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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
3章 アルモニカの冒険者
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虹百合と依頼

ゴブリンには勝てなかったよ・・・

「そうそう、今回の依頼なんだけどね、そこのリフちゃんを連れて行ってくれないかしらぁん? 今丁度(ちょうど)受けられる依頼がなくて困ってるのよね」

「メリコムさん、お願い出来ますか?」

「あぁいいとも、こっちも先日登録したばかりの新人を鍛えるつもりでいるから丁度良い」


 エルザがリフィンを連れて行ってとメリコムに告げると、二つ返事ですんなりと受け入れてくれた。 登録したばかりの新人とは水使いの奴隷だった子で、シモンとユリネの後ろに隠れてこちらをチラチラ見ている人だろう。

 リフィンはこれからお世話になる虹百合の他のメンバーにも自己紹介をした。


「リフィン・グラシエルです、受けられる依頼が無くて困ってました、足手まといにはならないように頑張りますのでよろしくお願いします。」

「受けれる依頼が無いんじゃ仕方無いわね、今日はよろしく」

「ふふ、リフと依頼をする日が来るなんてね…こき使ってあげるから覚悟しておくことね」


 と、シモンとユリネが挨拶を交わす。


「えっと、この鳥はタキルでこっちのタヌキはポコ、肩にいるのがスライムのライです」

「ほーう、その鳥はなかなか使えそうだな…そういえばあたしは自己紹介がまだだったな、って既にさっき名前を呼ばれてたがまぁいい、あたしはこの虹百合のリーダーのメリコム・アバラオルだ、よろしく」

「はい、よろしくおねがいし痛っ!?」


 メリコムはそういって握手するように右手を出して来たから、リフィンはその大きな手に右手をそっと伸ばすとガシッと握手されてニギニギと強めに握られた。


「子供みたいな手をしてるな、鍛えていない証拠だ…あたしの新人育成教育プログラムに参加したらあたしみたいにムキムキになれるから期待してていいぞ!」

「痛てて…お手柔らかにお願いします」


 そこまでムキムキになるつもりは無いので心の中でこっそり拒否するリフィン


「リフィンちゃんね…アンリよ、よろしく」

「…ウィズ、です」

「あなたと同じ魔物使い(テイマー)のカンナ、シルバーウルフを使役しているわ…ウォル!」

「ウォウ!」


 他の虹百合のメンバーが自己紹介してくれて、カンナさんがウォルというシルバーウルフを呼ぶと、外の入り口に居たのだろうかスタスタと白銀に輝く大きなオオカミが颯爽と現れた。


「おっきぃ…」


『あーこれウチ食べられちゃいそう…』

『餌として認識されてなければいいな…』

『いやどうみても餌でしょウチ』

『まぁまぁ、意外と話が通じるかも知れねーぜ?』


 ポコの方へシルバーウルフのウォルが一直線に進んで行き、クンクンとポコの臭いを嗅いでいた。 ガクブル震えていたポコは死んだフリをしてその場にパタりと倒れてその場しのぎを実行する。


「ウォル、その子達は食べちゃ駄目だよ、仲間だからね」

「ウォフ!」

「ポコが狸寝入りを決めてる…」


 その後リフィン、タキル、ライもシルバーウルフのウォルに臭いを嗅がれるという洗礼を受けると、影の方でオドオドしてたもう1人の虹百合メンバーが自己紹介をしてくれた。


「…ルコです、冒険者登録したばかりですがよろしくお願いします」

「私も全然日が浅いですしほぼ同期みたいなものですので…一緒に頑張りましょう」

「はい!」


 ルコと名乗った彼女はおそらくリフィンより年上だが、今まで戦った事がないであろう物腰であることから、戦闘は素人だろうとリフィンは一目見て推測する。 ルコよりも小さいリフィン自身が言えた事ではないが…

 ルコという新人冒険者さんの装備はメリコムさんのおさがりなのだろうか、少しレザーアーマーが大きいのではないのかと思うくらいブカブカなのは今は気にしないでおこう

 初めて見る虹百合メンバーの顔と名前を一致させるのに時間が少しかかるリフィンであったが、即座にメモを取って忘れないように記入するとそれをポーチにしまう。

 すると虹百合が受ける依頼の用紙をメリコムから渡されたる、名前を書けという事だ。 他のメンバーは虹百合のパーティに属しているので記入が省略されていて、リーダーのメリコムだけが記入すればそれで終わりなのだが、リフィンはどこにも属していないソロ冒険者なので記入しなければならなかった。

 チラリと依頼書の内容を確認すれば、北の街道に出現したクリムゾンエイプの群れの一掃、討伐であった。 最近頻繁にクリムゾンエイプが複数体出没するのを目撃されており、すでに行商等の数名の通行人が被害を受けてしまっているようで、これ以上被害が大きくなる前に一掃してくれとのことだ。

