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46話

 微かな振動で緩やかに目を覚ました。


 顎に仄かに甘い吐息が掛かる。


 腕の中のアンの身動ぎらしい。


 アンの軆に乗せていた右腕を退ける。


「すまない、重たかったろう」


「少しだけ」


 力が抜けきった様なか細い声だ。


「すまんすまん」


 むず痒さに苦笑しながら乗って応える。


 一夜の疑似恋愛の余韻か、まるで恋人達のやり取りだ。


 唇で探る様にアンの唇を塞ぐ。


 舌の応じが弱い、寝起きだからか?


 口吻をほどくとアンが囁く。


「ごめんなさい、力が入りません」


 昨夜の情事を思い出していつにも増して求めた記憶が有る。


 乱暴にはしてないが昂り過ぎた自覚は有る。


「すまない、無理をさせたな」


 インベントリからポーションを出して、アンに飲ませる。


 回復のポーションで情事で消費した体力が戻るかは分からないが。


 しかし、Lvの影響か俺自身は違和感は無い。


 逆に……。


 取り合えず、窓を開けて外の明かりを入れよう。


 暗闇の中を手探りで窓を探す。


 指先に木枠が触れ、真ん中辺りに閂が有るので、


 揺らして動く方にズラすと窓が開いた。


 視界がいきなりドット絵に成る。


 インベントリから服を出して着替えて、ベットから起きないアンに話し掛ける。


「アン、ポーションは効いたか?」


「少しは効いた気がしますが、まだ動ける気がしません」


 申し訳無くて返事に困る。


 暫く無言で考えるが、何で埋め合わせるべきかが思い付かない。


「何か食べたい物とか、欲しい物は無いか?


 正直現金しか浮かばないが何か違う気がしてる」


 素直に聞く事にする。


 それに色気も何もない、無粋な気がして嫌だ。


「では、いつもリュート様が何か削っているのが気になっていました。リュート様が関わった物が欲しいです」


 少しの間を置いてアンが提案する。


「分かった、洒落た物を用意する」


 青硝子のグラスを工房で買って贈る事にする。


 1つ頷いてからチェインメイルを着込んで、その上からブレストアーマーを装備する。


 ベットサイドに行ってアンの額辺りに唇を落として部屋を出る。



 先ずは硝子工房に足を運ぶ。


 厄介な相手とはさっさと交渉を済ませてしまおう。


 10分程歩くといつもの硝子工房が見えてくる。


 工房のドアを潜ると店の人間が声を掛けてくる。


 待つ様に言われて工房主が来るのを待つ。


 周りを見回すとサンプルだろう、硝子細工が棚に並べられている。


 幾つか青い物が混じってるのが分かる。


 何か1つ購入するのに物色しておく。


 尤も、ドット絵にしか見えない俺にはグラスかそれ以外にしか認識出来ないが。


 細工が分からないならグラス1択なのだが。


「よう、来たか。材料は売ってくれるんだな?」


「ああ、2袋用意してある。後土産に青硝子のグラスを1つ売って貰いたい」


「ああ、構わないぜ、1つ銀貨25枚だがな」


「やれやれ、吹っ掛けてるもんだ」


 コバルト粉1袋で幾つ作れるか分からないが、かなり強気な価格だ。


 まあ、今の所此処でしか作れない代物だから当然だが。


 アンへのお詫びの品にしては高価過ぎるが、他に選択肢が無いから諦める。


 インベントリからコバルト粉の袋を出して手渡す。


 工房主から銀貨65枚を受け取る。


「きちんと磨いたグラスを頼む」


 どれが良いか分からないから、品は任せるしかない。


「ほらよ、この辺りはまあ良い出来だ」


 棚から1つのグラスを渡される。


 淵をなぞると滑らかで綺麗に磨かれてるらしい。


 サイズは大きい。


 ワイングラスと言うよりゴブレットだろうか?


 裸のまま渡されるとは思わなかったが。


 礼を言ってインベントリに収めて工房を後にする。


 首の後ろがチリチリともヒリヒリとも言えない物を感じた。


 警戒心が持ち上がる。


 背後の足音や気配を見落とさない様に神経を尖らせる。


 視界のドット絵と、狙われるかも知れない現状のギャップが妙に勘に障る。


 腹立ち紛れに叫びたくなる。


 でも、ドット絵。

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