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(水)魔法使いなんですけど  作者: ふーさん
2章 進化する水魔法
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負けウサギ

 渓流にある川付近で数匹のバニーマンを見つけたタキルは、ポコを呼び戻してバニーマンが居る場所まで案内していた。 


『とりあえず1匹だけ誘き寄せれるかどうかだな、2匹ならなんとかなるかも知れんが3匹以上だとグレンやリフでも対処が難しいと思うし』

『だね…あとはウチの足の方が速ければ良いんだけども』

『ヤバそうならオレが援護する、オークの時はすまなかったな』

『今後気をつけてくれるなら許してあげる』

『わかった、善処する』


 木々が連なる獣道をしばらく歩くと渓流の(ひら)けた場所に到着した。 そこには浅くて緩やかな川があり10メートルくらい幅があって大きい、所々大きな石や岩が川に点在していて人でも川を渡れるような作りになっている。

 その付近では白銀の毛を持った可愛らしいバニーマンが数匹居て、周辺を警戒しているのか辺りを見回すバニーマンや、川の水で体を洗っているバニーマン、日向(ひなた)でゴロっと寝転んでくつろいでいるバニーマンが見られた。

 タキルとポコはまず一番近くにいる、ひなたぼっこをしているバニーマンと接触を(こころ)みてみる。


『ポコ、あの寝転んでいるバニーマンにちょっと小石を蹴ってみて、バニーマンが気が付いたら人参咥えて少し近づいてみよう』

『わかった、援護お願い』

『任せておけ』


 タキルは寝転んでいるバニーマンが見える場所にある木の枝に飛ぶ、そこからバニーマンとポコを観察してポコに指示を飛ばす。

 ポコは指示があったところから小石を前足で蹴り飛ばすと、飛んで行った小石は寝ているバニーマンの後頭部にコツンとぶつける事に成功した。



「バ〜ゥ?」



 小石をぶつけられたバニーマンは振り返り、何者(なにもの)が小石をぶつけたのか確認しようと小石が飛んできた方向を見ると、目の前には美味しそうなタヌキが好物の人参を咥えていた。 まさに鴨葱である。

 バニーマンの姿を目撃すると一目散に逃げて行くタヌキ、丁度お腹を空かせていたバニーマンは獲物を逃がす訳にはいくまいと逃げるタヌキを追った。


『よし、1匹ヒットしたよー!』

『ナイスだポコ! 他のバニーマンは気づいていないぞ!』

『足はウチの方が速いみたい、あんまり距離が開き過ぎないようにしながら、このままリフちゃんのところまでご案内〜♪』

『頼んだぞポコ、オレは先行してリフに伝えてくる』

『らじゃ!』




● ● ● ● ●




 その頃、タキル達を待っているだけでは暇なのでリフィンはグレンにゲームを持ちかけたのだが、あっさりと勝負に破れてグレンの目の前で四つん這いになりがっくりしているリフィンがいた。


「リフの負けだ、動きを見切った俺には勝てん」

「先に当てれると思ったのに…」

「ズル賢くて強い奴が勝つに決まってるだろ…じゃあ人参持って10回ぴょんぴょん跳ねろ」

「…ぐぬぬ」


 巨木付近で人参を両手にぴょんぴょんとウサギの様に跳ねるリフィン。

顔を真っ赤にして頭の上にウサギの耳を模したニンジンを両手で持ち、その場でぴょんぴょんと跳ねる姿は愛くるしい小動物が如く可愛らしいものであった。


「くははっ、リフのウサギ跳びを初めて見たが中々似合っているじゃないか」

「…ぐぬぬ、こんな筈では」


 リフィンは相手の攻撃を躱す事に関しては学生時代からズバ抜けていて、戦闘力は無いに等しいが実はその回避力も相まってトーナメントのベスト8になった程なのだ。

 ただ待つだけでは無駄に時間を食ってしまう為、リフィンはグレンに”腕試しをやって負けたら罰ゲーム、人参持ってウサギ跳び10回”というゲームを持ちかけたのだ。


 腕試しの内容は、お互いに使用する武器はその辺に落ちている30センチ程度の木の枝で、先に木の枝を相手の体のどこでもいいから3回当てたら勝ち、というものだった。

 これはリフィン達が学生時代の時に流行った<負けウサギ>という腕試し(ゲーム)で、罰ゲームの内容もそのままなのだ。

 剣を振るう事自体あまりない魔法学部のリフィンでもよくやった腕試し(ゲーム)だったのだが、実戦学部にいたグレンがこのゲームをやっている所をリフィンは見た事が無かったので、一度グレンがウサギ跳びをしている所を見てみたくなったのと、グレンは経験が無いから有利にやれると思ったリフィンだったのだが、グレンの実力を甘く見ていたのか見事にストレートで敗北してしまう。

 屈辱のウサギ跳びを終えたリフィンに、いつの間にかタキルが飛んで帰ってきていたのか念話が送られる。


『なにやってんだ?』

『っ! …なんでもないから』

『…そうか、ポコが1匹のバニーマンを連れてきているから迎撃よろしくな!』

『あ、うん』


 バニーマンがやってきている、とグレンに伝えリフィンは人参片手にバニーマンを迎撃する準備をする。 グレンもササっと木の枝の上に身を隠しいつでも上から奇襲出来るように待ち構えていると、ポコが1匹のバニーマンを連れて走ってきた。


「バァ〜〜〜ニィィィィ!!」


『リフちゃん連れてきたよー!』

『ポコ、あとは任せて!』

『任せたぁ!』


「バニィ!? ババババァ〜〜〜ニィィィィ!!」


 ポコが地面に()めている水の入った鍋を飛び越えてリフィンの元に逃げ込むと、それを追ってきたバニーマンは目の前に居るリフィンを見て女性だと認識したのかまた一段と興奮してリフィンに迫ったのだが


「せやぁ!」

「バニィ!? バニアブアボボバボバッ!?」

冷却(フリーズ)!」


 先程のオーク同様、グレンは上からバニーマンを襲撃して頭部を掴んで水の入った鍋に突っ込むと、リフィンがその水を凍らせて窒息させる。

オークに比べればバニーマンはかなり弱くて体格も小さい、それでもリフィンより少し大きい程度なので油断は禁物だ。 しばらくすると窒息して呼吸が出来なくなったのか動きが完全に止まり、バニーマンを傷つけずに討伐する事に成功した。


『やったぁ! バニーマン討伐完了!』

『ありがとタキル、ポコ!』

『いえいえどういたしまして!』

『んじゃ、次のバニーマンをおびき出してくるとするか』

『らじゃ!』


 そしてまたタキルとポコは次のバニーマンをおびき出す為に渓流の奥に向かって行くと、グレンがリフィンに話しかけてきた。


「このバニーマンは駄目だ、外見からでは分からない所ではあるがかなりピンク色をしてやがる…全部真っ白い奴を狙うように言っておけよ?」

「…あっ」


 タキルとポコにその事を伝えようと思ったリフィンだったが、既にタキルとポコは念話が聞こえない程にまで遠くに行ってしまったのか帰っては来なかった。 案の定またタキル達が連れてきたバニーマンは、やはり体の一部が薄いピンク色をしていたので真っ白いバニーマンをお願いとタキル達に頼むリフィンであった。

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