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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
2章 進化する水魔法
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奴隷オークション

 アルモニカの一角にある奴隷市場の方で大勢の人が入り乱れておりリフィンが近くまで寄ってみると、どうやら奴隷の所有権をめぐる競りが行われていた。


「100万モニー!」

「120万!」

「125万!」

「170万!」


 100万モニーもあれば庶民ならば余裕で1年暮らせる金額だ。 庶民の平均年収は50万モニー程度なので庶民感覚からすれば2年分の年収というかなりの金額で、高々に金額を叫ぶ声の主は余程のお金持ちだというのが遠くからでも理解出来る。

 奴隷にそのような金額が付けられるということは、どこかのやんごとなき身分だった者が奴隷落ちしたのかと興味を持ったリフィンは一目だけでも見ようと群がる野次馬の中を進んで行く。


「すみません、ちょっといいですか?」

「おう嬢ちゃん、あんたも野次馬か?」

「ですね、凄い金額が飛び交っているので覗きに来たんですけど…」


 タキルが上空から念話でリフィンに状況を説明してくれれば一番良かったのではあるが、何故かタキルからの連絡が途切れたのでポコを胸に抱いて野次馬の中を潜り込んでいくと、ようやく競りが行われている会場が見えて来た。


「話によれば水使いの女奴隷らしいぜ、出所は不明だが綺麗な容姿してるんで悪趣味な貴族連中が高値で競っているところだ!」

「そう…ですか」


 野次馬の男は「畜生俺も金さえ持ってれば」と呟いて、その他大勢の野次馬達と怒号を発していた。

 流石にリフィンも水使いの女奴隷がここまで価値のあるモノだとは知らなかった。 もし自分や姉が水使いの奴隷として売りに出されれば同じくらいの金額で売られてしまうと思うと途端に怖くなる。

 モノとして使われ自分の意志すらも支配される事を想像するだけで、身体が震えて鳥肌が立つ。


「もう少し詰めてくれよ!」

「っ!?」


 リフィンは恐怖で足が竦んでいると、後ろから野次馬に押され前のめりになってしまい前にいた女性の人とぶつかる。


「わっ、すみません…」

「気にしなさんな、これくらい」

「(ん? この人は…)」


 リフィンが前のめりになってぶつかった女性はリフィンよりも随分と背が高く、まるで受付嬢のエルザが少し麗しくなった感じの、がたいの良い女性だった。

 茶色で枝毛の多い短髪に、日焼けした褐色の肌、野性味溢れるゴツい顔、大きな胸というより筋肉が盛り上がっていて身体全体が引き締まっている。 そしてその女性はナイフや鉈、色々なポーチが複数ベルトにくっついていて、真夏日で暑いというのに丈夫そうな長袖長ズボンに、高そうなプレートアーマーやブーツを着用していた。 恐らく冒険者である。


「あたしの前に来な、そしたら見れるからよ」


 リフィンはその女性に首根っこを掴まれるとグルリと女性より前の方に移動させられ、ついに水使いの女奴隷の姿を確認する事が出来た。


「………」


 水使いの女奴隷は険しい顔をして金額を提示する悪趣味な貴族やお金持ちを鉄格子の箱の中から覗いていた。

 綺麗に整った容姿に黒いストレートの綺麗な髪が合わさって1つの芸術品とも思える美貌を持った水使いの女奴隷は顔をピクピクと引きつらせ顔を青くして涙目を浮かべていた。


「280!」

「285!」

「290!」

「ぬぅぅぅ…350万!」

「「「おぉぉぉ…!」」」


 どんどんと金額が跳ね上がって行き、1人の丸まると太った貴族風の男がローストビーフ片手に350万という大金を提示すると、他の貴族はそれ以上は出せないのかそれより高い金額を提示する事は無かった。


