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アルケオン 第二章 「感情の色を探して」  作者: れんP


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希望と絶望の狭間で

「アルケオン 第二章 感情の色を探して」


彩葉たちの活躍から、十年――。

世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。


日本・大阪府大阪市。

その街に、一人の守護者が存在していた。


イラストから生まれた守護者――ユズ。


絵を描くことを愛する彼女は、

しかしひとつの欠落を抱えていた。


それは――

“色で感情を表現できない”こと。


どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。

色が、ただの色にしか見えないのだ。


そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。


苦しみの上位想霊――

感情体「サファリング」。


感情から生まれる存在である彼女は、

ユズの“欠落”に興味を抱く。


そしてユズもまた、

“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。


タブレット端末を手に、

二人は旅に出る。


喜び、怒り、悲しみ、愛――

さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。


これは、色を知らない守護者が、

“感情の色”を探し出す物語。


そして――

世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。

苦しみという感情を知った日から、

ユズの中の世界は、少しだけ変わっていた。


 


色は、まだはっきりとは見えない。

けれど――


 


“何もない”わけでは、なくなった。


 


 


奈良県奈良市――奈良公園。


 


朝の柔らかな光が差し込む中、

広大な芝生と木々に囲まれたその場所には、無数の鹿たちがのんびりと歩いていた。


 


観光客の姿もちらほらと見え、

穏やかで、どこか優しい空気が流れている。


 


 


「わぁ~!鹿さんがいっぱいです!」


 


ユズは目を輝かせながら、辺りを見渡した。


 


近くを歩く鹿が、のんびりとこちらを見つめている。

警戒する様子もなく、ただそこにいる。


 


「奈良公園だけど……鹿公園とも言われてる……」


 


サファリングはいつもの調子で淡々と答える。


 


「ここに、『希望』と『絶望』を司る上位想霊感情体がいるんですか?」


 


ユズは少し緊張した面持ちで尋ねた。


 


サファリングは静かに頷く。


 


「そう。ここにいる子たちは友好的だから安全……」


 


その一言に、ユズはほっと息をつく――が。


 


「有効的じゃないと?」


 


 


「襲われる……」


 


 


「ひっ!?」


 


思わず肩を震わせるユズ。


 


その様子に、サファリングはわずかに口元を緩めたようにも見えた。


 


 


――そのとき。


 


「おやおや、珍しいお客さんですね」


 


柔らかく、どこか楽しげな声が響いた。


 


振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。


 


金色の髪。

どこか鹿を思わせる穏やかな雰囲気。


 


自然とこの場所に溶け込んでいるような存在。


 


 


鹿野(かの)……」


 


サファリングがその名を呼ぶ。


 


 


「えっと、この人は……」


 


ユズが戸惑いながら尋ねると、サファリングが短く答えた。


 


「鹿の守護者『鹿野』……ここの守り人」


 


 


「鹿野だよ~……えっと、ここには観光かな」


 


にこやかな笑みを浮かべる鹿野。


 


 


「あ、ユズです」


 


ユズはぺこりと頭を下げた。


 


 


「ううん、ここにいる感情体に会いに来た。ユズが用があるから」


 


サファリングが用件を伝える。


 


 


鹿野は、少しだけ目を細めた。


 


「そうですか……なるほど……でしたら、あっちで見ましたよ」


 


指差す先は、公園の奥。


 


木々が少し密集している、静かな場所だった。


 


 


「うん……ありがと」


 


 


「ど、どうも……」


 


ユズも慌てて頭を下げる。


 


 


「うん!良かったら楽しんでいってよ」


 


 


「あ、はい!」


 


 


鹿野は軽く手を振りながら、その場を離れていった。


 


 


 


ユズたちは、公園の奥へと歩き出す。


 


鹿たちは相変わらず穏やかに過ごしている。

時折、ユズのそばに寄ってきては、興味深そうに顔を覗き込む。


 


「なんだか……落ち着く場所ですね」


 


ユズがぽつりと呟く。


 


 


「……そうだね」


 


サファリングの返事は短い。


 


けれど、その声にはほんのわずかに、柔らかさがあった。


 


 


やがて――


 


空気が、変わった。


 


 


さっきまでの穏やかさとは違う、

静かで、けれど張り詰めたような空間。


 


 


そこに――二人の少女がいた。


 


 


「デスペア、ホープ、久しぶり」


 


サファリングが声をかける。


 


 


黒髪で、静かに佇む少女がこちらを見る。


 


「……?久しぶり……」


 


 


そしてもう一人。


 


金髪で、明るい笑顔を浮かべた少女が、ぱっと顔を輝かせた。


 


「?あ!サファリングだ!久しぶり!」


 


 


対照的な二人。


 


静と動。

影と光。


 


 


「うん……ユズ、紹介する」


 


サファリングが一歩前に出る。


 


 


「黒いほうが『絶望』を司る上位想霊感情体の『デスペア』」


 


 


デスペアは、静かに一礼した。


 


「デスペアと申します」


 


 


「そして『希望』を司る上位想霊感情体の『ホープ』」


 


 


ホープは元気よく手を振る。


 


「ホープだよ~!」


 


 


「ユズです」


 


ユズも、少し緊張しながら頭を下げた。


 


 


その空間には、奇妙なバランスがあった。


 


明るさと、静けさ。

温かさと、冷たさ。


 


 


「二人とも、頼みがある……」


 


サファリングが静かに切り出す。


 


 


「ユズに感情石を触らせてくれる」


 


 


一瞬、空気が止まった。


 


 


「え?」


 


デスペアが小さく声を漏らす。


 


 


「え!でもあれは……」


 


ホープも少し驚いた様子を見せる。


 


 


サファリングは、まっすぐに二人を見た。


 


 


「大丈夫……ユズは耐えれる……」


 


 


その言葉には、確信があった。


 


 


ユズも、一歩前に出る。


 


 


「お願いします!」


 


 


その声は、しっかりと響いた。


 


 


ホープは腕を組み、少し考えるような仕草を見せる。


 


 


「う~ん……」


 


 


ちらりとデスペアを見る。


 


 


「よし!わかった!いいよ!」


 


 


ぱっと笑顔になるホープ。


 


 


「え?でも……もしものことが……」


 


デスペアは不安そうに言う。


 


 


「大丈夫だって言ってるんだから大丈夫だよ」


 


ホープは軽く言い切った。


 


 


デスペアはしばらく黙り――


 


やがて、小さく頷く。


 


 


「……わかりました……」


 


 


「ありがとう!」


 


 


ユズの顔に、はっきりとした笑顔が浮かんだ。


 


 


その奥で――


 


希望と絶望。


 


対極の感情が、静かに揺れていた。


 


 


次に触れるのは、光か。

それとも、闇か。


 


 


ユズの旅は、さらに深く――

“感情の核心”へと踏み込もうとしていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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