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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
3章 アルモニカの冒険者
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水魔法のおかげで…

 北の街道


 新人冒険者のルコは、一匹のゴブリンと戦って敗北した。

 メリコムに「武器は使わず己の力だけで倒してみろ」と言われ、最初は水魔法を使って弱らせようとしていたのだが怯みはするものの全然効いておらず、しまいには普通に武器を持たず殴り合いに発展して、取っ組み合っていた所にゴブリンが唾を吐き「うわ汚ないっ!?」とビックリした隙に力負けをし、そのまま押し倒されたところで見ていられなかったリフィンはポコを加勢させた。

 結果として分が悪いと判断したのかゴブリンは逃走、ルコも幸いとして怪我は負わなかったものの、彼女の精神的ショックは大きいだろうと推測する。


「あ、ありがとリフィンさん…流石にゴブリン舐めてかかってました」

「私も経験あるので気持ちわかります、あと私の事はリフでいいですよ」

「では、リフさんと…すみませんゴブリン倒せなかったです」


 ルコは虹百合のメンバーに向かって頭を下げると皆は笑って済ませてくれた。


「なぁに、戦った事の無い奴に武器も持たせず挑ませたんだ、最初から勝てるなんて思ってないさ」

「ふふ、少しイジワルしてごめんなさい」

「1年前のシモンに比べると全然戦えてたから誇っていいよ!」

「ちょっ!? 今その話しなくてもいいじゃない!?」

「…あのときの逃げ回るシモンは面白かった」

「…え?」


 何故武器も持たせずゴブリンと戦わせたのか…リフィンも少し疑問に思っていたのだが、(ようや)く理解した。

 実は彼女達は、ルコの本当の性格を把握しておきたかったのだ。 もしリフィンなら魔法で牽制しつつ距離を取りながらその辺に落ちている木の枝を探すだろう、間違っても近接戦で戦おうとはしない筈だ。 それがリフィンの性格であり自分が非力であることから考えられる戦闘スタイルである。

 それとは逆にルコの場合は、魔法で駄目なら近接戦で戦う事を選ぶ性格のようで相手を恐れずに立ち向かえる心を持った性格と言えよう。


 加入したばかりの新人冒険者の性格を知る為に、わざと武器無しで戦わせて今後どのようにして鍛えていくかという彼女らの計らいでもあったのだ。

 メリコムはルコに性格を知っておきたいからわざと戦わせた事を暴露した後に謝り、ルコも彼女らの親身さが身に染みたのか感謝の言葉を述べていた。


「勝手に援護に回ってしまってすみません…」

「まぁあのままじゃ危なかったから私が出て行く所だった…何も問題は無い」

「そうでしたか…」

「…リフィンもゴブリンと戦ってみるか?」

「いえ、良いです…」


 お互いに武器持ってゴブリンとほぼ同格なのは検証済みなので流石に遠慮しておくリフィン、水魔法で戦えば勝てると思うがまだ彼女らには内緒にするべきだと判断したためだ。 今はタキルとポコを駆使して魔物使い(テイマー)として勘違いして頂く事にした。


「そういえばなんだけど、グレンと一緒にバニーマンの依頼を完遂させたって噂が流れてたけど本当なのかしら?」

「………」


 街道を歩いていると唐突にユリネが話しかけて来た。 その依頼についてはリフィンの氷魔法を使用している事から、肯定すべきか否か、判断に困ったのでそれとなく曖昧に答えるのであった。


「そういう噂が流れているのでしたら、そうなのではないかと思いますが…詳しい話はグレンが知っていますし」

「…ふぅん、じゃあ何故グレンがわざわざリフを連れて行ったのかも気になるわね」

「多分アレです…私が囮として丁度良かったからじゃないでしょうか」

「ふふ、今はそういう事にしておいてあげるわ…虚ろな目でギルドをあとにしたって噂もあるし」


 そういう事にしてくれた。 実際にはリフィンの氷魔法で全てを凍らせて解体を行ったのだ。ユリネはこういう所は何故か鋭いから油断ならないが、とりあえずは納得してくれたようで安心する。

 そうして歩いているうちに目的地から少し離れたところで、メリコムが中心となって作戦を立てるようであった。


「おおよそ報告されている目的地から少し離れた場所に今居るんだが、正確な場所や数、行動範囲が分からないのでここからカンナとウォルに偵察に向かってもらう、それまでは戦闘準備に備える」

「オーケー、じゃあウォルと行ってくるわ…

「では、私もタキルに斥候として出てもらいますね」

「…わかった、許可しよう」


『タキル、お願いね』

『任せとけ!』

『骨は拾ってあげたあとおしゃぶりにするから頑張ってきてね!』

『おいやめろポコ、流石に冗談キツいぞ!』

『ごめんごめん、応援してるから』

『おう!』


「正午になったら一度帰還させてくれ、昼食と同時に作戦を練る。」

「わかりました」

「ピョルリ!」『了解だ!』


 こうしてカンナさんにタキルを預けて斥候に出てもらい、残った私達は昼食を作る班と作戦を練る班を作って分けたのであった。

 作戦を考えるのは結構好きなリフィンなのだが、流石に部外者なので昼食を作る班に入れられた。 新人のルコと調理責任者のシモンと一緒だ。 他のメリコム、ユリネ、アンリ、ウィズさんが作戦を練るようだ。


