80話 猫耳ドラゴン
「それで、どうしますか? 私としては、『テイムの首輪』を使うべきだと思うのですが」
「いや、それよりもいい案がある」
アイシアに対して、俺はそう答えた。
そして、フレイムドラゴンの少女を見つめる。
「実は、俺は面白い能力を持っていてな。『ネコテイム』って言うんだが、知っているか?」
「ええっと、知りません。人間の能力には詳しくなくて……」
そりゃそうか。
フレイムドラゴンが人間のスキルを知っている方が不自然だな。
「みんなは知っているか?」
「知らんのぉ」
「分かりません」
「知らぬでござる」
「存じませんわ」
ユーリ、アイシア、桜、エリスは知らないらしい。
「じゃあ、説明するよ。ネコテイムというのは――」
簡単に解説してから、本題に入る。
「というわけだ。どうだろうか?」
「は、はい。それでお願いしますっ!」
フレイムドラゴンは即座に承諾してきた。
「……本当に大丈夫かな。後悔はないか? もう一度聞くけど、今度こそ最後だぜ?」
「大丈夫ですっ!」
「……そうか。よし、分かった。【ネコテイム】」
俺は早速、フレイムドラゴンにスキルを発動した。
俺の魔力とフレイムドラゴンの魔力が混じり合い、溶け合っていくのを感じる。
そして――。
『暴食竜フレイムドラゴンのテイムに成功しました』
システムメッセージが表示された。
無事に成功したようだ。
「おおっ! やったぞ!!」
「はいっ! これで命は助かったということですにゃ!!」
俺と少女は喜び合う。
だが、何か違和感があったような。
俺は改めて、少女の姿を見る。
「あれ?」
「何ですかにゃ?」
「お前、猫耳なんて生えてたか?」
「あっ、これはですね。テイムされた時に生えてきましたにゃ」
「はあぁっ!?」
どういうことだよ。
俺は改めてスキルの説明文を確認する。
名称:ネコテイム
詳細:魔物と主従契約を結ぶことができる。テイムされた魔物は猫耳が生え、主人の価値観を理解し尊重するようになる。それ以外の事柄については、元々の気質が残る。
(ちゃんと書いてあるじゃねぇか!)
しまった。
俺は前世から、説明書は読まないタイプだったんだ。
いや、読まないと言えば語弊があるか。
少しぐらいは読む。
だが、隅から隅までは読んだりしない。
「マジかよ……」
いや、別に猫耳が生えたぐらい問題ないのか?
他人の体に変化を与えたという意味では大きなインパクトがあるのだが、そもそも竜の姿から人化しているしな。
今さら猫耳ぐらいは誤差みたいなものかもしれない。
それにしても、ドラゴンっ娘に猫耳を生やすなんて、キャラ設定を盛りすぎじゃね?
俺がそんなことを考えているときだった。
『暴食竜フレイムドラゴンに個体名を設定してください』
そんなシステムメッセージが表示されたのだった。