし、尊敬します!」

「うふふ、リフちゃんさえ良ければ、何からナニまで教えて上げてもいいわぁん♪」

「本当ですか! 有り難うございます!」


 …めっちゃ仲良くなってね? オレが意識失ってる間に何があったんだ!? とタキルが驚いていると件の2人がリビングにやってきた。


「お風呂も使わせて頂いて有り難うございます! 長旅でちょっと汗の臭いが気になっていたんですよ!」

「それはよかったわぁん! やっぱりオンナノコは清潔でいた方が美しいからねぇん!」


 …なんか2人共ツヤツヤしてね? オレが意識を失う前より若干潤って見えるんだけど!? とタキルの青い顔がさらに青くなる。



「あらぁ?タキルが起きたみたいね、お腹空いているんじゃない?」

「そうですね、干し肉のカケラを与えておきますね」

「そういえば鳥って雑食だったじゃない? 昨日の残りがあるけど食べるかしら?」


 反射的に首を横にブンブン振って、リフィンに『干し肉がいいです!』 と念話を送るも、タキルの要望は無惨にも却下される。 タキルにはリフィンの顔が不気味に微笑んでいるように見えた。


「食べると思いますよー、干し肉なんかよりもエルザさんの料理の方が栄養あると思いますし」

「そう言ってくれると有り難いわぁん♡ そうだリフちゃん、アタシがタキルに食べさせてあげてもいいかしら?」

『リフ、お願いだぁ! 助けてくれぇええ!』

「…どうぞー、タキルも喜ぶと思いますし!」

「ありがとリフちゃん、鳥に食事を与える機会って無いから一度やってみたかったのぉん♡ はーいタキルちゅわん、クチバシ開いてあーん♡」


『い”や”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”~~~っ!! 恨むぞリフーっ!』




● ● ● ● ●




 冒険者ギルド、アルモニカ支部


 どこからとは言わないが無事生還したリフィンとタキルは、エルザに連れられて冒険者ギルドに到着した。

 簡単な筆記テストと難関な身体テストを終えると、エルザはちょっと待ってねぇん、と奥の部屋に入って行った。 リフィンがどうしたのだろうと身体を傾けて覗こうとするとすぐにエルザが出てきて、その後からエルザと同じくらいの身長の白ヒゲ生やしたおじさんが出てきた。


「お待たせリフちゃん、登録にはギルドマスターの立ち会いが必要でね。ついでだし紹介するわぁん、この人がここのギルドマスターのリョルルよ」


 エルザが説明してくれるがギルドマスターのリョルルさんは何が不満だったのか、いきなりエルザの後頭部を軽くベシッと殴った。


「馬鹿やろう、ちゃんとフルネームで教えろオンナモドキ・・・えーっと、君がリフィン・グラシエルか?」

「は、はい」

「俺の名前はリョナスキー・ウッド・ビュルルだ、まぁこいつ含めていろんな奴からリョルルと言われてるからな、好きに呼んでくれや」

「わかりました、リョルルさん」


『フルネーム酷過ぎねーか?』

『ん?そう?』

『いや、まぁ気にならないならそれでいいんだが…』


 何やらタキルは思う所はあるようだが、ウッド・ビュルルというのは数百年前にヌツロスムント王国で活躍した黒の大賢者のファミリーネームだ。


 小さい頃に歴史書を読んだ時からウッド・ビュルルが好きだったリフィンも、そうでない一般人も教科書を開けばたいてい載っている偉人なので知らない人は居ない有名な人物だったのだ。


「あの、もしかしてあの黒の大賢者様の…」

「あぁ、ワキコキスキーの子孫だが?」

「本当ですか!? 黒の大賢者様のファンなんです! ご子孫様に会えて感激です!」

「お、おう…こんな所に信者がいるとは思わなんだ」


 リフ、お前そんな名前の奴のファンだったのか…もうなんなのこの世界

とタキルが呆然としている間にも会話は進んで行き、しばらくして冒険者登録の手続きの話に戻った。


「筆記は満点、実技は赤点ギリギリね…一応合格だけど、リフちゃんに冒険者としての注意事項や規則を教えるから、全てに同意した上でサインを書いて頂戴」

「分かりました」

「まず1つめ、冒険者同士の喧嘩、殺し合い、お金の貸し借りは禁止よ、怪我をしない程度の競い合いはこれに含まれないわ、あと、お金が無い時はここの受付に相談しにきなさい」

「はい、そういうのは苦手なので大丈夫だと思います」

「じゃあ2つめだけど、民間人や非武装者に危害を加える事も禁止ね、しかし明らかに不審な人物や危険だと思われる人に対しては拘束することを許可するけど、あまり怪我をさせると駄目だからね」

