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ONE WEEK  作者: K
3/31

火曜日 2

朝になった。

美織が、目を覚ますと、ベッドの隣には、小さなこたつにはいりこんで、座椅子を枕にして寝ている男の姿がある。

夢じゃなかった。


さて、どうしようと、美織は考える。

仕事に、行かなければならない。

この男を置いて?

そんなこと、できるわけがない。

美織は、この男、御堂成哉が目を覚ます前に、着替えを済ませ、メイクをし、出社準備を整えた。

成哉は、まだ熟睡している。

その寝顔は、あどけなかった。

東に窓のあるこの部屋では、朝日が昇ると同時に洗濯物が日に当たる。

昨晩の雨が嘘のように、今日はカラリと晴れていた。

もう、かなり乾いている。

急いで、昨日の夜、外に干した成哉の服を取り込んで、美織は、成哉の肩をゆすった。

「ねえ、起きて。私、仕事があるのよ。」

「んー。」

と、目をあけた成哉は、ぼんやりした目で、

「ここ、どこ?」

と、聞く。

記憶が戻った?

美織が、顔を覗き込むと、

「ああ、美織さん。」

と、溶けるように笑った。

一瞬、どきりとする。

「美織さんの仕事って、何?」

記憶喪失という、重大な疾患にかかっているに関わらず、この御堂成哉という男は、えらく呑気だった。

「それより、あなたでしょ。記憶は?」

成哉は、首を傾げ、宙を見た。

「昨日、美織さんに会った時からしか…。」

「本当に、何も覚えていないの?頭の怪我は?」

「そういや、頭がガンガンすると思ってた。美織さん、何時頃、帰ってくるの?」

「多分、夜の9時頃。」

「それまで、寝てていい?」

「え?」

身体はでかいが、この男、甘え慣れている?

断られるなんて、思ってもみないのか、にっこり笑って、美織の返事を待っている。

「ここにいるつもり?」

「うん。記憶ないし…。」

当たり前のことのように、返事する成哉に、美織は唖然とする。

成哉は、よっこらしょと立ち上がり、にこにこしながら、美織を見送ろうとする。

成哉の大きな身体が近づいてくると、無意識にパーソナルスペースをあけてしまう美織は、そのスペースを保ったまま、玄関に追いやられてしまい、

「行ってらっしゃい。」

罪のない笑顔を見せられて、

「じ、じゃあ、冷蔵庫の中のもん、適当に食べていいから…。」

と、言ってしまった自分に激しく後悔した。



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