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6話

 俺は今切実に困って居る。


 どうやら夢、もしくは醒めたら終わる夢では無い可能性が高い。


 しかし、一番の問題は俺の目にはゲームにしか見えない事だ。


 お金は稼げる、飯も喰える、多分宿もどうにか成る。


 他人ともコミュニケーションは可能だ。


 だが、全てがドット絵、自分の手すらドット絵。


 食べ物も多分飲み物も、人すらドット絵。


 個人認識がかなり困難だ。


 実際に目の前の屋台の店主が若いのか年寄なのか声でしか判断出来ない。


 多分30代後半から40代半ば、としか絞れない。


 怒ってるのか、喜んでるのかが見当も付かない。


 これはある程度の人間関係を築いたら致命的なトラブルに成りかねない。


 注意深く対応しなければ成らない。


 いつここから抜け出せるか分からない以上、何らかの人間関係は不可欠だ。


「兄ちゃん、何か文句でもあんのかい?黙りこくりやがって」


 店主は考え込む俺に苛立った様子だ。


「いやいや、余りに旨くてついつい。もう1つ頂けますか?」


 余計なトラブルは回避に限る、追加注文されれば丸く収まるだろう。


 鼻を鳴らすと店主は気を良くしたか判らないが、追加でクロックチキンを焼き始める。


「申し訳ないんですが、この辺りで安めでお薦めの宿は有りますか?後、モンスタードロップ品の買い取りをしてる所も教えて頂けると助かります」


 俺はこの機会に最低限必要な情報を聞き出す事にする。


「宿はこの通りを少し行くと左手に黄金の麦束って宿が有る、買い取りは色々だな」


 どうやらモンスタードロップ品は皮なら防具屋、薬草なら薬屋、と言う具合に売りに歩くらしい。


 ラノベの定番のギルド買い取りは無いらしい。


 地味に不便だが、まあ、仕方がない。


 店主から焼き上がった半身を受け取ると代金を支払ってインベントリに入れてみる。


 ふむ、入るは入るらしい。先ずは毒針の処分からと薬屋を目指す。


 しかし、雀蜂(すずめばち)の毒針を活用って何だろう?


 蛇なら血清が作れるかも知れないが、雀蜂は聞いた事が無い。


 雑学をもう少し集めて置くべきだったが、後悔先に立たずだ。


 日本の雀蜂と違う可能性も高いし、当たるだけ当たろう。


 薬屋の看板はフラスコが描かれてるらしいから、探せば見付かるだろう。


 程無く目当ての看板を見付けると店に入る。


「いらっしゃいませ」


ドアを開けると店員に早速声を掛けられる。


「買い取りが可能か判らないんですが、パラライズビーの毒針の買い取りはこちらですか?」


「はい、当店でも買い取りをしております」


 声の調子からにこやかな対応をしてると判断して、カウンター迄進む。


「数が半端で申し訳無いが、お願いしたい」


 カウンターの上にインベントリから毒針を並べる。


「えっと、パラライズビーの毒針が22本ですね。刺されませんでしたか?」


「いや、幸い、一匹づつだったので刺されずに済みました」


「パラライズビーは単独行動が基本とは言え、流石ですね」


 基準が分からないので失礼に成らない様に言葉を選んで買い取りを促す。


「パラライズビーの毒針が22本で、銅貨88枚に成ります」


 ドロップ品の良し悪しが分からない俺には買い取りの値段交渉は出来ないので、そのままの値段で引き取って貰う。


 これで所持金は銀貨3枚銅貨54枚、円換算だと焼鳥が7枚500円から700円位、つまり銅貨1枚100円位か。

 35000円位と考えられる。


 ここと宿の代金とでおおよその感覚が分かるだろう。


 買い取りを済ますと次は衣類だ。


 この後直ぐに目が醒める、もしくは日本に戻れるなら良いが、一泊と成れば着替えは欲しい。


 ふと気が付き、俺が今着ている服は何なのか、今まで考えてすら居なかった。


 日本の服なのか、それともこちらの服なのか。


 袖を触るとゴワゴワした感触、うん、多分麻。


 綿にしては固すぎるから多分間違いは無い。


 夢だったら俺、映画の演出に意外な才能が有るって思いたい。


 意識したら着心地が悪くなる悪くなる。


 ゴワゴワ、チリチリと肌に刺さる様な不快な刺激だ。


 良し、買えるなら綿の服にしよう。


 しかし、何度考えても答えは出ない。


 これは本当に夢なのか、違うならどうして、どこに俺は居るのだろう。


 あ~止め止め、考えても答えが出る気配も無いならストレスにしか成らない。


 夢で悩んで疲れてもしょうがない。


 先ずは足を伸ばせる宿と、宿で力を抜ける服だ。


 辺りを見回して多分服屋だと思われる店と言うか露店を発見。


 綿の服を1セット購入する。


 意外と安い、しかし当然の如く柄が分からない。


 日々スーツばかりのサラリーマンだ。


 センスは無い、有ったとして錆び付いてる。


 諦めては居るが、長袖のTシャツなのか、ボタンシャツなのかも分からないのは困る。


 だから俺は叫ぶ。


「でも、ドット絵!!」

主人公は冷静ではありません。

黙ってテンパるタイプです。

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