終わらないマトリョーシカ
シャワーを浴び湯船に浸かり、ふう、と一息をつく。濡れた髪から一雫、水面に落ち波紋を広げる様を見て思ってしまった。
無から有は生まれない。
この宇宙が出来上がったのだって、0.00…1%何かが揺らいだ結果だからだ。
生き物だってそうだ。受精卵だって、卵子と精子に分けられ、精子だって、素を正せば、ただのタンパク質だ。
世界を揺るがす理論の発見だって、たまたま脳内でシナプスが弾けただけにすぎない。
そのシナプスだって、ただの分子の集まりで、その分子も原子がくっついたものでしかない。
その原子ですら、クォークの集まりでしかない。
クォークとはこれ以上観測することができない最小の単位。
あり得ない。無から有は生まれないのだから、クォークにも元となる何かがあるはずだ。
じゃあ、その元となったものの元は?その元となったものの元は?
どんどん飛躍していき考えだせば出すほど思考は止まらない。
まるで終わらないマトリョーシカを見てるようだ。
そんなことを考えいるうちに、ふと現実に引き戻される。
随分永いこと、くだらないことを考えてたみたいだ。
いつの間にかお湯が少し冷めている。
ふぅ、と一息つき独りごちた。
「のぼせてしまった」
この連綿と続くマトリョーシカのような生活にはいつか終わりが来る。俺みたいな凡人がいくら考えても答えんなんてわからない。なら、せめて最後までしっかり見届けよう。
俺は自分の宇宙にそう結論付け、バッしゃっと音を立てて立ち上がり風呂場からでていく。




