気持ちの整理と、ガラク再び
んまぁた性懲りも無くクソジジイ出しやがって!
アルモニカに帰って来て3日経った。
『リフちゃん元気無いね…』
『あぁ、バニーマンを素手で仕留めた時からだな』
『うーん』
あれからグレンがバニーマンの巣に殴り込み3体程バニーマンを仕留め帰って来て、そこで一晩過ごし翌日は慎重に解体作業、次の日の夕方にアルモニカに帰って来たのであった。
11体分のバニーマンの毛皮は全て白銀で綺麗な状態のままギルドに提出した。 エルザはかなり心配していた様子でリフィンを観察していて、大した怪我も無かったと伝えても様子を疑うような目で見られたリフィン。
エルザからFランク昇格の試験を受けないかと訊ねられたが、「疲れているから」と後日にお願いした。
もう3日も宿屋<あけぼの亭>のベッドの上でゴロゴロと時間を潰しているのであった。
結局グレンには何も伝えられないままギルドで別れ、頭の中でグルグルと思考が回りつづけていた。
『リフ、今日もお休みか?』
『…うん』
『明日はギルドに行くんだろ?』
『…うん』
『今日は野菜炒めにしようぜ?』
『…うん』
『生理が辛いのか?』
『…うん』
『だめだこりゃ』
『タキル最低』
この様子である。
明らかに元気が無い、何かを抱え込んでいるのが伺えたタキルとポコは原因が分からない以上リフィンの調子が戻るまで待っておくつもりで居たのだが、いつまでもウジウジとしている姿に飽きたのか、どうやって話を聞き出そうか画策していた。
「うじゅるうじゅる・・・」
言葉を交わせないライですらリフィンの元気が無いのを感じたのか、リフィンの傍に這いよって必死に震えていて、それを見たリフィンはライを掴んで抱き枕を扱うかのように胸に抱き寄せ、ベッドの上で丸くなる
『グレンに何か言われたのかな?』
『いや、何かされたのかも知れんぞ?』
『されたって何を?』
『そりゃあリフは可愛いからな…セクハラとか』
『ちょっとグレンぶっ飛ばしてくる!』
『…待ってポコ、グレンに何かされた訳じゃないから』
タキルの冗談を割と本気にしたポコが飛び出そうとしたところで、誤解が深くなる前にリフィンはポコを止める。
『じゃあ何か言われたんだな?』
『………』
『沈黙は肯定ととるぞ?』
『………』
『ポコ、ここで問題です、グレンがリフィンに何かを言ってリフィンは何かを考え込んでいる、グレンは何を言いましたか?』
『えぇっと…なんで武器が杖なんだよって言われたから、別の武器は何がいいかなって考え込んでるから?』
『それはオレも思ってた疑問の1つだが、元気を無くす程のものか?』
『じゃあ違うか、うーん…結婚してくれって言われたとか』
『中々良い解答だが、リフが恥じらうような素振りを見せたか?』
『うーん…じゃあ単純なのになるけど、冒険者向いてないとか言われたから?』
『………』
『…俺もそうだとは思ってたんだが反応薄いから違うな、あとは絞られてくるけど、俺達の事を言われたとかじゃないか?』
『どういう事?』
『俺達も他の冒険者から見ればただの動物だからな、ポコを喰ったら美味そうって言われたんじゃないか?』
『あー分かった、それで反論しちゃったらバニーマンなら良いのかって言われたんだ!』
『っ!』
『おっ当たりだな、リフは分かりやすくて助かる』
少し違うところもあるが、大体タキルとポコに言われた通りなので観念してベッドから起き上がったリフィンは、本当の事を声に出して話す事にした。
『あのね…今回の依頼、バニーマン側からしたら私達がした事はただの虐殺って事なの』
『そりゃそうだろうな、そんなのがやって来たら逃げるか抵抗するしかないだろう』
『たしかに…』
『依頼とはいえ、平和に暮らしてたバニーマン達に悪い事をしてしまった』
『リフちゃん…』
『そんな甘い考え方なら、冒険者向いてないぞ』
『ちょっ!?』
