88話 満額
「まぁ、そこはもちろん承知の上で参加しているから大丈夫だが」
今回は、Cランク昇格試験で知り合ったエリスや桜とお試しに組んでみただけだ。
俺の元々の同行者であるユーリや飛び入り参加者のアイシアがいることにより1人あたりの金はさらに減るが、そのあたりはそれぞれ了承済みである。
「問題は後の2つです。暴食竜フレイムドラゴンを討伐したとなればかなりの報奨金が出るはずでしたが……」
「でしたが?」
「今回はテイムしただけです。もちろん、テイムは無力化の一種なので功績は認められますが、フレイムドラゴンという存在自体は残っています。討伐報奨金は満額は出ないかと……」
「ああ、なるほどな」
討伐報奨金を設定しているのは冒険者ギルドだが、その大元の依頼人は国だったり領主だったりするはずだ。
どちらかと言えば息の根を止めて完全に無力化してほしいというのが本音なのだろう。
だが、危険な魔物をテイムするような逸材の反感を買うことは避けたいし、そのテイムされた魔物を使ってその後も貢献してくれれば国や領としても恩恵は大きい。
そのため、討伐を強要するわけではなくて、あくまで討伐報奨金を減額するという形でバランス調整をしているといったところか。
「そして、最後の項目が特に問題です」
アイシアは続けて、そう言ったのだった。