8月6日:ダイチ・アカツキ
また少し間が空いてしまったかな。
今回は別に遠出という訳ではなかったのだけれど、α地区からの我儘に対応していたら、日記を書く暇が取れなかった。まあ、僕にしてはマメに書いている、ということで。
α地区の人達には困ったものだ。
今更(本当に今更、だよ!)権力もお金も、何の意味も無いって言うのにね。全く。
……本当だったらα地区への食糧供給分の3割を、γ地区へ回すべきなんだ。人口配分も食料配分も間違ってる。
今必要なのは協力だし、忍耐だ。α地区の人達がしている忍耐なんて、β、γの人達の忍耐の、何十分の一か!
この資源の少ない状況で我儘言ったって何になるっていうんだ?どうしてα地区の人達は、地下に来てまで、ああなんだ?
ああ、本当に、前チハラが言っていた通り、α地区から資源を盗んでくるのが全人類の為だと僕も思うよ!
……悔しいね。
何のために研究をしているのか、分からなくなる。
……少し、考えてみたのだけれど。僕の研究は、何のためかな、ってね。
その時、真っ先に思いついたのが、空だったんだ。
それから、空の下の草っ原で、チハラやアカシヤ、フナダもフジもリュンヌさんもパイソンさんも、イヌカイさんもブラン氏も……ああ、書くのが面倒になってきた。
とにかく、研究チームの皆で、空の下の草っ原で、ばか騒ぎがしたいな、って思ったのさ。
勿論、その時はセーラも一緒だ。
セーラに花冠の編み方を教えてあげよう。それから、一緒に楓やタンポポの種を飛ばして遊ぼう。
オオバコで相撲もいいな。ああ、やりたいことが山のようにあるよ!
うん。そうだね。やっぱり、僕の研究はα地区の大馬鹿共の為にあるんじゃない。
僕は僕の大好きな皆のために、研究を続けよう。
いつか、この地下都市から、皆が出られるように。
これはいわゆる、『決意表明』ってやつになるのかな。書いてみたら中々いい具合だ。
『やる気が湧く』っていうか。うん。とにかく、建設的な事を考えたくなってきた。
近々また遠出してくるつもりだけれど、その時のために作業用ロボットをもう数台作りたいね。
その為の資材は……今度、本当にチハラと一緒にα地区から盗んでこようかな。へっへっへ。
……まあ、現実的に考えれば、またリュンヌさんとパイソンさんに頼んで一緒にα地区に行って、ブラウン氏に壊れた機械や資源を譲ってもらうのがいいかな……。
その時にチハラも一緒に連れていったら、もう少しちょろまかせるかな。
うん、少し前向きになってきたよ。
やっぱり、日記をはじめてみてよかった。