『…グレンにも同じ事言われた、私もそうだと思ってる、でも私は冒険者になってやる事があるの!』
『水魔法使い達を助ける事だろ? なら今はそれでいいじゃないか、リフは強くなる為、生活をする為に依頼を受けた、バニーマンは身勝手な人間のせいで犠牲になった…それだけの事だ』
『…でも』
『リフちゃん、いただきますって言ってたから知ってるよね、食事前にする儀式』
『…食べ物やそれに関わった者に感謝をする言葉だよね、黒の大賢者様が広めた話だから知ってる』
『うん、古くから伝わる日本の習慣だよ、食べ物に感謝もそうだけど、命を供養するために手を合わせてお祈りするんだ』
『これから冒険者として避けては通れぬ道だ、常にその心で望め』
『…そうだよね』
『あんまりそういう事が苦手だったら、極力無駄な殺生は控えた方がいいかもね、討伐依頼のモンスター以外は狩らないとか、護身の為仕方無く狩るとか、追い返すみたいな感じでいいと思うよ』
『そうだな…リフが殺すのを楽しく感じるようなヤバい奴になったらオレ達は速攻で食材だぜ』
『さっきからタキルは下品過ぎ!』
「…分かった、無意味な討伐依頼は今後受けないようにする」
『それだと食っていけなくなるからな?』
「…出来る限りは」
タキルとポコに話せて正解だったとリフィンは思った。
1人で抱え込んでいた時よりずっと気分が楽になる、今回のバニーマン討伐はリフィンが強くなる為、依頼をこなしてお金を貰って生きて行く為に必要な事だったのだ。
ゴブリンやインプ、オークも倒して来たが彼らにだって言える事なのだ、倒さなければ殺されてしまう。 野放しにしておけば他の人間が被害を受けるのだ、彼らをある程度まで間引いてアルモニカの民を守る、その為の冒険者なのだ。
しばらくして少し気持ちの整理が落ち着いたリフィンは、立ち上がって外出の支度をする。 何事かとタキル達はリフィンに伺ってみると、リフィンは元気を取り戻したよと笑顔で答えた。
「買い物に行くよ!」
● ● ● ● ●
アルモニカの商店街、リフィンとそのすぐ隣を歩くポコ、タキルは相変わらずリフィンの肩に乗っかっていて、ライは宿でお留守番だ。
あまり服の予備を持っていないリフィンはまず洋服店に向かい、安物の黒い普段着とローブをサイズだけ測って数枚購入する。
女性の買い物は長くなると予想していたタキルであったが、どうせボロボロになるからと、リフィンはそう言ってせっせと買い物を済ませて行った。
『まぁ破れたり汚れたりするからねぇ』
『オレとしては着飾ったリフを見てみたいんだが』
『このあいだ見たでしょ』
『もっとこう、ゴージャスな感じのやつをだな…』
『それまで生き延びれてたらね』
『鳥の寿命って何年だ?』
『さぁ? まぁウチは土魔法を習得したし、タキルよりかは生存率上がったけどね』
『は!? 今なんて言ったよ!?』
『土魔法覚えましたー! タキル程度ならいつでも倒せる自身あるよ?』
『嘘だろおい!?』
タキルがポコを見つめる姿は驚愕と恐怖でプルプルと震えていた。 リフィンもそういえばと念話でタキル達の会話に参加する。
『あの時はポコがバニーマンから私を守ってくれたんだよね、ありがとポコ』
『いえいえどういたしまして、もっと魔法を使えるようになりたいんだけど、どうやって修行しようか悩んでるんだよねー』
『あ、じゃあ私が過去に書いた土魔法の論文の内容を教えるからあとでね』
『やったー! リフちゃんありがとー!』
『…なんかもうポコにめっちゃ差をつけられた感があってヤバい』
『ふっふーん、働かざるもの食うべからずだよタキル?』
『て、偵察くらい出来るし!』
『今して無いじゃん、早く周辺見てきなよ』
『畜生覚えてろよー!!』
捨て台詞を吐きながらリフィンの肩から飛び立つタキル、そのまま上空を飛び回って平和な街中を眺めるも、コレといった危険そうな人や物は見当たらないのでポコにしてやられたと思ったが、
