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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
2章 進化する水魔法
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土魔法

『うわぁぁぁあああん!』


 襲ってくるバニーマンの群れから必死になって逃げるポコは何度も心の中で叫び続けていた。

 足はポコの方が速いのではあるがこれまでの疲労が蓄積していたのか思うように動かず、いくら走ってもバニーマンとの距離が広がる事は無かった。


『タキルだけは絶対に後で許さないからねぇ!!』


 バニーマンの群れが追いかけて来ると瞬く間に飛んで逃げたタキルを少し恨んだ。

 少しは援護してくれても良かったのにと思ったポコだが、タキルだけで多数のバニーマンを妨害出来るとは到底出来もしないので、真っ先にリフィンに伝えに言ってくれた事は正解だと頭では理解出来るが納得成らなかった。 そして必死で逃げまとう中、ポコは1つの不安を覚えた。


 このままリフィンの所までバニーマンを誘導していいのか、と


 いくらリフィンが魔法を使えようと、すぐ傍にグレンが居ようと、この大量に襲ってくるバニーマンと同時に対峙するのは危険だと頭の中で警鐘(けいしょう)が鳴る。

 バニーマンを数匹倒したとはいえ1体づつ誘き出して罠にかけて無力化していたため、バニーマンの実力がはっきりと分からないのだ。 


『インプの時はリフちゃんに狙いが集中してたし、溝に落とせば流れて行ったから乗り切る事が出来たんだけど』


 インプの時とは違い今回は数が多く、広い地形に障害物が多く、仲間も居ないので取り囲まれる可能性がある。 そしてポコにとってここは初めて入った渓流で、バニーマン達にとっては庭も同然なので地の利でも不利であった。

 しかしそれでもこのまま大量のバニーマンをリフィンのところまで持って行くのは許せない行為だった。

つい先日『リフちゃんを守る騎士になるの!』と豪語(ごうご)したばかりで、堂々と宣言したのに飼い主を危険に晒すような事をするのはペット失格だと無理矢理言い聞かせて、ポコは1つの決断をする。


『一度リフちゃんに拾われた命、恩を仇で返すより一矢報いる方を選ぶ! …リフちゃんはウチが守るんだからね! かかってこいバニーマンどもぉ!』


 ポコは逃げながらもおよそ30体ものバニーマン達と戦う事を決めた。




● ● ● ● ●




 ポコと別れ、電光石火のスピードでリフィンの居るところまでたどり着いたタキルは、大量のバニーマンがポコを襲っていると罠を仕掛けて待っていたリフィンに伝えた。


『嘘っ!?』

『マジだって! 今ポコがここまで誘導しているから迎撃の準備を』

『ポコが危ないっ!』

『おいちょっと、リフ!?』


 リフィンはポコが襲われていると聞くと渓流の中へと走っていった。 『まずはグレンに伝えるのが先だろ…』とタキルは木の上で待機していたグレンの方に飛び寄る。


「ピョルルル!」『おいグレン早くリフを追いかけろ!』

「タキル、今リフが走って行ったんだが何か…緊急事態ってやつか?」

「ピョロルル!」『そうだよ!』

「ちまちまと罠にかけるだけで正直暴れ足りなかったからな、何があったかは知らねぇが暴れて良いんなら暴れるぜ?」

「ピョルリリ!」『よし、暴れさせてやるから着いて来い!』


 タキルはグレンを先導しながら、ポコが居ると思われるところまで案内した。




● ● ● ● ●




『まずは1体目!』


「バニィィイ!?」


 ポコを追いかけているバニーマンの群れから1体だけ突出したバニーマンの顔に、砂や土を後ろ足で蹴ってぶちまける。

 見事バニーマンの顔面に命中して視界を奪うと、ポコはすかさず身を(ひるがえ)してバニーマンの頭部に飛び乗りバニーマンの耳を掴んで大きく息を吸い込んだ。


「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおん!!!」

「バニガァァ!?」


 ウサギというのは大きな音に敏感で不快な音にストレスを感じる生き物だ、人間でも耳元で大きな音を出されたら体が震えて耳を抑えるであろう。 下手すれば耳が聞こえなくなる程に。

 ポコの反撃を食らったバニーマンは死んではいないであろうが白目向いてその場で倒れ伏してしまった。


『覚悟決めたもんね…ウチはやるぞぉ!』


 追ってくるバニーマンの群れは距離を詰めてポコを捕らえられるような位置にまで近づいていたが、バニーマン達の足下をかいくぐる様に低い位置で群れのド真ん中を突っ走った。

 二足歩行のバニーマンは急に足下を走るポコには対処出来ずに立ち止まると、後ろから走って来たバニーマン達が前で止まったバニーマンにぶつかってほどんどのバニーマンが体勢を崩した。


『すなかけを食らえ!』


「バニァァァ!?」

「バーニィ!?」

「アバババッ!?」


 倒れこんだバニーマン達にすなかけをお見舞いし、また走って距離をとるポコは次なる策を考えると同時に不思議な感覚を覚えていた。


『怖かったーっ! 足にぶつかって止まったら終わりだったけど、あのまま向こうに逃げてたら最高速出す前に捕まってたよね…でもさっきのすなかけ、あんまり蹴った覚えがないんだけど量が多くなかった?』


 ポコだけでバニーマン達を相手するのは無謀だった…先程までは


 自分でも蛮勇(ばんゆう)だと思う程に後先を考えない行動をしていたせいか、アドレナリンが作動し力が溢れるような不思議な感覚…とは別の力をポコは感じた。

 疲労や恐怖はずっと感じている、しかし今はそれ以上のモノを感じたのだ。

 闘争か逃走か、ポコは前者を選び襲ってくる敵から身を守るためタヌキという弱い個体でも、内に秘めた生存本能を引き出したのだ。

 ポコは体内を駆け巡る謎のエネルギーを感じ取っていて、体内を何かが(うごめ)く違和感にポコは不思議な笑みを浮かべた。


『もしリフちゃんみたいに魔法が使えるならば・・・』


 ただのタヌキが魔法を覚える訳が無い、いままで生きて来た人生でも魔法なんてありもしなかった。


 だがここはタヌキに転生した不思議な世界、リフィンだってグレンだって魔法を使ってる。


 もしこのペット(ポコ)が魔法を使えるのであれば、飼い主(リフィン)をこれからも守っていけるであろうか。


 答えは分からない、しかし飼い主(リフちゃん)を守れるのであれば・・・ウチはなんだってやってやる!!


