7月8日:ダイチ・アカツキ
古い倉庫を漁っていたら、この帳面が出てきた。
どうやらこれは、数百年前に、日記をつけるために作られた帳面らしい。
昔々には、この帳面のように、ハードカバーで分厚い帳面にアナログの鍵を掛けた日記帳が流行したんだとか。中々興味深いね。
まず、アナログの鍵、というのがいいな。この、『あって無い感』がいい。すごくいい。
本当に中身を守りたいなら、メモリキューブにテキストファイルを入れて、そこにイマジナリーキーでもつけておけばいい。アナログの鍵なんて破壊できるし、何より、皮と紙でできた日記帳なんて、燃えればそれきりだ。
その点、メモリキューブは燃やそうが潰そうが大抵平気だし、ハイプレッシャーレンジで10分チンしても無傷だから……ま、それを『風情が無い』という事もできるだろうね。
ということで中々、この日記帳には『風情』がある。『ショジョウムギョウ』って奴かな。
とにかく、僕はこれを気に入った。
なので折角だし、この帳面を使って日記を初めてみることにした。
セーラも居るから、日記が続かなくなる、ってことは無いと思う。
が、この365日分のページがきっちり作られている日記帳の全てのページが埋まるとも思えないね。
まあ、それは仕方がないか。
……しかし、何を書いたらいいのか分からないものだね。
報告書はしょっちゅう書いているし、論文もしょっちゅう書いているが、日記なんて今まで書いたことも無かった。
……まあ、日記ってぐらいだし、多分、大したことを書く必要も無いだろうね。
どうでもいいことをつらつら書く、それが『ワビサビ』で『モノノアハレ』なんだって、古い文献で読んだことがある。
専門外の文献だったけれど面白かったよ。いつかセーラも読んでみるといいだろう。図書室にあったけれど……あの本はどこにやってしまったかな。僕の部屋のどこかにあるかもしれない。あとで探してセーラに渡してみよう。
そうそう、そういえば昨日は流星群の日だった。
観測はできなかったけれど。
折角の機会だから、セーラと天文学の勉強をした。
セーラは凄いね。みるみる学習して、どんどん賢くなっていく。
彼女を見るのが最近の楽しみの1つだ。
……って、あれ。
そろそろ1ページ埋まってしまうな。
……なんだかしまらないけれど、まあ、日記だしこんなものでいいか。