「あの豚か、あれでは豚に真珠になってしまうな」

「…き、聞こえたらマズいですよ!?」

「なぁに、あたしくらいに成ればそんなもん屁でもないさ」

「えぇ…」


 リフィンは後ろに居る女性に向いて顔を向けると、女性は腕を組んで誇らしげな笑みを見せる。

その恰好を見てエルザにどこか似ているとリフィンは空目する。


「350万! それ以上はもう居ないかぁ!? 350万! 350万ですぞぉ!」


 350万から上の金額を出す貴族連中はもう居ないのか、競りを進行させている司会はそろそろ競りを終わらせようとして、水使いの女奴隷が350万に決定するその瞬間

 リフィンの後ろに居る女性から、怒号のような消魂(けたたま)しい声が耳を蹂躙した。


「400!!!」


 一気に50万上がって400万という金額がリフィンの後ろに居る女性から提示された。

 その声に驚いた貴族や野次馬が反射的にリフィンを凝視する。

 実際にはリフィンの後ろの女性であるが、向けられる数々の視線に耐えきれなかったリフィンはその場でしゃがんでやり過ごす事にした。


「で、出たー400万! 流石にもうこれ以上は居ないか? 先程の350万の貴族様は……出ないかぁ!? …出ないぃぃいいい!!」


 そして、400万モニーから上の金額は提示される事はなく、水使いの女奴隷は400万という金額で女性に売られる事となった。


「じゃあちょっくら行ってくる、噂の新人冒険者さん」

「えっ!?…いってらっしゃいです」


 リフィンの肩にぽんと手を軽く置いてから、ゴツい女性は前に進んで行った。

 彼女はリフィンが何者であるのか既に知っていたらしく、リフィンの知らないところで噂になっているようであった。

 何がどう噂されているのかは不明だが、やはり同じ冒険者なのだろうと感じた。


「あれは、虹百合のメリコムじゃないか!?」

「虹百合のリーダーだ!」

「貴族を押さえて奴隷を購入とは末恐ろしい事しやがるぜ!」


 前を歩いて行くゴツい女性を見た周辺の者達から、次々と彼女の名前が呼ばれていく。


 虹百合のメリコム

 実際に見るのは今日が初めてだが、アルモニカの大衆浴場で得た情報通りの風貌をしていた。 虹百合という女性だけで組んでいるという冒険者パーティーだ。

 情報によると彼女の名前はメリコム・アバラオル、数少ない光属性を扱う冒険者で虹百合でリーダーをやっているという事だ。 凶暴と名高いラブリー・ブラッドベアを素手で仕留めた等、いくつかの武勇伝も聞いている。

 そして彼女、メリコムによって水使いの女奴隷が買われると野次馬は興味を失ったのかの様に散り散りに解散していく、リフィンはその場で突っ立って水使いの女奴隷がメリコムによって連れ去られて行くまで見ていると、後ろから聞き覚えのある声がリフィンを呼んだ。


「リフ、ここにいたのか…」

「グレン…?」


『リフー、グレンに捕まっちまったよー』

『うっわ、タキルだっさー』


 少し冷や汗をかいたグレンがタキルの足を掴んでいた。

グレンは暴れるタキルから足を離すと、タキルはリフィンの肩の上に飛び乗る。


「水使いの女奴隷が競りに出されていると聞いてな、なんだお前じゃなかったのか…」

「…うん」

「タキルがヒョロヒョロと1匹だけで飛んでるからお前に何かあったのかと思って捕まえてみたんだが…タキル、済まなかったな」

「ピョルルリ!」『許す!』

「…心配してくれたんだ、あのグレンがね」

「してねーよボケが…いつまでもバニーマンの事で引きずってるのかと思ってみたら今はケロっと調子を取り戻しやがって」

「グレン、私は無駄な殺生は極力控えることにする、降り掛かる脅威は排除するけど」

「いいんじゃないか? 俺もそれくらいで割り切って仕事してるしよ」

「…そう」


『いやこいつマジでリフの事心配してたぜ?』

『…』

『案外良い奴なんだねーグレンは』


 グレンは水使いの女奴隷がメリコムに連れ去られて行く現場を見るとリフィンに聞いて来た。


「メリコムと面識があったのか?」

「…さっき初めて会っただけ、虹百合の事は少し知ってる程度」

「そうか、あの光ゴリラはお前を勧誘するもんだと思ってたんだがな…そういえばお前はまだ他の奴等に水使いって事を明かしてなかったんだな」

「…教えたのはグレンだけ」

「そうか…ならいい」


 何がいいのかさっぱりだが、どうやらグレンはリフィンが虹百合に勧誘されるのではと思っていた。という事がわかった。

 なぜ新人の冒険者を勧誘するのか疑問に思ったリフィンは、グレンに聞いてみる事にした。

●メリコム・アバラオル

Cランク冒険者パーティ「虹百合」のリーダー、茶色のショートヘアより濃い褐色の肌、筋肉モリモリマッチョウーマン、回復魔法が得意だが基本的に前衛、個人冒険者ランクはA


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