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アルケオン 第二章 「感情の色を探して」  作者:


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やわらかな光と、別れの足音

「アルケオン 第二章 感情の色を探して」


彩葉たちの活躍から、十年――。

世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。


日本・大阪府大阪市。

その街に、一人の守護者が存在していた。


イラストから生まれた守護者――ユズ。


絵を描くことを愛する彼女は、

しかしひとつの欠落を抱えていた。


それは――

“色で感情を表現できない”こと。


どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。

色が、ただの色にしか見えないのだ。


そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。


苦しみの上位想霊――

感情体「サファリング」。


感情から生まれる存在である彼女は、

ユズの“欠落”に興味を抱く。


そしてユズもまた、

“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。


タブレット端末を手に、

二人は旅に出る。


喜び、怒り、悲しみ、愛――

さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。


これは、色を知らない守護者が、

“感情の色”を探し出す物語。


そして――

世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。

奈良公園の木々の間を、軽やかな足音が駆け抜ける。


 


「ほらほらユズ!こっちこっち~!」


 


ホープが楽しそうに手を振りながら、鹿たちの方へと走っていく。


 


「ちょ、ちょっと待ってください~!」


 


ユズは慌ててその後を追いかける。


 


 


鹿たちは、人に慣れているのか、逃げる様子もなく、

むしろ興味深そうに近寄ってくる。


 


一頭が、ユズのそばに来て、くんくんと匂いを嗅いだ。


 


「わっ……近い……」


 


思わず身を引きそうになるが、

鹿の目はどこまでも穏やかで、敵意は感じられない。


 


「大丈夫だよ~優しいから!」


 


ホープが笑いながら、鹿の頭を撫でる。


 


鹿は気持ちよさそうに目を細めた。


 


 


ユズも、恐る恐る手を伸ばす。


 


「……えいっ」


 


そっと触れる。


 


ふわりとした感触。


 


ほんのり温かい。


 


 


「……あったかい……」


 


 


その瞬間――


 


胸の奥に、小さな“何か”が灯った。


 


 


強いものではない。


 


でも確かに、やさしく広がる感覚。


 


 


「でしょ~?」


 


ホープが嬉しそうに笑う。


 


 


「鹿さんたちもね、いろんな気持ちがあるんだよ~」


 


 


「気持ち……」


 


 


ユズは、もう一度鹿に触れる。


 


 


(この子たちは……どんな色なんだろう)


 


 


まだはっきりとは見えない。


 


けれど――


 


なんとなく、わかる気がする。


 


 


穏やかで、あたたかくて、やわらかい色。


 


 


「……優しい色……」


 


 


ぽつりと呟くユズ。


 


 


「ん?」


 


ホープが首を傾げる。


 


 


「ううん、なんでもないです!」


 


 


ユズは少しだけ笑った。


 


 


 


しばらくの間、二人は鹿たちと遊んだ。


 


 


走り回ったり、撫でたり、

時には鹿に追いかけられて慌てたり。


 


 


「にゃぁぁぁ!?なんで追いかけてくるの~!?」


 


 


「それおせんべい持ってるからだよ~!」


 


 


「えぇぇぇ!?」


 


 


笑い声が、静かな公園に広がる。


 


 


その光景を、少し離れた場所からサファリングとデスペアが見ていた。


 


 


「……楽しそう」


 


 


デスペアが小さく呟く。


 


 


「ん……ああいうのも、悪くないね」


 


 


サファリングの声も、どこか柔らかかった。


 


 


 


やがて、空はゆっくりと色を変え始める。


 


 


夕暮れ。


 


奈良公園は、再び静かな空気に包まれていく。


 


 


「はぁ……いっぱい遊びました……」


 


 


ユズは少し息を切らしながら、芝生に座り込んだ。


 


 


「楽しかったね~!」


 


 


ホープは相変わらず元気いっぱいだ。


 


 


デスペアも、少しだけ近づいてくる。


 


 


「……その……楽しかった、ですか?」


 


 


少し不安そうに尋ねる。


 


 


ユズは、にこりと笑った。


 


 


「はい!すごく楽しかったです!」


 


 


その言葉に、デスペアはほっとしたように目を細めた。


 


 


サファリングが、静かに言う。


 


 


「……そろそろ行くよ」


 


 


その一言で、空気が少しだけ変わる。


 


 


「あ……」


 


 


ユズは立ち上がる。


 


 


「もう行っちゃうの?」


 


 


ホープが少しだけ寂しそうに言った。


 


 


「はい……まだ探さないといけない感情があるので」


 


 


ユズの声は、しっかりしていた。


 


 


ホープは少しだけ考えて――


 


すぐに笑顔になる。


 


 


「そっか!じゃあまたね!」


 


 


「はい!また会いましょう!」


 


 


デスペアも、静かに頭を下げる。


 


 


「……お気をつけて」


 


 


「ありがとうございます!」


 


 


サファリングは、二人を見て小さく頷いた。


 


 


「……またね」


 


 


短い別れの言葉。


 


 


けれど――


 


そこには、確かな繋がりがあった。


 


 


 


奈良公園を後にする二人。


 


 


鹿たちが、静かに見送っているように感じられた。


 


 


 


歩きながら、ユズは空を見上げる。


 


 


夕焼けが、ゆっくりと夜に変わっていく。


 


 


(希望と絶望……)


 


 


(どっちも……必要なものなんだ)


 


 


まだ完全には理解できない。


 


でも――


 


少しずつ、わかってきている。


 


 


「次はどこに行くんですか?」


 


 


ユズがサファリングに尋ねる。


 


 


サファリングは、少しだけ間を置いて答えた。


 


 


「……滋賀」


 


 


「滋賀県……?」


 


 


「うん。次の感情体がいる場所」


 


 


夜風が、静かに吹き抜ける。


 


 


新たな場所。

新たな感情。


 


 


ユズの旅は、まだ始まったばかり。


 


 


色を探す旅は――


 


次の地へと続いていく。」

ここまで読んでくれてありがとうございます

次回もお楽しみに

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