39話
取り敢えず食事に関しては諦めるしかないとして、エミリーに糸玉と糸巻きの事を少し聞いておく。
インベントリから糸玉を一つ取り出して見える様に掌に乗せる。
「済まないが今日出たアイテムなんだが、使い道を知ってるか?」
「シルクの繭玉ですね、シルクを織る材料としか私には……」
まあ、普通は流通行程までは意識しないか。
「そうか、分かった」
糸玉の値段確認が出来ない事が分かったのでコバルトを粉にする作業を始める。
インベントリからコバルトをテーブルに並べる。
すり鉢とヤスリも取り出す。
ヤスリで削ったコバルトの粒は直接すり鉢に入る様にヤスリをすり鉢に差し込んで削っていく。
10個のコバルトを削り終えたらすり鉢で粉にしていく。
粉に成ったのを指で確認したら革袋に入れる。
革袋1つにコバルト25個で今日も2袋を作って作業を終える。
粉だらけの両手を洗い、歯を磨いてベッドに入る。
灯りを消してもらうと一気に力が抜ける。
視界がドット絵だとやはり目が疲れるらしい。
エミリーの体温に癒されて、持て余した体力をエミリーに使う。
Lvが上がると体力を持て余すのか分からないが、今日もエミリーと躯を重ねる。
救われているが、決して愛が有る訳でもない。
その事が後ろめたい気分に俺自身をさせる。
朝起きるとエミリーに礼を言って娼館を出る。
先ずは硝子工房にコバルトを売り付けに行く。
暫く歩いて工房に着いた。
中に入って今日の分を売り払う。
「やっぱり青硝子の製法に金貨20枚は高いな」
工房の親方から青硝子の製法を値切られた。
親方の声には微かに笑いのニュアンスが入っている感じだ。
苦笑ではない、嘲笑に近い気がする。
「なら買わなければ良いだけだろう」
これは余り良い流れではないと感じる。
警戒する所か。
最悪、拷問されて青、赤両方の製法を得ようとする可能性が増したと考えるべきだ。
午前中はゆっくりで良いと思ったが、しっかりLvを上げておくべきだろうか。
納品を終えて工房を出る。
尾行されたらコボルトからコバルトを手に入れてるのも直ぐにバレてしまうだろう。
今日の所はコボルトは狩らずに、次のモンスターでLvを上げるとしよう。
確か、次のモンスターはバイト・アリゲーターだったか。
森を越えた辺りの川で出るらしい。
「ワニか、メイスで頭を殴って脳震盪を起こすか見て、脳震盪を起こしたら剣でとどめを刺すかメイスで殴り続けるかだな」
しかし、モンスターが居る割りに、モンスターもある程度生物的な法則に沿ってる感じだ。
首の動脈が素直に弱点だったりもする。
物理法則はかなり近いらしいが、何処まで似通ってるのかがいまいち分からない。
兎に角今はLvを上げて不覚を取らない様にしよう。
ゆっくりするつもりが地味に追い立てられる状況になる。
根拠は無いが油断してると不味い、そんな予感がする。
現実的な危険を認識して狩り場に向かう。
しかし、現実的な危険をこの視角環境で言われても困る。
だって。
でも、ドット絵。