81話 ネコドラゴン
暴食竜フレイムドラゴンに『ネコテイム』を掛け、成功した。
それはいいのだが、少女に猫耳が生えてきた。
猫耳ドラゴン少女の爆誕である。
そんな彼女に、俺が名前を付ける必要があるらしい。
「うーん……」
「どうされましたか? カエデさん」
俺が悩んでいると、アイシアが声を掛けてくる。
「ああ、彼女の名前を考えていたんだ」
「なるほど。テイムした魔物には名前を付けるのが一般的ですもんね」
アイシアは納得してくれた様子だ。
だが、少しだけ認識に齟齬があるような気がしないでもない。
俺が彼女に名前を付けるのは、それが一般的という話ではなくて、システムに指示されたからなんだが。
まぁ、そのあたりはいいか。
いずれにせよ、今後行動を共にしていくのなら名前は必要だし。
「よぉし! 今日からお前の名前は――『ネコドラゴン』だっ!!」
俺はそう宣言した。
「にゃにゃっ!?」
「なっ!?」
「ええぇっ!?」
ネコドラゴン、そしてユーリやアイシアが驚く声が聞こえた。
「どうした? 何かおかしいかな?」
「ええっと。率直に言って、カエデさんにはネーミングセンスがないですわね」
「然り。拙者もあまり自信はないが、楓殿はひど過ぎるでござる」
エリスと桜が断言する。
ネコドラゴン……いい名前だと思ったんだが。
「なぁ、フレイムドラゴン……。ネコドラゴンって、いい名前だよな?」
俺は本人に聞いてみることにした。
「…………」
無言で目を逸らされる。
「ダメなのか? そうか……」
みんなにネーミングセンスを否定されて、俺は泣きそうになる。
最強の猫耳装備を着ていても、精神力は別物なんだ。
弱々の豆腐メンタルである。
「いやっ! そんなことはありませんにゃ! とても素晴らしい名前だと思いますにゃん!」
「おおっ! なら……」
「ただ、もう少し短い名前の方が呼びやすいと思いますにゃ!!」
フレイムドラゴンがそう続ける。
「ふむ。短い名前か……」
確かに、日常的に名前を呼ぶのであれば短い方が便利だ。
カエデ、ユーリ、桜、エリス、アイシア。
今この場にいるのは、全員が4文字以下だもんな。
ネコドラゴンだと、6文字になる。
長いな。
「どうしようかなぁ……」
俺は考え込むのだった。