 昼食のメニューはコボルトのモモ肉を煮込んだものを作るらしく、これは学生時代にリフィン達が作った事があるメニューだ。 まずはタマネギを切れとシモンに手渡される。

 水は早速ルコさんに出してもらうようで、予備の水は少量しか持って来ていないとのこと、手を洗ってから道具を出して調理にかかる。

 正直言えばリフィンはすぐに食べられる保存食でも良かったのだがメリコムさんが保存食を嫌うらしく、お腹いっぱい食べないと強くなれないぞ! とのこと、確かにそうかも知れないがそれは虹百合が複数人のパーティだからこそ可能なのであった。 リフィン1人では流石にかさばる荷物を全部持てないので不可能である。


「はーいちゃっちゃと野菜切っちゃって! 私は鍋見とくから!」


 そう言ってシモンは火魔法で薪に火をつけて鍋にブツ切りにしてあるモモ肉を投入していく、手慣れた感じで調味料等を準備しているので聞いてみたのだが、流石調理に火魔法はかかせない為かシモンが虹百合に来てからずっと調理担当をしているらしい。


「スライスしました」

「ん、貰うわ…ふーんやるじゃない」

「…まぁこれくらいは出来ませんと」

「そういやリフは人並みに料理出来てたわね…」

「シモンよりはマシでしょう」

「言うじゃない」


 ルコは簡易テーブルをセットして、リフィン達が使い終わった調理器具を洗っていた。

 しばらくすると料理も終盤となり、リフィン達のする仕事が無くなると、


「あとは完成まで煮込むだけだから私が見ておくわ…2人は適当にブラついてていいわよ」


 とシモンが言って来たのでどうしようかと悩んでいたリフィンにルコが話を持ちかけて来た。


「あの、リフさん、少しお話し良いですか?」

「はい、良いですよ?」

「では、あそこの倒木あたりでどうですか?」

「わかりました」


 リフィン達は少し離れた倒木の上に座り話をする事にした。 調理しているシモンや作戦を練っているメリコム達との距離もそんなに離れていないし大丈夫だろう。


「いきなり質問から入っちゃうんですけど、えっと…リフさんは小さくて魔物とも戦えそうにないのにどうして冒険者になったのですか? 聞くところによるとエリートだったと聞きましたが」

「んー、そうですねぇ…」


 世界で密かに発生している水魔法の威力、出力低下の原因を探す為に冒険者になりました。なんて今は今は言えないし、そもそも原因は分かっているのだけど解決するのがまた難しい…学生時代にずっと魔法の研究をしてたから「魔法の研究の為」と言えば納得してくれるだろうか…しかし何の魔法の研究なのか聞かれると答えにくい


「んー、この世界のいろんな所を見たかったからですかね?」

「いろんな所、ですか…」

「本で読んで知識だけ知ってても活字上のイメージだけでは分からない事ってたくさんあるからね、実物を見て初めて知る事になると私は思います。」

「また難しい事言ってますね…なんとなく分かるのですが冒険者になる理由としては私はあんまり理解出来ません」

「だよね…ルコさんはメリコムさんに買われたんだよね…奴隷市場で」

「…知っていましたか」

「はい、あの時メリコムさんと居たので」

「…なら隠す必要は無いですかね、私が冒険者になった理由は自分を守る為です、水魔法使いは捕まれば奴隷のように使われるし、良くて国に軟禁、私が売られた原因も水魔法使いだからという理由でした…水魔法使いだったからメリコムさんに拾われて感謝こそしていますが、もともと水魔法使いでなければ売られる事も無かったかもしれません。」

「………」

「魔法が使えない多くの人達には失礼な事かもしれませんが、私は水魔法の事が少し嫌いです…憎らしい程とまではいきませんが、この水魔法のせいで苦しんでいる人は多く、憎んでいる人も多いのではないでしょうか」

「そ、そうですか…」

「私の知り合いから聞いた話ですけど、水魔法のせいで自ら命を絶った人も居ると聞きます」

「…貴重な意見が聞けて良かったと、思いました…これも世界のいろんな所にあたるので考えさせられる出来事ですね」

「そう、ですね…」


 リフィンは水魔法使いであるルコ本人から水魔法を少し嫌いと聞いてしまった。 実際居るとは思っていたが、こんな身近に居て、水魔法が原因で人生を振り回されているのだ。 流石に水の女神のシズル様が信仰を受けられなくなって弱体化が進むのも分かる気がしたリフィンであった。

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