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10月14日:セーラ

 研究が新しいステップに入りました。

 タンパク質の合成と、合成したタンパク質を用いたDNAの復元です。

 β-Aの保管室に残されていたDNAは、残念ながら使用できる状態のものではありませんでした。

 これは博士が予想していらっしゃった通りですね。残念ですが仕方ありません。

 幸運なことにDNAから読み取った情報は全て記録されていましたから、私が行うべきは記録の通りにタンパク質を配列していくだけの作業です。

 それだけの作業ですが、数が数ですから、時間がかかります。

 チハラさんがタンパク質合成装置を作っておいて下さって、とても助かっています。これが無かったら、数十倍の時間がかかっていたでしょうから。


 今後の大まかな方針としては、まず、10のDNAを復元しようと思います。

 それらを10サンプルずつ、それぞれシンセティックユテレッサーにセットして……結果が出るのは、大分先ですね。

 30日、60日で経過を見て……一段落するまでに90日、というところでしょうか。

 一刻も早く、とも思いますが、こればかりはどうしようもありません。


 今日の作業は全て、α-Cのラボで行っていました。

 チハラさんとアカシヤさんが主に使っていたラボです。

 そこで、DNAの増幅についての資料を探している途中で調べたチハラさんの実験ノートが、チハラさんの日記を兼用しているものでした。

 チハラさんも日記をつけていらっしゃったんですね。意外なほど間の詰まった日記でした。ただし、実験の記録に混ざって日記がつけられていましたので、博士とチハラさん、どちらがより怠惰であるかの判定は難しいところです。


 DNA補修についての記録の中に、チハラさんが博士の部屋で嘔吐したことについても記録がありました。

 だからどうということでもありませんが、チハラさんはとても申し訳ながっていたようです。博士。

 それから、実験ノートを見ていく内に、博士の部屋のベッドの下で発見された、腐敗したミート缶の由来が分かりました。

 あれはチハラさんが博士の部屋に持ち込んだものだったようですね。ブラン氏に見つかりそうになって、慌てて肴と酒瓶を隠した、とか。

『いつかバレないように回収しなければ』と記述がありましたが、結局チハラさんがミート缶を回収することはなく、結果、私が博士の部屋で腐敗したミート缶を片付けることになった訳です。

 チハラさんにお話ししたいことがまた増えてしまいました。


 シンセティックユテレッサーを稼働させ始めたら、各種DNAの復元・補修の合間を見て、チハラさんからお借りしていた本でも読もうと思います。

 チハラさんについては見習うべきではない点がとても多いですが、彼女の文学についての知識、また、感性といったものには見習うべき点が多くあると考えているので。


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