「…はい、不審な人物などを危険と判断するのは人によって多少の誤差はあると思うのですが、そこはどうしたらいいのでしょうか?」

「あらあら、良い意見が飛んできたわね…とりあえずはリフちゃんが身の危険を感じたらそれでいいわ」

「結構大雑把なのですね…」

「この問題ばかりはどうしてもそうなるのよね」

「わかりました」

「そして3つめ、犯罪行為には手を染めない事ね…殺人、遺棄、障害、暴行、脅迫、強要、誘拐、監禁、窃盗、強盗、詐欺、横領とかね、まだたくさんあるけどここでは割愛するわ、失礼な事を言うと一応強姦とかもあるけどリフちゃんはされる側だと思うし、細かい所は冒険者手帳に書いてあるからよく見ておいてね」

「はい、気をつけます」

「4つめにいくわ、冒険者の会費を徴収してるので必ず支払う事、タダで冒険者達を集めている訳じゃないの、会費を払ってもらって冒険者達を支援できるのはこれのおかげよ、会費はランクごとに決まっていてランクが上がる程高くなっていくわ、会費は冒険者に加入してから半年ごとに支払う事になっているから気をつけてね」

「わかりました」

「5つめね、依頼を受けて失敗すると違約金が発生するので、その時はちゃんと支払う事、冒険者に依頼が来るのは信頼されているからこそね、信用を失うとこのギルドが無くなる可能性もあるからこれはきちんとしてね」

「がんばります…」

「6つめ、これは緊急時の話になるんだけど、緊急依頼が入ってくる事が稀にあるわ、その時はその場に居る冒険者全員がギルドマスターの指示に従う事、逃げたりしたら駄目よ?」

「例えばどういった時が緊急なのですか?」

「そうね…この街を半壊させるほどのモンスターが現れた時とか、天変地異で火山が噴火して危険な時とかかしら? いままでそう言った事はないんだけれどもね…遠い辺境に強いモンスターが現れたりするけど、こっちには近づいてきた事ないしねぇ?」

「わかりました」

「では、最後の7つ目ね…これ一番大事だからよく聞いておくのよ?」

「…」ゴクリ

「どんなに苦しい時でも、どんなに絶望的でも諦めないで、絶対生きて生きて、生きのびるのよ!」

「それは、死ぬなということですか?」

「そういう事よ、冒険者は常に危険と隣合わせだから、どんなに一流の冒険者だって油断してたら死ぬ時は死ぬし、ちょっとした事故でも人間って言うのは脆くてポッキリ死んじゃってたって事もあるし、生活に困ったり絶望して自ら命を絶つ人もいるわ。 だから冒険者達にはよく言ってるのよ。」

「自分の命は自分で守ります」

「うふふ、リフちゃんならこの7つは言わなくても守ってくれそうね、ただ心配なのは実力なのだけれど…」

「善処します…」

「では、ここの所にサインしたら登録完了よ」

「はい」


 リフィンは冒険者としての注意事項や規則、制限をもう一度よく確認し、読み終えてからサインを書くとギルドマスターのリョルルさんからバッジを受け取った。 バッジにはコンパスと剣のエンブレムが彫刻されていて、端っこにGの文字があった。


「そいつはGランクのバッジだ、無くすと再発行にお金かかるからきちんと管理しておけ、依頼をこなして行けばランク昇進のクエストを受けられるようになり、それをクリアしたらFランクになって受けられる依頼の種類やサポートされる事柄が増えてくるので一層奮起するように、これで冒険者登録は終了だが何か質問はあるか?」

「…このコンパスと剣は何を意味しているのですか?」

「あぁ、コンパスの中心がアルモニカになっててな、その周りの模様が川や海、山や森、村や農場を表しているんだ。 エンブレムの下にアルモニカって書いてあって端っこにGの文字があるだろ? それはアルモニカ支部の冒険者でGランクという事を表していて、冒険した成果がコンパスという地図になっている。 剣はただ単に力を表しているだけではない、魔物や邪心から脅威を取り除き、秩序を守る為の破邪の剣を象られているのだ。」


 納得したか? と聞いてきたリョルルさんに首を縦に振って肯定する。 ちょっと格好良いエンブレムだから気になって聞いてみたのだが、ちゃんと意味まであるとは知らなかったのだ。


 リフィンはバッジを帽子に付けてかぶるとエルザからぱちぱちと拍手を貰い、リョルルさんからお祝いの言葉を頂いた。


「おめでとうリフィン・グラシエル、冒険者の世界にようこそ!」

リョルル

冒険者ギルド アルモニカ支部のギルドマスター

50代だが体つきはしっかりしている白髭おじさん

冒険者達が誰も受けない期限切れ間近の依頼をせっせとこなす苦労人

依頼主との案件の兼ね合いも大体は彼がこなしている。

黒の大賢者の子孫

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