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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
2章 進化する水魔法
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タイマン勝負

ゴブスレの世界にリフちゃんが行ったら、速攻でダブルピースだと思います。

「ゴブゥ…」

「………」


 リフィンは今、1体のゴブリンと対峙していた。

先程のコボルトと同様で奇襲はせずに普通に遭遇する形で正面から迎え撃つつもりだ。


『リフちゃん頑張って!』

『周辺には何も魔物らしき姿は無い、思いっきり戦えるぞ』

「うじゅるうじゅる」

『うん、ありがと』


 事前にタキルに”はぐれゴブリン”である事を確認してもらい、リフィンは1対1で戦ってみる事を選択したのだ。

 冒険者になってからまだ1人でゴブリンを倒した事がなかったので自分の実力を知る為には良い機会でもある。(最初の薬草採取の時もポコが偶然ゴブリンを倒してしまったのでそれもカウントしない。)


「………」

「………」


 お互いに視線を反らさずに対峙し合うリフィンとゴブリン、ゴブリンはリフィンの出方を待っているようにも見える。

 リフィンもゴブリンが逃げてくれるのであればそれで良いのだが、ゴブリンが棍棒を持って構えている事から逃げてくれる様な事はないであろうとなんとなく分かってしまう。 なので半歩ほど後退して距離を取ろうと後ろに下がると、リフィンが逃げると感じたのかゴブリンが襲いかかって来た。


「ゴブァアアア!!!」


 リフィンを怯ませる為に威嚇を含めた鳴き声をあげて走りながら棍棒を振りかざす。

 しかしリフィンは怯む事無く杖を前に振ってゴブリンの棍棒を払う。


「ゴブゥァァアア!!!」

「わっ!?」


 棍棒で攻撃を払われたところで追撃を止めるゴブリンでは無かった。 走って来た勢いと共にリフィンに肉薄し噛み付こうと口を開く。 寸でのところでリフィンは横に回避して距離と取ろうとするが、落とした棍棒に目もくれずゴブリンは再びリフィンに接近し襲いかかる。


「このぉ!」

「…ゴギャァアア!!」

「いやぁぁああ!?」


『リフちゃん!?』

『おいリフ!?』


 襲いかかるゴブリンにリフィンは杖を横に振るったが、ゴブリンは姿勢を低くして攻撃を躱したあとそのままリフィンに飛びかかった。 ゴブリンに飛びつかれたリフィンは体勢を崩して背中から倒れて押し倒されてしまう。

 流石に危険だと判断したタキルとポコはリフィンを救うべく駆けつけるが、『待って!』とリフィンから念話が飛んで来たのだ。


「ゴブゴブァゴブゴブァ!!」

「っく、このぉ!」


 ゴブリンにマウントポジションを取られ、爪でのひっかき攻撃やパンチを腕で防ぐリフィン、このままやられるだけだと思っていたタキル達だったが、リフィンは反撃の機会を待っていた。


「ゴブァアアア!」

「(ここ!)」


 リフィンが腕で攻撃を防いでくるのでその腕に噛み付こうとゴブリンが口を開けて近づこうとした時、リフィンの反撃である右フックがゴブリンの顔に命中する。

 たまらずよろけたゴブリンの隙をみてその場から脱出出来たリフィンであったが、両腕は傷や打撲の跡が残っていた。

 しかしそれでもリフィンは魔法を行使せずにゴブリンと戦うつもりだ。


『リフちゃん大丈夫!?』

『無事か!?』

『なんとかね…まだ手出しは無用だよ!』

『無理だったらすぐ言えよ!?』

『大丈夫、次で仕留めるから』

『がんばれー!』


 ゴブリンが起き上がりまたリフィンと対峙する。

ゴブリンは丸腰だがリフィンの手には杖がある、リフィンの勝機はここにあった。


「ゴブァアアア!!」


 また突進してくるゴブリンに、リフィンはあろう事か杖をゴブリンの方に高く放り投げると、杖に意識を持って行かれたゴブリンは杖をキャッチしようと上を見上げると次の瞬間__


 トストストスッ と、ゴブリンは自分の体に刺さる鋭利な刃物が数カ所突き刺さっているのを確認した。


『あ、手裏剣だ』

『初めて使った割には4つほど当たったな・・・あと全部外れてるけど』


 致命傷までは行かないものの、ゴブリンは手裏剣が刺さったところから痛みを感じておりそこから流れる血が目に映った。 それを抜こうと手裏剣に触ろうとしたときにはもう遅く、今度はリフィンが静かにゴブリンに肉薄しナイフをゴブリンの首元目掛けて一閃する。


「ギ…ゴ…ガァ…」

「…」

「ガ…………」


 やがて溢れ出る大量の出血も弱くなり、膝から崩れ落ちて沈黙したゴブリンはそのまま絶命した。

 かなり危ない命のやりとりだった。 力こそゴブリンの方が上だったが知恵と勇気で勝利をもぎ取ったリフィンはその場で座り込んでしまう。


『怖かったぁ…腕が痛いし』

『リフちゃんおつかれ!よーく頑張ったよ!』

『リフも丸腰だったら本当にヤバかったかもな…』

『うん、やばい…膝が震えてる』

『あれ、前ゴブリンなんて簡単とかなんとか言ってなかったっけ?』

『多分…ゴブリンを過小評価しすぎてたと思う、人間相手と戦う方がまだマシかも』

『まぁそれも学生の身じゃあ殺しにはかかって来ないだろ…』

『そうね』


 とりあえずリフィン達は杖と手裏剣を回収しゴブリンをアンマリードの所に持って行こうとすると近くの茂みからガサガサと物音が聞こえた。


『なんだろう…』

『さっき周辺見たけど、魔物は全然居なかったしなぁ』

『もしかしてアンマリードさんじゃないかな、ちょっとウチ見てくるよ』


 ポコがピョンと飛び出し草むらのほうに駆け出す。

 リフィン達はそのままの場所でポコからの念話を待っていると…


『うぎゃぁぁぁあああ!! 大久保さんがぁあああ!!!』

『まじかよ!?』


 大久保さん、そういえば前にポコとタキルが呼んでいた魔物は確か…


『えっと、オークだよね!?』

『せやで!』

『しかも2匹ぃぃい!!』


 ポコがこちらに逃げて来る、そして草むらからついに姿を現したのはゴブリンよりも大きく数多の女騎士の宿敵でもある全身緑色の憎い奴、危険度Dのオークが2匹、リフィン達の前に現れたのであった。

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