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アルケオン 第二章 「感情の色を探して」  作者: れんP


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30/60

震える炎に、願いを込めて

「アルケオン 第二章 感情の色を探して」


彩葉たちの活躍から、十年――。

世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。


日本・大阪府大阪市。

その街に、一人の守護者が存在していた。


イラストから生まれた守護者――ユズ。


絵を描くことを愛する彼女は、

しかしひとつの欠落を抱えていた。


それは――

“色で感情を表現できない”こと。


どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。

色が、ただの色にしか見えないのだ。


そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。


苦しみの上位想霊――

感情体「サファリング」。


感情から生まれる存在である彼女は、

ユズの“欠落”に興味を抱く。


そしてユズもまた、

“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。


タブレット端末を手に、

二人は旅に出る。


喜び、怒り、悲しみ、愛――

さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。


これは、色を知らない守護者が、

“感情の色”を探し出す物語。


そして――

世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。

茨城の静かな住宅街の一角。


 


ユズ、サファリング、プライドは——


 


怒りを司る上位想霊感情体「アンガー」と出会っていた。


 


 


赤い髪の小さな少女。


 


その姿は、どこか儚く、


 


とても“怒り”という言葉とは結びつかない。


 


 


アンガーは、まだ少し距離を取りながら、


 


ユズの様子をうかがっていた。


 


 


ユズは、ゆっくりと一歩前に出る。


 


 


驚かせないように、


 


優しく、静かに。


 


 


「アンガーさん……」


 


 


アンガーの肩が、びくっと揺れる。


 


 


だが、逃げはしなかった。


 


 


ユズはそのまま、言葉を続ける。


 


 


「私は——感情の色を探してるんです」


 


 


「色……?」


 


 


アンガーが小さくつぶやく。


 


 


ユズはうなずいた。


 


 


「はい。いろんな感情を知って、それを“色”として描いていく……」


 


 


「そのために、旅をしています」


 


 


 


アンガーは、じっとユズを見る。


 


 


不安そうに、


 


でも、どこか興味を持っているような目で。


 


 


ユズは、少しだけ勇気を込めて言った。


 


 


「だから……」


 


 


「アンガーさんの感情も、知りたいんです」


 


 


 


その言葉に、


 


アンガーの表情がわずかに揺れる。


 


 


プライドは腕を組みながら見守り、


 


サファリングは静かに立っている。


 


 


ユズは続けた。


 


 


「もしよければ……」


 


 


「感情石に、触れさせてもらえませんか?」


 


 


 


その瞬間。


 


 


アンガーの体が、ぴくりと固まった。


 


 


 


視線が揺れる。


 


 


手が、ぎゅっと握られる。


 


 


 


「……わ、わたしの……?」


 


 


声は、震えていた。


 


 


 


ユズは強く出ることなく、


 


ただ静かにうなずく。


 


 


「はい」


 


 


 


しばらくの沈黙。


 


 


風の音だけが、静かに流れる。


 


 


 


アンガーは視線を落とし、


 


何かを考えるように黙り込んだ。


 


 


 


怖いのかもしれない。


 


 


見せることが。


 


 


知られることが。


 


 


 


サファリングが、ぽつりと呟く。


 


 


「……無理にとは言わない」


 


 


プライドも続ける。


 


 


「嫌なら断っていいのよ」


 


 


 


その言葉に、


 


アンガーは少しだけ顔を上げた。


 


 


 


そして——


 


 


ユズを見る。


 


 


 


まっすぐな目。


 


 


嘘のない、純粋な願い。


 


 


 


アンガーの胸が、


 


わずかに揺れた。


 


 


 


「……あの……」


 


 


 


小さな声。


 


 


 


「こ、こわい……ですけど……」


 


 


 


一歩、踏み出す。


 


 


 


「でも……」


 


 


 


ぎゅっと目を閉じて——


 


 


 


「……いい、です……」


 


 


 


「さ、さわって……ください……」


 


 


 


そう言って、


 


震える手を——


 


 


ゆっくりと、差し出した。

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