6月24日:セーラ
ようやく研究が一区切りしたので日記が書けます。
博士の日記からまた日が空いてしまいました。博士が2日連続で書いていらっしゃいますから、丁度いいかもしれませんが。
シンセティックユテレッサーは全基が一斉に活動を停止し、現在、TTB-UCにて10人の子供を成育中です。
『チトセ』『ツキコ』『バトー』の3人はそのまま、生存しています。
残っていたシンセティックユテレッサー9基の内、2基では死産でしたが、残り7基からは無事に生育した子供を取り上げることができました。
新たに誕生した7人には、『シアン』『ミオ』『ショウブ』『モエギ』『オピス』『ウィスタリア』『ユキ』と名付けました。
奇跡的に、10人分のDNA各1人ずつが生存しています。
このまま10人全員が健康に育ってくれることを祈ります。
AEの開発の傍ら、日記を読み返していました。
こうして読み返すと、日記の1年はとても短く感じられます。
実際、ここ10年間はずっと研究と資源集めに追われて駆け抜けてきたようなものです。今振り返れば、とても短い時間でした。
しかし、博士の日記の中にある1年は、また別の意味で短く感じられる1年ですね。
博士やβの皆さんと過ごした時間は、とても幸福でした。
博士、日記を書いて下さってありがとございました。おかげで私は、βの皆さんと過ごした日々を鮮明に思い出すことができます。
生まれたばかりの10人のこともありますから、これからはもっと忙しくなるのでしょうね。
TTB-UCも完璧なものではありませんし、私の定期的な監視が必要です。
子供達がTTB-UCを出ることができたなら、その時はもっと。
しかし、今までの時間よりもずっと忙しくても、これからの時間は間違いなく、ここ10年よりも遥かに幸福なものとなるでしょう。
βの皆さんと過ごした時間と同じです。1人ではないということは、それだけで価値のあることであるのだと思います。
博士にお会いしたい。
沢山、お話したいことがあります。
日記に書き切れない程あります。
私という人間が今まで過ごしてきた全ての時間についてお話するには、どのくらいの時間がかかるでしょうね。
でもきっと、10年は掛かりませんね。
290年なんて、尚更。
きっと1日あれば事足りるはずです。
ですから、博士。
もしもまたお会いすることができたならば、その時は1日、私に時間を割いて下さい。