83話 名付け
「みんな、何かアイディアはないか?」
俺は仲間たちを見回す。
「はいはいっ! 私は、ネコニャンがいいと思いますっ!!」
アイシアが手を上げた。
猫まるとひとしきり戯れて満足したのか、語尾はいつも通りのものに戻っている。
良かった良かった。
「なるほど。ネコニャンか。それはいいかもな」
響きもいいし、可愛くて良いと思う。
「待てぃ、カエデよ」
「なんだ? なにか問題でも?」
「ドラゴンの要素がないであろうが。どこからどう聞いても、純粋な猫の名前にしか聞こえんぞ」
「うっ、確かに……」
ネコニャン……いい名前ではあるが、フレイムドラゴンへの名付けとしてはイマイチか。
「ふうむ。それでは、疾風雷神・魔竜猫衛門というのは……」
「長い! というか、俺やアイシアの案よりも酷くなっているって!」
俺は桜の案を即座に却下する。
「そうですわね。では、ドラ衛門なんていかがでしょう?」
「桜の案に引っ張られてないか? というか、今度は猫の要素がなくなってるよ……」
俺は続けて、エリスの案を却下した。
「やはりここは、カエデが自分で付けるしかないじゃろう。さぁ、カエデよ! 決めるんじゃ!」
「お、おう……。うーむ……」
俺は腕を組んで考える。
名付けというのは非常に難しい。
だが、アイシア、桜、エリスの案を聞いたのはムダではなかったかもしれない。
それは、天啓にも似た閃きだった。
「決まったぞ! お前の名は、今このときをもって、『ドラにゃん』だ!!」
「ど、ドラにゃんですかにゃ? それがわたしの新しい名前……」
フレイムドラゴン改め、ドラにゃんがそう言う。
「おおっ! ドラにゃんでござるか! なんとも勇ましい名でござるなぁ」
「へぇ……。素晴らしい名前ですわね。可愛らしいですわ」
「ドラゴンと猫の要素を取り入れつつ、短くカッコよく可愛くまとめた感じですね!」
「うむ。悪くないのではないかの?」
桜、エリス、アイシア、ユーリがそれぞれに感想を口にする。
「おう! 我ながら良い名前を思いついたものだぜ!! どうだ? ドラにゃん」
「良い名前ですにゃ! これからわたしは、ドラにゃんを名乗るのですにゃ!」
こうして俺は、ドラにゃんという元フレイムドラゴンをテイムして仲間に加えたのだった。