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44話

ラストで久し振りに主人公が不憫な目に遇います。

最後の数行はゲテモノが苦手な方は読み飛ばして下さい。


 店に入ると早速声が掛かる。


「リュート様、いらっしゃいませ」


 今日はアンの日だからこの声はアンだろう、多分。


 まだ耳頼りでの人物判断に自信が持てない。


 念の為頭上の名前を確認する。


 良かった、アンだ。


「こんばんは、今夜も世話に成る」


 アンに挨拶をすると傍らにいつもの支配人の男が現れる。



 腰の革袋から銀貨を出す振りをして代金を支払い食事とワインと湯の用意を頼む。


「リュート様、お食事はお部屋でになさいます?今日は少し騒がしいですが」


 アンの提案に頷いて部屋に案内してもらう。


 階段を上がり部屋に入ると一階の喧騒が一気に遠退いた。


 ソファーに腰掛けて体から力を抜く。


「お疲れですね、大変でしたか?」


 隣に座ったアンが左腕に体を預ける様に寄り添ってくる。


 柔らかな温もりを感じながら答える。


「視界に難が有るから、神経を使うかな」


 触れ合うアンの肩に頭を置いてみる。


 目を閉じると世界は普通に成る。


 母国語で話せて、労ってくれ、包んでくれる女性が存在する有りがたさを実感する。


 暫く心地好い無言の時間にドアをノックされる音が響く。


 複数の足音がすると若い少女の声でワインのビンとグラスがローテーブルに置かれ、


 他の足音は浴室に向かって湯の入った瓶を運んでいるらしい。


「アン、あの娘達に渡して上げてくれるか?」


 インベントリから銀貨を人数分出してアンに手渡す。


「リュート様、ちょっと多いと思いますよ?」


 窘める様にアンが注意を促してくる。


「彼女等は客には着かないのだろ? なら小遣いにも困るだろうから」


 妥当な金額だと銅貨10枚位だろうが、一人一人に10枚渡すとか面倒過ぎる。


 どうやら食事の前に湯浴みの準備が進むらしい。


 バスタブにお湯を満たして彼女等がアンから銀貨を受け取って部屋から退出する。


 閉まったドアの向こうからは嬌声が聞こえる。


 お駄賃を貰う機会が少ないのだろう。


 当然だ、娼館で直接接客されない相手に誰がチップを渡すだろう?


 俺の場合は沸かさない、お湯を足す手間の掛かる風呂を用意して貰う側だ。


 日本人的感覚だと彼女等も立派なスタッフだと考える。


 まあ、今日の狩りが順調でドロップも稼げたから気が付けただけだが。


 どう考えても金銭感覚が狂っている。


 武具防具以外に使い道が無い貨幣は節約する意味が無い。


 日銭を使い切る駄目な男の典型だとは思うが、と苦笑する。


「リュート様、お湯の用意が出来ました、どうぞ」


 一つ頷いて胸当てとチェインメイルを脱いでベットの脇のラックに掛けて浴室に向かう。


 浴室に入るとさっさと服を脱いでバスタブに浸かる。


 腰の高さ迄しかない湯に浸かって、体を横たえる。


 空かさずアンが布を俺の体に被せて、湯を布に掛けていく。


 数回湯を浴びて頭に汗をかいてきた頃に体を起こす。


 誰かに入浴の介助されるのは慣れないが、それでも風呂に入れるのは有り難い。


 髪を洗って体の泡を流してバスローブを羽織って浴室から出る。


 髪の水滴を拭いながらソファーに腰掛けるとテーブルには料理が並べられていた。


 熱々とは言えないが、まだ温かい茶色い何かと、茶色い何かと、白い何か。


 指で触れるとパンと何かのフライと白いのはシチューみたいだ。


 パンを一噛りしてからフライを手掴みで一口。


 カリカリの衣の奥からしっとりした肉が歯に触れる。


 淡泊な味、鶏肉だろうか?


 歯に固い物が当たる、骨付き肉のフライらしい。


 鶏にしては微かな臭みを感じる。


 どんな鳥の肉だろう?


「アン、これ何のフライだ?」


 アンが明るい声で返事をくれた。


「今日のフライはカエルですね」



 一瞬、呼吸と心臓も止まってた気がする。


 油断した。


 この世界で一番信用したらいけない存在を忘れていた。


 ああ、泣きそうだ、本気で泣きそうだ。


 だから俺は今日も呟く。


 でも、ドット絵。

久し振りに主人公が酷い目に遭いました(笑)

いやいや、食文化食文化(笑)

カエルを食べる地域も有るさ、

生の魚を食べる地域が有る位だから(笑)

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