12話
主人公は意外と過激(笑)
腹が落ち着くと体に活力が生まれる。
ゲームでもそうなのかね?まあ、どうでも良いが。
幸いな事に、レベルを上げて体力が増すと少しの距離をダッシュしても疲れないらしい。
その癖、戦闘時の体捌きは疲労するのだから謎だ。
目安はBGMだ。
戦闘BGMが流れてない間は全力疾走しても疲れない。
なので俺は全力疾走でゴブリンを探し、全力疾走からの跳び蹴りで戦闘を開始した。
処理速度の問題でしかないが。
いや、多分、ゴブリンの断末魔の悲鳴が聞きたくないだけか。
武器は少し長めの剣にしよう。
勢いが乗れば一撃で屠れる長い刃物が良い。
蹴り飛ばしては斬り付け、蹴り飛ばしては斬り付けを繰り返す。
脚に肉を蹴る感触が、手に肉を切り裂く感触が募る。
命を奪う感触が、重みが、苦味が溜まって行く。
一匹一匹殺す度に俺は思考停止して行く。
思考停止してる事に気が付かない位に何も考えられなくなる。
目に付くモンスターにただ反応する獣より機械染みた「何者」に成りつつある。
何匹屠ったか自分でも判らない、両手の握力がもう無い。
つまり戦闘をそれだけ繰り返したと言う事だと荒い息の下で思う。
不味いな、精神の防衛本能が働き出したって事は、壊れる直前だ、と変に冷静に考えられる自分が怖い。
取り合えず街に戻ろう。
このままだと心が割れてしまうから。
地面の銅貨を拾い集めて、俺は歩き出した。
疲労を感じさせない足取りで。
二時間近く掛けて街に着いた俺は先ずドロップアイテムの買い取りに向かう。
食材アイテムは街の精肉店に、皮は防具屋に、だ。
皮はあまり良い値段には成らなかったが、肉は良い値段で売れた。
これで所持金は銀貨56枚銅貨80枚に成った。
どれだけ戦ったのやら、ドロップの金額は多少前後するので判り難いが、今日だけで百以上は確実だろう。
「服と武器、買わなきゃ……」
大分参ってる自覚が有る。
日常と言うか、戦闘のテンションを切らなくては……。
昨日買いに行った露天で綿の服の上下と下着を二組ずつ買って、いよいよ武器屋に向かう。
場所は露天の店主に聞いたから抜かりはない。
暫く歩くと武器屋に行き着く。
二、三店舗有るらしいが、実際何処でも良い。
レベル10台が持つ武器に大差は無いだろうから。
「すいません、剣を買いたいんですが」
雑な敬語もどきを口にしながら店内に入る。
「あいよ、どんな武器をお探しだい?」
野太い声が返ってくる。
「剣で、そこそこのリーチが有る物、片手両手切り替えて使える物」
「長めの片手半剣か、癖が強いが良いか?片手で振るには重くて両手だと軽いぞ?」
「特に問題無いので」
しまった、防具屋で小さめの盾買い忘れた。
ここにも有るかな?
「今有るのは三本だけだ、右から鉄、鉄、鋼だ」
とカウンターに片手半剣、所謂バスタードソードが並ぶ。
「手に取っても?」
確認してから一本一本重さを確かめる。
ドット絵でしか見えない俺には違いが判らない。
いや、一本だけ色が妙に黒っぽい物が有る。
「これは燻ませて?いや黒鉄?」
「兄ちゃん、良く分かったな、こいつは黒砂鉄から造られた剣だ」
「確か、錆に強い?」
「詳しいな、そうだ、黒鉄は何でか普通の鉄より錆難い」
ファンタジー好きの日本人舐めるな、と言いたい。
悩み所だ、武器の更新がいつに成るか判らないなら、手に入る中でも良い物が良いが。
硬さとメンテナンス性、どちらが良いだろうか?
「値段は?」
ここは価額も判断材料にしよう。
「黒鉄が20枚鋼が25枚だ」
正直、鋼と黒鉄重量差が無ければ大した違いはない。
「黒鉄の片手半剣を、後バックラーは有るだろうか?」
もしかしたらと念の為聞いてみる。
「悪いが盾は防具屋だ」
それもそうだ、銀貨20枚を支払って剣を受け取る。
鞘に収めて、剣帯に吊るす。
鉄の塊を腰に提げる、中世だなと思いつつ、
でも見てくれはやっぱり。
「でも、ドット絵!!」
次の話に女性が出ます。
色艶い話に成りますが、
名前必要かな?(笑)
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