70話 フレイムドラゴン
俺、ユーリ、アイシア、桜、エリス。
5人で森を歩いていく。
道すがらゴブリンなどを討伐しているが、本来の目的はあくまで異変の調査だ。
「おや……?」
「どうしましたか、桜?」
「うむ、今何か聞こえたような気がしたのでござる」
「……本当ですわね。これは魔物の咆哮でしょうか」
桜とエリスが顔を見合わせる。
「よっしゃ! とりあえず見に行ってみようぜ!!」
「そうですね。まずは確認しないと話が始まりません!」
俺とアイシアの意見が一致した。
彼女は結構脳筋タイプだよなぁ。
本人の二つ名が『戦鬼』だし、父親の二つ名は『剛腕』だし。
戦闘能力に物を言わせてBランクに上がったのだろう。
「あっ……。もう! もっと慎重に行動してほしいのですが……」
「カエデには無理なことじゃの。我らも着いていくぞ」
「承知でござる」
エリス、ユーリ、桜の3人も、仕方なさそうな顔をしつつも付いてきてくれるようだ。
俺たち5人は音のした方へ向かう。
しばらく進むと、魔物の集団を発見した。
10体程度のオークの群れだ。
数はそれなりに多いが、苦戦するほどではないだろう。
「何かと思えば、オークか。よぉし、また俺の魔法で蹴散らして――」
「待つのじゃ、カエデよ」
ユーリが俺を制止する。
「ん? なんでだ?」
「あのオークたちの様子がおかしい。よく見てみるのじゃ」
「うーん……。そう言われてみたら、何かから逃げてるような……」
オークは後方を気にしつつ、必死にこちらに向かってくる。
「あれはただ事ではないですね」
「そのようでござる」
「いったい何があったのでしょう?」
アイシア、桜、エリスが戸惑った声を上げる。
すると、後方から凄まじい咆哮が響いた。
ドッドッドッ……という、地響きのような音を立てて迫り来るものが見える。
「まさか……、あんな大きさの魔物が!?」
エリスたちが驚くのも当然だ。
全長20メートルを超える巨大な魔物が現れたのだ。
「あれは……、フレイムドラゴン!!??」
この中で最も冒険者歴の長いアイシアが、驚愕の声を上げた。
「知っているのか? アイシア」
「は、はい。人里に姿を見せるドラゴンの中では危険度が高いと言われています。気性が激しく、魔物を餌にすることから別名・暴食竜とも呼ばれますが……」
「ほう、そいつはおっかないやつだ」
「はい……。私も実物を見るのは初めてです。こんなところで会えるなんて、夢にも思いませんでした」
Bランク冒険者のアイシアでさえ、初めて遭遇する相手か。
なかなか厄介そうなドラゴンだ。
どう対処すべきか――。
いや、その前にオーク共の相手が先か?
ちょうど俺たちの方向に逃げてきているから、襲ってくるかもしれないな。




