82話 猫まる
「どうしようかなぁ……」
「ふむ。カエデは以前、召喚した獣魔に自分で名付けておったではないか」
「獣魔? ああ、猫まるのことか」
Cランク昇格試験では、出番がなかったな。
ただ、宿屋とかでは日常的にモフっていたけど。
あれは役得というものだ。
「へえ……。カエデさんは召喚術も使えるのですか」
「一度見てみたいでござる」
「ん? まぁ、それぐらいはいいけど」
今はフレイムドラゴンの名付けの時間だ。
話がそれてしまうが、一度見せておくぐらいはいいだろう。
「来い! 猫まる!!」
「にゃー」
俺が叫ぶと、目の前に大きな猫が現れた。
「これが俺の使い魔、『猫まる』だ。可愛いだろ?」
「おお! これはまた、大きくも愛らしい姿でござるな!!」
「す、素晴らしいですわ! これほど可愛い召喚獣がいましたとは!」
「ああ、モフモフしたいぃ……」
桜とエリスが猫まるを見て興奮している。
アイシアにいたってはヨダレを垂らしながら見ている。
「触るか? いいぞ」
「い、いいのですか!?」
アイシアがものすごい勢いで食いついてきた。
「もちろんいいさ。なぁ? 猫まる」
「にゃにゃぁ~」
猫まるが『もちろん構わないよ』といった感じで頷く。
「ありがとうございますにゃ!! うにゅ~! うにゃーん! うにょーん!!」
アイシアのキャラが崩壊している。
『戦鬼』という物騒な二つ名を持っていたはずなのに。
なぜお前まで、語尾に『にゃ』を付けているんだよ。
猫まるとフレイムドラゴンに加えてアイシアまで『にゃ』を付け出すとは……。
一時的なものだよな?
「ほら、好きなだけ撫でてくれ」
「はいですにゃぁあああ!!」
アイシアが猫まるに抱きつき、顔をスリスリする。
「はあ……至福ですにゃぁ……」
蕩けたような笑みを浮かべるアイシア。
その様子を見ながら、他の3人は苦笑いをしている。
「それじゃ、話を戻そうか」
フレイムドラゴンの名前はどうするか?
いい名前が思い浮かばない。
「猫まるに類似した名前でも付けようかな? 猫子、ネコ吉、ネコ太郎……」
「どれもしっくりこないので却下でお願いしますにゃ……」
フレイムドラゴン本人にダメだしされてしまった。
「そうだな。流用はダメか」
「できれば別の名前を考えてほしいにゃ」
ううむ。どうしたものか……。
正直、思い浮かばない。