『まぁいいか』
平和なところにも危険はどこかしらに潜んでいるのでじっくりと街並を偵察するタキルであった。
『ポコ、ガラクさんのお店に行こうか』
『らじゃ! 何か用事でも?』
『また大賢者様の本があればって思ってね』
『なるほど、またあのおじいちゃんにも会ってみたかったんだよねー』
リフィンは上空にいるタキルに念話を飛ばして、ガラクの店に案内してもらった。
再び訪れた<ガラクの店>は前回よりゴミのようなものが増えていて、入り口が少し狭くなっていたがなんとか店内に入る事に成功する。
店内は相変わらずごちゃごちゃとした品揃えで床にまで散乱しているので足場に困っていると、奥の方から前回と同様に首と腰が直角に曲がっているガラクが杖を持って姿を現した。
「んまぁ!この間のえれぇ別嬪さんやないか、わしに惚れ込んだのかいのぉほほほ」
「何もないので帰りますね」
「んまぁちょっと待ってくれやお嬢さんや、わしは話し相手がおらんで寂しくてのぉ…元気なピチピチの若ぇ娘が傍に居てくれるだけで興奮が収まらなくてアソコも若返ってくる気がするのでのぉ」
「…さようならおじいさん」
「ん待ぁって!実は掘り出し物があるからそれを見てもらいたいんじゃあ!!」
いきなりセクハラ発言をされ、回れ右して出口に向かおうとすると、ガラクは掘り出し物を見て欲しいと懇願した。
前回は大賢者の本があったのでそれに並ぶ貴重な物があると思ったリフィンは、ガラクが持ち出した物を見る事にした。
「これじゃよ、中々面白い武器じゃろ? 床下を掃除してたら見つけた代物じゃ」
床下掃除する前に店全体を掃除してくれとは思ったが口には出さずに我慢した。
ガラクが取り出したのは黒い小さな箱でその中には黒い金属製の投擲武器があった。
四方に鋭い切っ先があり、真ん中には穴があけられている。
見た目とは裏腹に中々重量感のあるそれはリフィンは見た事なかったが、タキルとポコはリフィンに念話で説明した。
『手裏剣だ』
『四方手裏剣だな…』
『なにそれ?』
『俺達が居た国の武器で回転するように投げると手裏剣の刃が木にブッ刺さるくらいの武器だ。 殺傷能力は低いが、敵の戦闘力を減退させる為に使用される』
『忍者が使う武器だよね!』
『私が投げても当たるかどうか…』
『どんな武器でも練習あるのみだろ、結構良い掘り出し物かもしれないぜ?』
『…うーん、微妙な』
『そういえばリフちゃんの先祖のシエロさんが忍者だったよね! その人の物かも知れないよ!』
『じゃあ買う』
ポコが言った先祖が使ったかもしれない武器だと思ったリフィンは購入を決意する。 忍者の武器には少し興味もあったし、何しろご先祖様が使ったかもしれない武器なのだ、シエロという人がどのように使ったのかも知りたくなった。
「その武器少し下さい、おいくらですか?」
「んまぁ全部持って行けや、あっても使わんし邪魔やけぇ銅貨10枚でえぇでぇ!」
少し安い程度、前回は大賢者の本が銭貨3枚で、今回の手裏剣は銅貨10枚だ。
一般のショートソードでも銀貨で売買されるのにそれよりも安いのだ。
手裏剣は全部で10枚あり、杖と水魔法だけに頼らない攻撃手段がリフィンに備わった。
「ありがとうございました、大切に使います」
「あいよ、んまぁたけぇよ!」
ガラクにお礼を言って店を出ると時刻は夕方になっており夕日が正面にきていてとても眩しく、ガラクの店がほどんど明かりが無く明暗の差に急に目が痛くなったので腕で夕日の光をつい遮ったリフィン。
宿に帰ろうと足を進めると、何やら周囲がガヤガヤと騒いでいて人だかりが集まっていた。
『ちょっと様子をみてみたいけど、かなり人が居る』
『ちょっとオレ見て来るわ』
『お願い』
リフィンは少し様子を見ようと近くまで寄って見る事にした。
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