79話 ネコテイム
暴食竜フレイムドラゴンの処遇について相談している。
「やっぱり死んでもらった方が安心なんだけどなぁ……。うーん……」
当たり前だが、ドラゴンは人間とは異なる種族である。
今は外見だけ人間になっているので同情心を抱くが、ドラゴン形態になればまた暴れ出すかもしれない。
だが、どうしても気持ち的に割り切れない部分があった。
「ど、どうか、命だけはぁ!」
少女が懇願してくる。
「あっ。そう言えば、こんなものを持っていたのでした」
アイシアが何やら鞄から取り出した。
「ん? なんだそりゃ?」
「これは『テイムの首輪』といいます。これを付けると、魔物を従えることができます」
「ほう。そんなアイテムがあったのか」
ゲームなどでは定番だな。
「で、では、それを使ってくださいっ!」
少女が食い気味に迫ってくる。
「い、いや……。どうしようか、これ。なんか禍々しいデザインだし、呪いとかかかっていそうだけど……」
俺は躊躇した。
いかにも邪悪なオーラを放っているのだ。
「そうですね。本来は、本能のままに生きる低級の魔物に装着して、人間の命令に従うように調教するための首輪ですから」
「えぇ!? そ、そうなのか?」
「はい。なので、呪いというのもあながち間違いではないかと。魔物側からすれば、付けたいものではないでしょう。人間で言えば、『隷属の首輪』に相当するアイテムですね」
「なるほど……」
その説明を聞き、納得する俺。
「そんなアイテムを使うのは気が引けるなぁ。本能だけで生きる低級の魔物ならともかく、意思疎通ができるこの子に使うのは無理だろ」
「ふむ。確かに一理あるのう」
ユーリも同意してくれる。
「だ、大丈夫です! それを付けてくださいっ! 死ぬよりはマシなのでっ!」
「でもなぁ……」
少女は涙ながらに訴えてくるが、俺はあまり気乗りしない。
だが、何の制約もなしで解放するのも怖いしなぁ……。
俺が悩んでいるときだった。
(おっ?)
視界の隅で何かが点滅している。
これは、新しいスキルが手に入ったときに表示されるものだ。
「【ステータス】」
表示されたウインドウを確認すると、新たにスキルが増えていた。
名称:ネコテイム
詳細:魔物と主従契約を結ぶことができる。テイムされた魔物は猫耳が生え、主人の価値観を理解し尊重するようになる。それ以外の事柄については、元々の気質が残る。
(おぉ、タイミングがいいな)
しかしそれにしても、ネコテイムっていう名前はどうなんだ?
ネコ専門のテイムスキルみたいになっているぞ。
だがまぁ、これならば『テイムの首輪』よりは縛りが緩そうだ。
これを試す方向で相談してみよう。