「「「バァァァニィィィ!!!」」」


 ポコの背後からポコを捕らえようと数匹のバニーマンが飛びかかった。

 するとポコは身を翻してそれを辛うじて躱す事に成功したが、胸の辺りが熱くなっていて『今度は何!?』とバニーマン対峙しているどころではなかった。


 胸の辺りの熱が収まる事が無いまま追ってくるバニーマン達から必死で逃げ続け、たどり着いた場所は最初にポコ達がバニーマンを見つけた渓流の川だった。

 そこには見知った守るべき主が不安げな顔できょろきょろと周囲を見渡していた。


『あれ、リフちゃん!?』

『っ!?』


 渓流の川にはリフィンが居た、何故このようなところに1人で居るのかは分からなかったがポコの背後にはバニーマンが迫って来ていた。

 リフィンに危害が及ばぬように前衛としてバニーマンの前に立ちはだかるポコ、もう後ろに逃げたりは出来ない。



『ポコ! 無事だったのね!』

『ごめんねリフちゃん、いっぱいバニーマン連れて来ちゃった…』

『大丈夫、ポコが元気でいてくれたら私も頑張れるから!』

『ありがとリフちゃん!』


 バニーマンの群れはリフィンを警戒したのか、取り囲むように円状に隊列を形成した。

ポコが息を整えていると四方八方をバニーマンで囲まれるがポコのするべき事はただ1つ、リフィンを守り抜く事だ。


『…囲まれたね』

『リフちゃんは絶対ウチが守るから!』

『…もうボロボロじゃない』


 ポコはそう言われて自分の前足や水面に映る顔や身体を見る。

 傷ついたり、汚れていたりしていたが、痛みは全然感じられずむしろリフィンを守るという使命感で溢れ、血が沸騰し興奮が収まらず力が涌いてくる程だった。

 いまだ胸の辺りの熱は収まらず、体内を駆け巡る謎のエネルギーは溢れんばかりにまで胎動していた。


『大丈夫リフちゃん、今のウチはめっちゃ強いんだから!』

『…私もポコを守るよ!』


「「「「バァ~~~ニィィィィ!!」」」」


 バニーマン達は雄叫びをあげながら一斉にリフィンとポコに襲いかかる、ポコは待ってましたと右腕を上げて勢い良く地面に叩き付けた。


 その時リフィンはポコの胸の辺りが輝いているのが一瞬だけ見える。


石の壁(ストーンウォール)!』

『っ!?』


「バニガァッ!?」

「バニバニィ!?」

「バブィ!?」

「バビブベェ!?」


 ポコが土魔法を放った。

 リフィンとポコを中心に周囲の地面から石の壁が生み出され、下から壁が伸びて来たように石の壁が立ち塞がった。

飛んで来たバニーマン達はポコが魔法で生み出した石の壁に頭からぶつかって失神する。


『やったぁ! 想像力だけで出来ちゃった!』

『凄い…』


 それでも失神しなかったバニーマン達はまだ居たが、魔法を目の当たりにして狼狽したバニーマン達にポコは土魔法を披露する。


『次はコレだよ! 石壁瓦解破(ストーンバースト)!』


 ポコが次に放った魔法は、石の壁(ストーンウォール)で生成した石の壁を外側に居るバニーマン達目掛けて爆散させた。

 リフィンは周囲を確認しようともモクモクと立ち上がる砂煙でバニーマン達が見えなかったが、次々とバニーマン達の悲鳴が聞こえてきたのでかなりのダメージを与えたのだと認識した。


 やがて砂煙が収まり、バニーマン達の生死が分からなかったが動く気配がなかったのでリフィンはポコに賞賛を送った。


『凄いポコ! バニーマン全部倒してるよ! いつの間に土魔法が使えるようになったの!?』

『うーん、分かんないや…でもリフちゃんを無事に守れて良かっ___』


 その場でぐったりと倒れるポコ、既に疲労は限界に達していてリフィンを守れたと安堵して緊張の糸が切れたのか、気を失ってしまった。


『ありがとポコ、ごめんね…』


 リフィンは傷だらけのポコを抱きかかえてギュッと抱きしめた。

 バニーマンは良くてポコは駄目、グレンに言われてそう答えたリフィンは、それは間違いではないと確信した。

 綺麗ごとばかり並べているだけではこの先冒険者なんてやっていけない、危険を承知で冒険者になって、タキルやポコを連れてきた時からもうこの子達とは切っても切れない縁が出来たのだ。


 冒険者は基本的に自由だ、我が侭を言っても、自己中心的でも、私利私欲の為に動いても他の人に迷惑が及ばないのであれば許されるのだ。

 私のこれからを、グレンに伝えよう


「…戻ろう」


 リフィンがグレン達の居る巨木の所に帰ろうと足を進めた時だった。


「バァァァアアア~~~ニィィィイイイ!!!!」


 まだ生き残っていた1体の白銀に輝く大きなバニーマンが雄叫びをあげてリフィンに襲いかかった。

グレン「一暴れ・・・」



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