7月7日:ダイチ・アカツキ
えーと、初めまして。僕はダイチ・アカツキ。うん、日記を書くのは実に、299年ぶりになるわけかな?
……とはいっても、僕が前回日記を書いたダイチ・アカツキと同じかって言われると、微妙なんだけどね。
なんてったって、一回バラバラになったダイチ・アカツキをセーラが直して、ダイチ・アカツキのメモリぶち込んで起動してくれたのが僕だから……記憶はあるんだけど、AEがまるっきり同じか、って言われると微妙かな。
まあ、それは人間も同じかもね。セーラなんて、僕のメモリの最後の記録では13歳だったのに、今23歳になってるし。すっかりお姉さんだよ。びっくりしたよ。ほんとにびっくりしたよ。うん、間違いなく、僕よりもセーラの方が変わってる。よって、僕の変化は誤差の範囲。オーケイ。
とりあえず、報告。
今日はひたすら、セーラに罵られて罵られて、言葉の暴力を浴びせられまくった挙句、泣かれた。
でも、セーラは流石だね!僕に文句言いまくる間も、TTB-UCに入ってる赤ちゃんたちのお世話は欠かさないんだ!いやあ、すごいよ!
……もしかしたら、ほら、胎教とかってあるじゃない?ああいう関係で、文句言いながら赤ちゃんの世話するのってよくないのかもしれないけどね。でもまあ、いいよね。良いことにしよう。うん。最終的にはセーラ、ずっと泣き笑いだったし、セーラに文句言われてる間も僕はずっと笑い転げてたから中和できただろうし、多分これでオッケー。
それから、地上も見てきた。
凄いね。僕自身も、途中でぶっ壊れちゃったから、地上が完全復活した状態は見てなかったんだよ。
全自動化した施設も全部もう止まってて、静かだったよ。生身の人間が普通に外に出られるようになってた。うん、本当に、ずっと頑張ってた甲斐があったよ。本当に。
空がね、綺麗だったよ。
良く晴れてた。青いね。やっぱり空は青い。一回吹っ飛びかけた大気も元に戻って、ちゃんと空が青かった。
それから、流星群!
いやー、すごいよ。前回の日記を書き始めた時には見られなかった訳だけれど、あれからきっかり300年!丁度この日が流れ星の日だったわけさ!うーん、ロマンティック、ってやつだよね。
……まあ、これは宗教や文化によって違うけれど。
星は、死者の魂だったり、希望の光だったりするわけだ。
だからね、まあ、ちょっぴり感傷的に過ぎるところがあるけれど、今回ばかりは、βの皆が喜んでくれてる、くらいに考えたいところだよね。
確か、死者が帰ってくる、っていうイベントがあったはずだし、今日はそれってことにしよう。OBAN、っていう奴。スペルがこれで合ってるのかは自信が無いけれど。
……まあ、とにかく、これが僕らの涙星、『stella lacrima』が再出発した姿なんだ。
これからまだまだ、人類復活までは大変だろうけれど、なんとかやってみようと思うよ。折角、セーラに再起動してもらえたんだしね。その分は働いて返すつもりさ。
本当は、僕や、僕みたいなAE導入アンドロイド、もう作らない方がいいんじゃないかと思ったんだけどね。まだ、この涙星に他の人類が生き残ってないとも限らないし、生き残っていたら『神への冒涜』であるアカツキ型アンドロイドの事は知ってるかもしれないし、そうでなくても、アンドロイドに育てられた人間には偏見があるだろうからね。
……でも、セーラ曰く、「それを言ったら、シンセティックユテレッサーで生まれた子供たちはどうなるのですか」ってことだから、うん。むしろ、僕が矢面に立つくらいでいいのかもね。その隣にセーラまで立たせちゃうのは申し訳ないんだけど……正直、嬉しいんだ。セーラが、『セーラ・アカツキ』を名乗ってくれることが。
親失格だね。でもしょうがないね。僕は人間よりも人間してるらしいし。
セーラをコールドスリープさせて、βの皆が死んじゃった後も、1人でずっと地上の中和作業してたんだし、これくらいは、ご褒美に貰ってもいいよね。僕はセーラと違って謙虚さがないのさ!そしてそれが美徳だと自分でも思っているよ!
で、だ。
まあ、これから、ベイビーたちの記録も付けておくべきだろうし、ってことで、新しく日記を書き始めることにした。
あ、前回の日記が交換日記になってた件についてはもうセーラから聞いてるし、読んだよ。うん、300年の間を挟んだ交換日記ってのも、中々面白いね。
……けど、今回の日記はリアルタイムで交換するよ。交代しながら、新たな命の記録をつけつつ、日々の記録を書いていく予定だ。
今回は本当に3日坊主にならないと思うよ。間もそうそう開かないだろうね。なんてったって、セーラが居るから!
ということで、これからまたこの新しい日記帳が埋まるまでの1年、よろしく、セーラ!
追記・セーラ:OBANではなく、OBONです。お盆、と書きます。それから、改めてこれからまたよろしくお願いします、博士。
後書きは活動報告をご覧ください。




