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かんせーのほーそく  作者: ガガガブックン
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うまいものの法則

プロローグ

 質量保存の法則、オームの法則、そして慣性の法則……。物理にはさまざまな法則がある。だが、物理だけではなく、この世の中にもなにか法則があるのではないか? この物語は、そんな無謀でどうでもいいことに挑戦するちょっと馬鹿な女の子と突っ込み役の女の子としがない教師が繰り広げるB級ライトノベルである!


第一話「うまいものの法則」

 ここは私立北海道学芸大学附属札幌中学校。道内トップレベルの中学校である。どれほどトップレベルか? 偏差値でいうとだいたい六〇ぐらい。つまり大学でいうと、MARCHレベルである。イメージしてほしい。偏差値六〇の中学校とはどんな人が集まる学校か? みんな真面目で勉強家か? それともマーチのイメージでいうオシャレで一見そうはみえないけど実は勉強ができる人か? はたまた、頭が良すぎて学校の勉強だけで分かる天才か? 答えはいろいろと言ったほうがいいだろう。この他にも勉強を全然しない遊びっ子もいるし、部活に全力を注ぐ子、運動が得意な子もいる。だが、今問題になっている分数計算ができない人や英語のレベルが低い人はいないし、授業中に立つ人がいたり、授業崩壊が起こったりするような野蛮な学校ではない。そんなところだ。

 それはさておき、この物語の主人公、山崎玲奈は、遊びっ子に近い。家では漫画やドラマ鑑賞。塾には通っているが、成績は良くも悪くもない。一見ふつうの女の子である。

 二時限目の理科の授業。この学校の理科室は黒の机に水道とガスの元栓がついたものが並べられているふつうの理科室である。だが、授業はちょっと違う。内容は基本受験対策が多く、実験は全くしない。

 そんな授業に玲奈は駄目な予備校生のような感じで聞いていた。今日の息抜きに見るテレビが楽しみだな、という回路と授業に集中しないとヤバい! という回路がいったりきたりしているような感じ。授業では、先生がたまに生徒に質問するが、このような頭の人は当てられた瞬間、戸惑い間違える。玲奈もその一人だ。

 授業がもうちょっと面白ければいいのに……。そしたらもっと集中して聴けるのに……。回答に逡巡した玲奈はそう思った。そこで友達の湯海秀美にぼやいてみることにした。

「ねぇー、秀美―。授業あまり集中できないんだけど、なんで実験とかしないんだろうねー」

「知らないわよ! ぐーたら言ってる暇があったらちゃんと勉強しなさい」

「でも一回も実験しないなんておかしいよっ」

「そういうのは私じゃなくて学校や先生に言いなさい」

「わかった」

「え? 本当に言うの!?」

 直情径行できついことも平気で言う玲奈は、真面目に聞かない自分のことは棚に上げて、いかにもサラリーマンという感じのメガネをかけた理科の青野先生に文句を言うことにした。

「青野せんせー、なんで理科の授業なのに実験しないの?」

 青野は困惑しながら、玲奈の質問に答える。

「うちは、私立だからね……。学生がたくさん入学するように、難関高校の進学実績を上げないといけないから必然的にこうなるんだ」

 関東の人達からは疑問に覚えるかもしれないが、北海道では私立よりも公立のほうが人気で親は公立に子どもを入れたがるのだ。私立は進学実績に影響された一部の熱狂的な親の子どもぐらいしか入らないのだ。

「でも実験がないのはおかしいよ! 先生は目の前の生徒よりお金のほうが大事なの!?」

「別に僕が決めたことじゃないからね……。しょうがないよ。……そうだ! 放課後に実験するかい? それならオーケーだよ。僕、非常勤講師だから部活ないし」

「いいね! ねぇ、秀美聞いた? 一緒に実験するわよ!」

「なんで私まで!?」

「だって一人でやってもつまらないでしょ」

「帰って将棋の雑誌読んだり、塾の宿題したいんだけど……」

「そんなこといつでもできるよ。一緒に実験しよ!」

「はぁ……参ったなあ」

 こうして二人は放課後に実験をすることになった。


 今日はまず、化学反応の実験。鉄と硫黄の化合の実験だ。玲奈は実験のやり方を学んで、試験管の鉄と硫黄の混合物をガスバーナーで加熱する。

「質量保存の法則ってあってねぇ……。今回は鉄七グラム、硫黄四グラムで硫化鉄を作るけど、できた硫化鉄は一一グラムより多くはならないんだ……」

「先生、それ授業でやりましたね」

「え? やったっけ?」

 授業をちゃんと聞いてる湯海と玲奈。うさぎとカメという話があるが、現実は真面目なウサギと不真面目なカメであるというパターンも少々ある。

「うーん、理科には色々な法則があるなあ」

「ちゃんと覚えないと駄目よ」

「昔の人はすごいなあ……こんなにいろいろなことを発見するなんて……」

「将棋でも昔の人たちがたくさんの画期的な打ち方を発明してるし、天才はすごいわ」

「私もなにか法則を見つけてノーベル賞をとろうかなあ……」

「無理よ! 素人で凡人の私たちには……」

 湯海の好きな将棋では新しい手を見つけるプロとアマの壁は厚い。その差は相撲並に厚く、プロは神ともいえるみたいなことがハチ●ンダイバーという将棋漫画に描いてあった。アマが新しい強い手を見つけるのはほぼ不可能なゲームなのである。

「うーん……。そうだ! 世の中の現象から法則を見つけるのはどうだろう!?」

「世の中の現象……?」

 玲奈のひらめきに湯海はよく分からず首を傾げた。

「さっそく思いついたよ! 『うまいものの法則』!!」

「うまいものの法則?」

「高い値段のする食べ物はうまい。以上。」

「そんなの当たり前じゃない!」

「うーん、ダメか……」

 困った玲奈に青野が助け舟にはいる。子どもが困ったときに少し背中を押してあげるのが大人の役目である。青野は「論理」について軽く説明しようとした。

「ニュートンの万有引力の理論って分かる?」

「あー、リンゴが木から落ちるの見て地球が引っぱるって話?」

「そう。リンゴの落下を月や地球の回転その他の運動と一緒にして『みんな』という一般性でみたんだ。たくさんある具体例にとらわれず、その中で共通な性質を見つけだし、それをみんなに分かりやすく、変わらない法則にしたんだ。その点、山崎さんはうまく法則を作っているよ。でもちょっと単純すぎるかなあ……」

「よく分からない説明だった! 先生の説明! とりあえず次はもっとすごい法則を見つけるぞ!」

「え、まだやるの?」

 張り切る玲奈と馬鹿だなと思う湯海。対称的な二人。はたして、玲奈はあっと驚く法則を見つけられるだろうか?

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