 実は北の街道はリフィンがヌツロスムントからアルモニカに来る時に通った道でもあったので、クリムゾンエイプが縄張りを張る前に通れて良かったと内心思った。

 リフィンは用紙に記入するとエルザがそれを受理してくれて、クリムゾンエイプの特徴を説明をする。


「クリムゾンエイプですか…また危険な魔物ですね」

「あらリフちゃん、知ってるの?」

「魔物に詳しく書かれている文献を読んでいるので一応は知ってますが、実物は見た事がありません」

「そう…一応教えておくけど、見た目は赤黒い毛並みを持った猿で火魔法を使う個体が多いわ、ゴブリンより知恵があり稀に希少属性である光魔法を覚えている個体も居るわね…奴等は縄張り意識が強く同族に危害を加えた敵に対しては特に執拗に狙って来るから気をつけてね、単体でもゴブリンよりも手強いから無理はしないように」

「わかりました…ではエルザさん行ってきます」

「気を付けてねぇん」


 それに関しては以前に文献で読んだ通りの内容だったのであるが、クリムゾンエイプの本当の恐ろしさをリフィンが知るのはもう少し後であった。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 私は水魔法使いのルコ、ひょんな事から奴隷として捕まり、貴族の慰み者として生きるのだと半ば諦めかけていたんだけど、私を高額なお金で購入したのは貴族でもなんでもない冒険者パーティ<虹百合>のメリコムさんだった。

 彼女は水魔法使いの冒険者を欲していたようであるが、水魔法使いのほとんどは国や貴族に隷従している者で占めていて自由に生活している水魔法使いは居ないのだとか…

 水魔法自体、攻撃に向いている属性ではないので自ら冒険者になるという者も居ないというのが現状らしい、では何故メリコムさんは私を必要としてくれたのか…というと「全部の属性が揃ってると知名度が上がるだろ?」という安直な解答が帰って来たときは愕然として開いた口が塞がらなかった。

 とりあえず高位の水魔法使いになると氷魔法が使えるようになって攻撃役としても使えるようになるのでまずは氷魔法を習得してくれと頼まれた。 しかし水魔法使いのほとんどは水を出すしか能力が無く、高位の水魔法使いは国のお偉いさん達に監禁されているような状態で、どうやって氷を生成するのかというのは口封じが施されているので詳しくは分からないが、氷魔法を出す事が出来るようになれば今はそれでいいとメリコムさんは言ってくれた。


 あと、奴隷という身分も解消された。

 私はそのまま逃げ出すことも可能であったのだが、帰る場所も無くツテもないので逃げた所でまた捕まって奴隷に逆戻りなのは普通に予想出来た。 逆にメリコムさんによって私が冒険者として登録すると、悪い事をしない限り身分は冒険者となり水魔法使いだからといって国に捕えられる事も無いので安心安全な選択肢といえた。

 問題は魔物と戦う事で死ぬリスクがあるくらいであるが、私が戦いなれるまではサポートに徹してくれと言われたので本当にメリコムさんに拾われて良かったと本気で思ってます。


「リフィン・グラシエルです、受けられる依頼が無くて困ってました、足手まといにはならないように頑張りますのでよろしくお願いします。」


 うわー、私より小さいよあの子…

 冒険者登録し基礎を教えられ数日後、初の依頼をパーティの皆で受けに行ったのだけど、噂になってる新人の冒険者さんが予想以上に小さく可愛くて本当に冒険者なのかと疑って様子を見ていたらFランクの印を付けている事に気が付いてしまった。

 冒険者になって日が浅いとか言ってたけど数日でFランクになるのは早過ぎるとアンリさんにこっそり教えて頂いた。 あんな子でもソロで実力あるなんて羨まし過ぎるよー! 魔法使いっぽい恰好してるけど魔物使い(テイマー)なんだよね? すごく気になります…

 とりあえず北の街道に出没するクリムゾンエイプを根絶やしにする依頼を受けたらしく、皆で早速向かうようですね。


「ルコはまずゴブリンを1人で倒せるようになってからだな…今日の狩りは危険だから大人しく見学しておくように」

「はい!」


 まぁ流石にゴブリン程度なら倒せそうな気もしますが、それよりも危険なクリムゾンエイプは見学するとしましょう!

 そう楽観視して街道を歩いていると1匹のはぐれゴブリンが現れた!


「はぐれか…ルコの練習相手にはもってこいの敵だな」

「大丈夫です! ゴブリンくらいならなんとか倒せると思いますから!」

「おう威勢がいいな、じゃあルコのデビュー戦だ! 頑張って倒してこい!」

「はい!」


 そうして私は勇ましくゴブリンに立ち向かうも見事惨敗して危険な所をリフィンさんのタヌキちゃんに助けられるのであった。

感想、評価おねがいします。

アクセス数見るの、クセになりますね・・・

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