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終わらないマトリョーシカ

掲載日:2026/03/12

 シャワーを浴び湯船に浸かり、ふう、と一息をつく。濡れた髪から一雫、水面に落ち波紋を広げる様を見て思ってしまった。


 無から有は生まれない。


 この宇宙が出来上がったのだって、0.00…1%何かが揺らいだ結果だからだ。


 生き物だってそうだ。受精卵だって、卵子と精子に分けられ、精子だって、素を正せば、ただのタンパク質だ。


 世界を揺るがす理論の発見だって、たまたま脳内でシナプスが弾けただけにすぎない。


 そのシナプスだって、ただの分子の集まりで、その分子も原子がくっついたものでしかない。

 その原子ですら、クォークの集まりでしかない。


 クォークとはこれ以上観測することができない最小の単位。


 あり得ない。無から有は生まれないのだから、クォークにも元となる何かがあるはずだ。


 じゃあ、その元となったものの元は?その元となったものの元は?


 どんどん飛躍していき考えだせば出すほど思考は止まらない。


 まるで終わらないマトリョーシカを見てるようだ。


 そんなことを考えいるうちに、ふと現実に引き戻される。

 随分永いこと、くだらないことを考えてたみたいだ。


 いつの間にかお湯が少し冷めている。


 ふぅ、と一息つき独りごちた。


「のぼせてしまった」


 この連綿と続くマトリョーシカのような生活にはいつか終わりが来る。俺みたいな凡人がいくら考えても答えんなんてわからない。なら、せめて最後までしっかり見届けよう。


 俺は自分の宇宙にそう結論付け、バッしゃっと音を立てて立ち上がり風呂場からでていく。

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