５２話 俺の魔法がおかしいって、不安定すぎるって意味だよな？
魔法での的あて試験を行っている。
俺はうっかる強すぎる魔法を発動してしまった。
制御がイマイチだとして低評価にされてしまうかもしれない。
「…………」
女性職員は絶句している。
やはり低評価になってしまうだろうか？
俺がそう思っていると……。
「え、ええと……。今の魔法はなんでしょうか？」
女性職員がそう聞いてきた。
「普通の攻撃魔法だが」
「普通って……。あんな変な威力の魔法が普通なわけないでしょう！ だいたい、その格好はなんですか！」
「これは猫耳装備だ。いろんな効果があるんだぜ。それに、見た目も可愛いだろ？」
「確かに可愛いですが……。そんな装備があるんですか。知りませんでした。……いえ、それよりも！」
女性職員はそう言うと、ビシッと指を突きつけてくる。
「さっきの魔法の件です！ その装備があったとしても、さっきの魔法はおかしいですよ！」
「やはりそうか……。あんな制御力じゃ、Ｃランク昇格なんて無理だよな……」
「え？」
「え？」
俺と女性職員は顔を見合わせる。
「あの、今、なんて言いました？」
「いや、だから、Ｃランクへの昇格はやっぱり難しいよなって」
「え？」
「え？」
俺と女性職員は再び顔を見合わせた。
「……あー、１つ確認していいか？」
「何でしょう？」
「俺の魔法がおかしいって、不安定すぎるって意味だよな？」
「違います！ 威力が凄すぎるっていう意味です！！」
女性職員が大声でそうツッコミを入れてくる。
「だって、あなたの魔法、的を全て破壊していますよね！？ 他の方の魔法を見てください。１発の魔法で１つの的を粉砕できれば、このＣランク昇格試験においては高評価となります。数発で１つでも、まずまずの部類です。それを、たった１つの魔法で５つまとめて粉砕するなんて、高評価どころじゃありませんよ！！」
「え、そうなの？」
「当然です！」
……マジか。
てっきり、制御力がお粗末すぎて低い点数になると思っていたのだが。
「そもそも、あなたは何者なのですか！？」
「どこにでもいるＤランク冒険者だが？」
「そんな変な格好のＤランクが普通なわけないじゃないですか！」
確かに、猫の着ぐるみを着ている時点で普通ではないか。
このまま女性職員とのやり取りを続けてもいいのだが、他の受験者のテストが進まない。
ここは適当にごまかそう。
「まあいいじゃないか。Ｃランク冒険者になった俺の今後の活躍に注目してくれ」
「え？ ああ……。魔法試験が高評価なのは間違いありませんが、合格間違いなしとまでは言えませんよ」
「そうなのか？」
「筆記試験の結果と、この魔法試験。それに戦闘試験がありますから。その３つを総合的に考慮して合否が決定されます」
そうだったのか……。
筆記試験はおそらくイマイチだろう。
魔法試験は、女性職員が言うには高評価間違いなし。
戦闘試験をがんばるしかなさそうだな。
「次の試験に向けて、今のうちに休んでおいてくださいね。……では、次の方の魔法試験を始めます！」
女性職員がそう言って、また１人の受験者が前に出ていった。
俺は後方に下がり、魔法試験の様子を眺める。
確かに彼女が言った通り、１つの魔法で１つの的を粉砕できる者は優秀な部類に入るようだな。
エリスは魔法使いとして優秀だと言ってよさそうだ。
数発で１つの的を破壊できる者でもそれなりに優秀な部類で、そもそも魔法自体を発動できない者も一定数いるようである。
これなら、多少制御力がお粗末でも高評価を得られるわけだ。
やはり、最強の猫耳装備の前に敵はない。
俺はそんなことを考えつつぼんやりとしていると、近くに少女が二人やってきた。
彼女たちは……。
