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硝煙と黒猫  作者: 黒雪姫
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ホウカー

黒と白で統一された、少し広い部屋。

そこには黒い監視カメラのような物まで取り付けられている。

スピーカー付きのそれを若干気にしながら話す、五人の人影。

「とうとう、クロウズを潰すのね」

金髪の美女が、赤い目を光らせた。

獲物を狙う、鷹のように。

『ああ。そのつもりだ』

カメラのスピーカーから、男の声が響いた。

「楽しみだぜィ!」

殺気立ちながら無邪気に叫ぶのは、ワイシャツに黒ネクタイ、そしてキュロットを身につけた少女。

右の頬に赤い星がペイントされている。

琉無(るな)ちゃんは元気ねえ。そんなに楽しみ?」

「あったりまえってモンよ!ゼノヴィアの姉さんはそうじゃないのかい!?」

琉無は白い二人がけのソファに、ゼノヴィアと座っていた。

ハイテンションになるあまりソファの上に立つと、ゼノヴィアに行儀が悪いと怒られる。

「楽しみにしてんでしょー?姉貴ー」

机の上に寝そべり、ゼノヴィアを下から見上げるのはコーマック。

「お行儀悪いわよ、コーマック」

問いかけには答えず、姿勢を注意。

若干口元が緩んでいるのは抑えられなかった。

「計画とかあったりする訳?リーダーさんよォ!」

カメラに向けて天真爛漫な笑顔を見せる、琉無。

心底楽しんでいるということが、簡単に見て取れる。

五月蝿(うるせ)ェ」

黒い帽子のつばを上げ、琉無をギロリと睨むのは(ケイ)

1人がけのソファに座っている。

「ンだよ!チービ!」

べーっ、と舌を出して挑発するが、計はつばを下げてそれきりだった。

「琉無っちはー、子供だねー」

ケラケラと笑いながら、コーマックは琉無をからかった。

「もう、喧嘩しないの!」

「ゼノヴィアの姉さん!だって、計が(あたい)をからかったんだし!」

むぅ、と頬を膨らませる。

ゼノヴィアは、呆れたようにため息を吐いた。

それからふと、向かいのソファで沈黙するルシアを見た。

「どうしたのよ、ルシア。元気無いじゃないの」

『何かあったか?』

どうやらスピーカーの声、ワイトも心配しているようだ。

「飼い猫が一匹、逃げ出してな」

目を伏せ、極めて冷静な口調でそう言った。

「あら、ルシアがそんなことで元気無くすなんて、らしくないじゃない?」

ゼノヴィアは首を傾げている。

『…猫は比喩、か?』

鋭いワイトは核心をついた。

「まあな。人間オークションで買った」

『…黒猫か?』

ルシアは驚いたように目を開き、ああ、と言った。

『俺が出品した』

コーマックが机から降りて、食いつく。

「へー!ワイトさん、あの殺し屋の黒猫を売ったのー?ていうかそれをルシアが買うって、(ちょー)偶然だよねー」

こういう話には、コーマックは目がない。

狂気の情報屋は、面白そうな話が大好きだ。

気に入った噂があれば、それの真偽を確かめて売る。

ちゃんと話の裏は取るので、彼が情報屋として売る情報は正確無比だ。

その点ではコーマックは優秀といえるだろう。

「…何でまた」

珍しく、計も興味を惹かれたようだ。

『隙あらば此方(ホウカー)に取り込もうと思ったんだが、な』

笑いを含んだ声で、ワイトが言う。

あ、とルシアが小さく声を漏らした。

「そういや黒猫、黒瑠と接触してた。もしかしたら、彼方(クロウズ)にいるかも」

本当(マジ)!?と次は琉無が食いつく。

「やりぃ!あの黒猫様と殺り合えるなんて最ッ高だぜぃ!」

その瞳を爛々と輝かせ、道化師(ピエロ)、琉無は立ち上がった。

「まあ、琉無ちゃんったら。落ち着きなさいな」

ゼノヴィアもまた、嬉しさに目を細めながら琉無をたしなめる。

琉無は楽しみで仕方ないというように、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。

動きに合わせて黒いネクタイが揺れた。

青いスペードのついたタイピンが、きらりと光る。

ゼノヴィアは、もう注意もしなかった。

手を頬に当て、微笑ましそうにその様子を見ている。

さながら妹を見守る姉のようで、『姉貴』と呼ばれるのも納得できる。

「騒がしい」

計は眉間に少し皺を寄せて、不満そうだ。

無邪気に騒ぐ琉無の耳には、その声は届いていなかったが。

コーマックは一緒になって跳ねている。

ゼノヴィアは、呆れたようにため息を漏らした。

しかし、その表情は微笑んでいる。

「璃夜…」

ルシアは、誰にも聞こえないように小さく呟く。

それから、心の中で自分を嘲笑した。

すこしだけ過ごした少女に、もう情が湧いているのに気付いて。

『クロエはどうなんだ、ルシア』

不意にワイトがそう言った。

クロエがクロウズであることは、既に皆が知っていた。

なんのために、ルシアに近づいているのかも。

「なんとか仲間に取り込めるかもしれない。こちらとしても、クロウズの情報を握った彼女は貴重だ」

ルシアは、無感情にそう言った。

ワイトは少し感心する。

自分を好いた態度を取っているクロエを、なんとも思っていないことを再認識して。

しかしワイトは感じていた。

ルシアが黒猫を、可愛がっていることを。

まだ、情を捨てきれていないことを。

(迷え、ルシア…。その迷いが、さらにお前を強くする)

ルシアが感情を失えば、後に残るのはその驚異的で脅威的な力のみ。

そうなれば、ワイトにとっては操りやすいものだ。

ワイトの‘計画(プラン)’は、止まることなく進んでいく。

それが、どんな結果に繋がろうと。

それを知る由は、無いのだから。

結果が出れば、過程はどうでもいい。

結果が変わらないように見守るのが、役目なのだから。

はしゃぐホウカーの面々をモニター越しに見て、ワイトはそう遠く無い未来を想った。

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