表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/94

61話 vsアイシア

 ギルドマスターの娘にして、Bランク冒険者でもあるアイシアと模擬試合を行うことになった。

 訓練場にて、俺たちは向かい合う。


「ルールはどうする? 何でも有りにするか?」


 パワードにそう問われた。


「いや。武器はなし。魔法も身体強化のみの使用で頼む」


 俺の剣技や魔法は対人戦には向いていない。

 特に魔法は、うっかり人を殺しかねないほどの威力がある。


「それですと、『闘神流』を修めた私の方が有利では?」


 闘神流……。

 確か、武闘の流派の一つだな。

 小耳に挟んだことがある。


「いいんだよ。ただの手合わせなんだから」


「分かりました。カエデさんがそうおっしゃるのであれば」


「審判はこの儂が務める。それでは……、始め!!」


 俺とアイシアの試合が始まった。


「先手必勝です! はあっ!」


 開始と同時に、彼女は距離を詰めてきた。

 速い。

 そして、重い拳を放ってくる。


「ぐっ!?」


 俺は咄嵯に腕を上げてガードするが、衝撃で後方に吹っ飛ばされた。


「カエデさん!?」


 エリスが驚いた声を上げる。


「大丈夫じゃ。あの嬢ちゃんはあれぐらいではやられん。直接戦った儂はよく分かっておる」


 パワードの言葉通り、俺は大したダメージを受けてはいない。

 すぐに立ち上がる。


「ほう。頑丈なんですね」


 アイシアも感心しているようだ。


「今の一撃で俺を倒せると思ったのか?」


「まさか。父に勝ってしまうような人を一撃で倒せるとは思っていません。さすがに、ノーダメージなのは想定外ですが……」


 そう言いつつ、再び構えをとる彼女。


「今度はこっちからだぜ」


 俺は【ネコダッシュ】で身体能力を強化し、一気に間合いへ踏み込む。


「速……ッ!!?」


 彼女が反応する前に、俺の拳が彼女の腹部を捉えていた。


「げほっ……」


 血を吐きながら後方へと吹き飛ぶアイシア。

 だが、空中で体勢を立て直し、綺麗に着地を決めた。


「素晴らしい速度の体術ですね……」


「その割に、あっさりと耐えるじゃないか」


「そこはまあ……。『闘神流』は肉体の強化を重視しますので」


「そうなのか」


「はい……。なので、魔法は苦手なんです」


 苦笑しながら答える彼女。


「でも、接近戦では負けない自信があります。まだまだ戦えますよ」


「そうかい。じゃ、これはどうかな」


 俺は右手に闘気を集める。


「そおいっ!」


 弾丸のような速度で放たれた無数のパンチ。

 そこから射出される闘気弾がアイシアを襲う。


「く……!」


 それを全て受け切るアイシア。

 かなりの集中力だ。


「なかなかやりますね……。素晴らしい威力と連射力です。でも、闘気弾なら私も使えます!」


 アイシアは両手を前に突き出す。


「はああぁっ! 気功砲!!!」


 すると、凄まじい勢いの闘気が噴き出した。


「なにぃ!」


 慌てて俺は後退する。

 ドゴーン!!

 アイシアの放ったそれは、訓練場の壁を破壊した。


「おいおい。マジかよ」


 俺は冷や汗を流す。

 こんなものを食らったらひとたまりもないぞ。


「はあ、はあ……。避けられてしまいましたか……」


「あんなもん、避けて正解だろ」


「くう……。しかし、まだ負けてはいません!」


 アイシアは再び構えをとった。

 彼女が闘気を練り上げていく。


「どうやら、これが最後みたいだな……」


 俺がそう呟いた直後だった。


「おおおっ!」


 アイシアは先ほどよりもさらに速く動いた。

 そして、一瞬にして俺の背後に回り込み、背中に向けて掌底を放つ。


「もらった!」


 勝利を確信したアイシアだったが、次の瞬間に驚愕の表情を浮かべた。

 何故ならば、俺の姿はそこになかったのだから。


「どこを狙っているんだ?」


 アイシアの背後から声を掛けて俺に、彼女はハッとして振り返る。


「なに!?」


「隙あり!!」


 動揺する彼女に回し蹴りをお見舞いした。

 ドゴォーン!!!

 轟音とともに吹っ飛んでいく彼女。

 地面に落下し、ゴロンゴロン転がって止まった。


「ぐ……うぅ……。強い……。強すぎますよ、カエデさん……。もう降参です」


 倒れ込んだアイシアがそう言う。


「うむ! そこまでとする! 勝者、カエデ!!」


 ギルドマスターのパワードが宣言をする。

 こうして、俺とアイシアの戦いは終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